とろみを上手に使って、食べやすくアレンジ

食べることがつらくならないように 食道がん治療中の食事

監修●能勢彰子 東京都立駒込病院栄養科主任技術員
取材・文●池内加寿子
発行:2014年8月
更新:2014年11月

  

「患者さんが、食べることがつらくならないようにすることが大切です」と話す能勢彰子さん

食べ物を飲み込むときに欠かせない食道にがんが発生した場合、本人はもちろん、家族もどのような食事がいいのか迷うことは多い。どんなものだったら食べやすいのか、食べ方のポイントは――専門家に話を聞いた。

嚥下障害、通過障害、体重減少が起こりやすい

食道は喉(咽頭)と胃をつなぐ直径2.5㎝、長さ25㎝ほどの管状の臓器で、飲み込んだ食物を蠕動運動により胃に送り込む働きをしている。

食道がんの手術では、食道周囲のリンパ節も切除するため、隣接する嚥下(飲み込み)に関係する神経が傷つきやすい。そのため、手術後に嚥下困難になることが少なくない。また、切除した食道の代わりに、胃で管を作って持ち上げるため、胃の機能が失われる上、縫合した吻合部に狭窄を来しやすく、通過障害を生じることもあるなど、体への負担も大きい。

東京都立駒込病院栄養科主任技術員の能勢彰子さんは「飲み込みにくいと、むせたり、食物が気管に入ってしまう誤嚥につながりやすく、誤嚥性肺炎を発症しやすいとされています。手術後は食事が食べられず、1~2カ月で体重が10㎏程度減少することもあり、体力の低下を招きかねません。当院では、食道がん手術後の嚥下トラブルや体重減少を防止するために、平成19年から医師、看護師と管理栄養士が共同で、嚥下訓練を兼ねた食事(スワロウ食)を開発し、導入しています」

スワロウ食=「飲み込む」という意味の「swallow(英)」から名付けた駒込病院独自の食事の名称

手術後の食事は経腸栄養と併用

食道がんの手術後、食事開始までの栄養摂取法には、大別して3つの方法がある。
1つ目は、鎖骨下の太い静脈にカテーテルを留置して高カロリー輸液を投与する「中心静脈栄養」。手術前から継続して高カロリーを補給できる。2つ目が、手術時に作った「腸ろう」にチューブを入れて、消化された状態の経腸栄養剤を直接腸に送り込む「経腸栄養」。3つ目が「経口栄養」で、食事がこれにあたる。手術後は、嚥下の状態に応じて3種の方法を組み合わせ、通常の食事に戻していくのが標準的な進め方だという。

「腸の粘膜は、1~2日でも使わないと萎縮して吸収力、免疫力が低下してしまいます。そこで、手術後は中心静脈栄養に加えて、経腸栄養を少量(200~400ml/日程度)から始め、徐々に増やしていきます。食事開始後は、経腸栄養を併用しながら徐々に普通食に移していきます」

腸ろう=小腸にチューブを入れて、皮膚を通して体外とつなぐこと

嚥下訓練を兼ねたスワロウ食で食事開始

東京都立駒込病院では、手術後7日目に嚥下機能をチェックし、8日目から嚥下の状態に応じた食事を開始している(図1)。嚥下訓練も兼ねて開発された前述の「スワロウ食」には、3段階のタイプがあり、嚥下の状態に合わせて選べる。

「スワロウ1」は一般の軟菜食の半量(1,000kcal)程度、主食は五分粥からスタートし、副食として歯茎でつぶせる硬さの軟菜が添えられる。「スワロウ2」は、「スワロウ1」を基本とし、水分にむせやすい人のために、汁ものにとろみをプラス。「スワロウ3」はさらに、飲み込みにくい人用に全ての食材をミキサーにかけてとろみをつけてある。

「当院では、食道がんの手術から退院までは約12日(平均在院日数は手術前の治療も含めて21日)で、腸ろうをつけたまま退院するのが普通です。退院時のエネルギー摂取量は経腸栄養と食事がほぼ半々です。退院後も医師と連携して、定期的に栄養食事指導を行い、食事摂取状況の確認など、1年間は経過観察をしています」

図1 駒込病院における食道がん手術後の食事の流れ

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