フォト・エッセイ命を食べる 季節を味わう
真夏の土佐を彩る五弁の半日花と青納豆
丹野清志 たんの きよし
カメラマン、エッセイスト。1944年生まれ。東京写真大学(現東京工芸大学)卒。日本全国を長年にわたって歩き、農に生きる人、山に生きる人、海に生きる人々を撮り続ける。著書・写真集は『伝統野菜で旬を食べる』(毎日新聞社)ほか多数。
高知県のオクラ産地を訪ねたのは、収穫最盛期の真夏だった。
早朝なのに、少し歩くと汗ばんでくる。すでに気温は30度近くになっているのではないか。
3月に種まきしたオクラは、背丈ほどの高さに伸びていて、茎のあちこちに黄色い五弁の花が咲いている。オクラの花は、朝開いて午後には閉じてしまう半日花だ。花の近くに、五角形の八センチほどのオクラがひょこっと突き出ていた。白い繊毛がきらきら輝いている。2日ほどで花が落ちると、小さな実が出ている。それから約1週間たつと食べごろになるのである。
「次から次に出てくるから休みなしですよ」とオクラ栽培歴30年を越える野中昭子さんが言った。
オクラ栽培で苦労することは何ですかと聞くと、なんと雑草とりだと言う。野菜なら何でも作れる気候温暖な土地柄だから、草もぐんぐん生長する。むしってもむしっても生えてくるのだ。
オクラは青納豆とも呼ばれるように、食べるとネバネバする。その粘りが苦手だという人もいるが、ネバネバこそがオクラの持ち味だ。ビタミンB1、カルシウムを含み、整腸作用にすぐれている。
細かく刻んで鰹節をかけ、しょうゆ醤油でまぜて食べるのがおいしいが、てんぷらやあ和え物、煮物、酢の物などいろいろ利用されている。
野中さんおすすめのオクラ料理は、山芋おろしのようにして食べる“オクラとろろ”。塩ゆでしたオクラを縦に2つに切り、だし汁を入れてミキサーにかける。うずらの卵をのせて、刻み海苔、鰹節などをふりかけてポン酢で食べる。
「ビールとオクラで夏バテ解消ッ」
収穫を終えて、野中さんが言った。
雲ひとつない青空がまぶしい。
光がちりちりと暑い。
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