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フォト・エッセイ命を食べる 季節を味わう

真夏の土佐を彩る五弁の半日花と青納豆

文・写真●丹野清志
発行:2004年9月
更新:2013年7月

  

丹野清志 たんの きよし
カメラマン、エッセイスト。1944年生まれ。東京写真大学(現東京工芸大学)卒。日本全国を長年にわたって歩き、農に生きる人、山に生きる人、海に生きる人々を撮り続ける。著書・写真集は『伝統野菜で旬を食べる』(毎日新聞社)ほか多数。


オクラ 高知県土佐山田町

高知県のオクラ産地を訪ねたのは、収穫最盛期の真夏だった。

早朝なのに、少し歩くと汗ばんでくる。すでに気温は30度近くになっているのではないか。

3月に種まきしたオクラは、背丈ほどの高さに伸びていて、茎のあちこちに黄色い五弁の花が咲いている。オクラの花は、朝開いて午後には閉じてしまう半日花だ。花の近くに、五角形の八センチほどのオクラがひょこっと突き出ていた。白い繊毛がきらきら輝いている。2日ほどで花が落ちると、小さな実が出ている。それから約1週間たつと食べごろになるのである。

「次から次に出てくるから休みなしですよ」とオクラ栽培歴30年を越える野中昭子さんが言った。

オクラ栽培で苦労することは何ですかと聞くと、なんと雑草とりだと言う。野菜なら何でも作れる気候温暖な土地柄だから、草もぐんぐん生長する。むしってもむしっても生えてくるのだ。

オクラは青納豆とも呼ばれるように、食べるとネバネバする。その粘りが苦手だという人もいるが、ネバネバこそがオクラの持ち味だ。ビタミンB1、カルシウムを含み、整腸作用にすぐれている。

細かく刻んで鰹節をかけ、しょうゆ醤油でまぜて食べるのがおいしいが、てんぷらやあ和え物、煮物、酢の物などいろいろ利用されている。

野中さんおすすめのオクラ料理は、山芋おろしのようにして食べる“オクラとろろ”。塩ゆでしたオクラを縦に2つに切り、だし汁を入れてミキサーにかける。うずらの卵をのせて、刻み海苔、鰹節などをふりかけてポン酢で食べる。

「ビールとオクラで夏バテ解消ッ」

収穫を終えて、野中さんが言った。

雲ひとつない青空がまぶしい。

光がちりちりと暑い。

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