がん看護専門看護師 山田みつぎの

副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の便秘」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2015年12月
更新:2018年2月

  

がん看護専門看護師の
山田みつぎさん

抗がん薬の副作用としての便秘は、様々な原因によって起こります。誰でも悩まされる便秘だからこそ、予防策と薬をうまく使って、できるだけ回避したいものです。

やまだ みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長。2006年日本看護協会がん化学療法看護認定看護師認定。11年聖隷クリストファー大学大学院博士前期課程修了(看護学修士)。同年、がん看護専門看護師認定。13年より現職。日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本看護研究学会所属

さまざまな治療薬が誘発

■表1 便秘を起こしやすい抗がん薬

通常、便は80%が水分、残りの約13%が生きた腸内細菌と剥がれた腸の粘膜、約7%が食べかすで構成されています。

便中の水分量は、便が腸内にとどまる時間によって左右されます。便が腸内に長くとどまると、大腸で水分がより吸収されてしまうため、便が固くなり、排泄しにくくなるのです。便秘の感じ方には個人差があり、4日以上出なくても何でもない方もいれば、毎日出ないとお腹が張ってつらいと感じる方もいます。排便の間隔だけでなく、便量や回数、固さなども、便秘の判断基準になります。排便において、不快と感じれば、それはその人にとって「便秘」ということになります。

抗がん薬治療の副作用としての便秘には、様々な原因があります。

最も大きな原因は、抗がん薬そのものの直接的な影響によるもの。

抗がん薬によって、腸の動きを支配する自律神経が障害され、腸管の蠕動運動が妨げられて、便秘が起こります。オンコビン、エクザール、ナベルビン、タキソール、タキソテールなど、神経障害を起こしやすい抗がん薬が要注意です(表1)。

次の原因は、制吐薬(吐き気止め)によるもの。抗がん薬治療に欠かせない制吐薬が、高い頻度で便秘の原因になるのです。

制吐薬には、主にセロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬とステロイド薬が使用されますが、そのどちらの薬も腸の蠕動運動を弱めてしまうのです。

5-HT3受容体拮抗薬の主なものが、カイトリル、アロキシ、ナゼア。ステロイド薬にはデカドロンなどがあります。

ほかにも、緩和ケアで痛み止めに使用するモルヒネはほぼ100%、抗うつ薬も便秘を誘発します。それ以外にも、薬の影響だけでなく、抗がん薬による吐き気が強くて水分が摂れなくなっていたり、治療中だからと体を動かさない日が続いたりすることも、便秘の原因になります。また、精神的ストレスなど心因的要因も便秘に大きく影響します。つまり、抗がん薬治療に便秘はつきもの。そう捉えて、あらかじめ対策を講じていただきたいと思います。

カイトリル=一般名グラニセトロン アロキシ=一般名パロノセトロン塩酸塩 ナゼア=一般名ラモセトロン塩酸塩 デカドロン=一般名デキサメタゾン

食事の工夫で予防を

■表2 便秘の予防

予防策としては、まず食事の工夫です。豆類やイモ類、野菜など、食物繊維を多く含んだ食品を意識的に摂り、便を柔らかくしましょう。

また、腸内で発酵しやすく、ガスを発生させて腸管に刺激を与える大豆やイモ類も効果があります。納豆も納豆菌の作用により腸の働きを強めます。唐辛子や胡椒などの刺激物を少し加えて、腸管を刺激するのも1つの方法ですが、摂りすぎるとかえって逆効果となり、腸の炎症を誘発することがありますので、ご注意を!

あとは、脂肪を含む食品を摂る。脂肪には便を柔らかくして腸管内のすべりをよくする働きがありますし、脂肪が分解されてできた脂肪酸は腸壁を刺激してくれますので、排便を促すには好都合となるのです。ほかには、乳酸菌を含む食品を積極的に摂る、水分補給を心掛ける、といったことも重要です。また、こまめにお茶を飲んだりして、水分補給に気を遣いましょう。朝起きがけに冷たい水や牛乳を飲むことも腸を刺激するためよいでしょう。

食事以外では、意識的に体を動かす、毎日同じ時間にトイレに座る、ウォシュレットで肛門を刺激する、といったことも試してみてください。

それでも便秘になったときは、前述の予防策を続けながら、薬を上手に使いましょう。ただし、便秘の状況によって、使う便秘薬の種類が変わるので、そこを間違えないことが重要です(表2)。

作用の異なる便秘薬を使い分ける

便秘薬には、主に腸を刺激して動かす大腸刺激性の下剤と、便の水分を抜きすぎないよう調整する緩下剤(便軟化剤)の2種類があります。

大腸そのものの動きが悪くなっている場合は、ラキソベロン、アローゼン、プルセニドといった下剤を使って腸管を刺激し、腸の蠕動運動を活発にします。

一方、腸は動いているけれど便が固くなって出ない場合は、酸化マグネシウム(マグラックス、カマ)などの緩下剤で、便の水分量を調整して柔らかくします。

その判断のポイントが、おならです。

おならが出るということは、腸は動いていると考えてよいでしょう。つまり、蠕動運動はしているのに、便が固くて出づらいので、この場合は、緩下剤で便を柔らかくすると、スルッと出ることが多いです。

腸が動いているという意味では、おならが出るのはいいことですが、反面、食べたものが腸管内で発酵して腸内ガス(二酸化炭素)が発生し過ぎた、ということです。何らかの原因で腸内細菌のバランスが崩れたときに腸内ガスが過剰発生するわけですから、おならがたくさん出るのは腸内バランスを崩している状態とも言えます。

ラキソベロン=一般名ピコスルファートナトリウム水和物 アローゼン=一般名アローゼン プルセニド=一般名センノシド

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