がんと食事2
がんの治療中・治療後の食事 毎日の食事を楽しみに変える工夫って?!
がんの治療中や治療後はどんな食事がふさわしいのだろう――そう悩む患者さんは少なくない。そんなとき、ちょっとした工夫を知っていることで、毎日の食事が豊かになる。がん治療後の上手なカロリー摂取の方法や、抗がん薬治療の副作用に応じた食事法を紹介する。
適切なエネルギー摂取を
がんの治療中でも、合併症などがなければ普段の食事に特別な変更を加える必要はない。また今のところ、がんの再発や転移にあきらかに関係している食品について、明確なエビデンス(科学的根拠)は報告されていない。では、どういう点に気を付けて食事を摂ればよいのだろうか。
国立がん研究センター中央病院栄養管理室主任栄養士の須永将広さんは、「治療中は、衛生面に気をつけて感染症を防ぐことはもちろんなのですが、治療による副作用に対処していくことが大切です。治療後は、バランスの良い食生活を心がけ、糖尿病、脳卒中や心臓病といった慢性疾患を予防していくことも大切です」と話す。
食生活に取り入れたい指標が、自分の必要栄養量である。体重が適正体重の範囲の人では、体重×30kcalがおおよその1日の必要エネルギー量になる(図1)。
たとえば、体重が60㎏の人なら、その×30kcalの1,800kcalが1日の必要エネルギー量の目安となる計算だ。ただし、30kcalの数字はあくまでも目安ととらえよう。1日の活動量に応じて、増減させて対応する。
仮に、1日1,800kcalとすると、3で割った600kcalが1回の食事でのエネルギー量となる。毎日の食事を均等に摂ることは難しいため、適宜調整できると良いだろう。ただし、朝を極端に少なくしたり、夜遅い時間に極端に多く摂ることは勧められない。とはいえ、エネルギーの数値を見て、初めから食事内容までイメージできる人は少ない。
須永さんはその目安のつかみ方として「1食あたりの食事量を知るには、フードモデルを用いることで、実際の食事量を実感することができ、自身の食事について自ら「気づく」こともできるので、管理栄養士に一度相談して欲しい」と話した。さらに「食品は、種類や部位によっても栄養量が異なるため、まずは目安量を知る、食品グループを知るところから始めると良いでしょう」と続けた。
「食品群は、例えば、豆腐や納豆などの大豆製品は、野菜の仲間であると思われがちですが、栄養素から見ると、『畑のお肉』とも呼ばれているとおり、肉・魚・卵の仲間として『タンパク質を多く含む食品』に分類されています。また、じゃがいもやサツマイモなど芋類は、外国では主食として食べられているように、ご飯やパンなどの仲間として『糖質を多く含む食品』に分類されます。アボカドやピーナッツは『脂質を多く含む食品』に分類されます。『食事には気をつけています』という方が、実は、過剰摂取となっていることも見受けられますので、管理栄養士に相談してみるとよいでしょう」
1日の摂取エネルギー量を計算するときの注意点としては、間食のエネルギーもきちんと換算することだ。
「間食で食べる菓子類は、意外に高カロリーのものが多いです。大きめのせんべい1枚が、実は、おにぎり1個相当のカロリーがあったりもします。チョコレートは糖分はもちろん、脂肪も含んでいます。クッキーなどの焼き菓子は量のわりにエネルギーは多いので気をつけましょう」(図2)
血糖値を抑える食事のとり方
食事や間食を摂るタイミングは、肥満に影響する。では、どんなタイミングで食事を摂るのがよいのだろう。
須永さんは、人間の体とエネルギーを車と燃料にたとえて説明した。
「ドライブに出かける前に、車にガソリンを給油しますね。それと同じように、人も活動する前にエネルギーを補給するのが大切です」
効率よくエネルギーを摂るのは、1日の活動が始まる朝がよい。間食も、午前中や午後のエネルギー補給にとどめるべきだ。「今日はいっぱい働いたから、夜にたくさん食べる」という人は少なくないが、夕食で過剰に摂取したエネルギーは脂肪として蓄えられてしまう。就寝直前の食事や間食は、肥満のもとだ。
エネルギーをいつ摂ると良いかを知るには、血糖値がどのように推移するかを参考にするとよい(図3)。
血糖値変化のグラフの山を、活動の大きくなる前に持ってくるように食事を摂るとよい。
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