• rate
  • rate
  • rate

乳がんレジメン別で味の感じ方に違いも

ひと工夫で乗り切ろう!化学療法時の味覚障害に対する食事

監修●鍋谷圭宏 千葉県がんセンター消化器外科部長
監修●前田恵理 千葉県がんセンター栄養科 管理栄養士
取材・文●池内加寿子
発行:2016年1月
更新:2019年7月

  

「化学療法中の患者さんには、味を強く感じるか弱く感じるか、口の渇きがあるかを聞いて対処すると良いでしょう」と語る鍋谷圭宏さんと前田恵理さん

化学療法時に味覚障害を訴える患者は多い。ただ味覚障害といっても、主観的な要素が強く、味の変化の尺度も対処法も確立されていないのが現状だ。そうした中、千葉県がんセンターでは乳がん患者を対象に、化学療法中の味覚障害に対する調査を実施。レジメン別に味覚障害の現れ方に違いがあることなどがわかってきており、それに対する食事レシピも開発している。

化学療法の副作用の中でも 味覚障害の悩みが多い

図1 外来化学療法室での栄養相談内容(08年12月~09年11月)

化学療法を受けている患者にとって、副作用による食欲不振や味覚障害など、食事に関する悩みは大きい。

千葉県がんセンターでは、栄養サポートチーム(NST)が10年前から活動を開始し、患者の食事や栄養サポートに力を入れている。現在、NSTでは、消化器外科部長の鍋谷圭宏さんと管理栄養士を中心に、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師等で、毎週ミーティングを開き、食事・栄養面の調査、対策に積極的に取り組んでいる。

患者の悩みの中でも目立つのが「味覚障害」に関するものだ。

「化学療法を受けている患者さんがどんなことに困っているのか、当栄養科で2008~09年の1年間の相談内容を集計した結果、とくに味覚障害、食欲不振の悩みが多くを占めていました(図1)。他に、体重減少、手術後の食事の摂り方についての悩みも少なくありません」と、栄養科の前田恵理さんは説明する。

「味覚障害」とは、食物の味の感じ方が変わり、苦味や甘味、塩味を強く感じたり、逆に味を感じにくくなったりして、食事をおいしく感じられなくなる症状だ。「すべてが苦い」「まるで砂を噛んでいるようで、食べるのが苦痛」という患者も多いという。

胃がんの手術予定の患者全員に 栄養士が食事・栄養指導

NSTのチェアマンを務める鍋谷さんは、消化器がん患者の術後の食事の悩みについて、次のように話す。

「胃がんや大腸がんなどの消化器がんでは、手術をしただけで味覚が変化することが知られています。また、当センターの研究で、胃がんの術後補助化学療法としてS-1(TS-1®)を服用する患者さんに、口腔乾燥や味覚の変化が出現しやすいこともわかりました」

とくに胃を切除した後は、味覚障害や口腔乾燥に、場合によっては食べ物が急激に腸に落ちるためのダンピング症候群(不快感や下痢など)も加わり、「無理して食べているが、おいしくない」「食事がつらい」など、食事の悩みを訴える患者が非常に多く、術後に10㎏程度痩せてしまう人も少なくないという。こうした状況を受けて、同センターでは胃がん術後患者に対して、管理栄養士による面談を行っている。

「当センターでは、胃がんの手術を予定している患者さん全員に管理栄養士が面談をして、食事の進め方や、味覚障害、口腔乾燥に対する食事のアドバイス(後述)をしています」(鍋谷さん)

手術後、退院してからも管理栄養士の栄養指導を希望する患者も多いという。

TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

乳がん術後の「FEC療法」「TC療法」で 味覚障害の現れ方に違い

化学療法の副作用の中には、「制吐薬による吐き気対策」など、対処法がある程度確立しているものもある。一方、味覚障害は、口内炎のような肉眼的な所見がなく、主観的な味の感じ方によるところが大きいため、味の変化の尺度も対処法も確立されていなかった。そこで同センターではかねてから、味覚障害の規則性の探索と、その対処法を模索してきた。

「どの化学療法を行った場合に、どのように味覚が変わるのか、規則性を見つけて、それに合わせたメニューを考えることが課題でした。そこで、2011年に、当院で治療中の患者さんに協力していただき、キッコーマン㈱と共同で味覚障害の調査を行いました。その結果、乳がん術後の補助化学療法としてFEC療法とTC療法を受けた場合、それぞれ味覚障害のパターンが異なる傾向が示されました」(鍋谷さん)

乳がん手術後に行われる代表的な補助療法には、❶アンスラサイクリン系の抗がん薬を含む「FEC療法(5-FU+ファルモルビシン+エンドキサン)」と、❷タキサン系抗がん薬を含む「TC療法(タキソテール+エンドキサン)」という2つのレジメン(組み合わせ)がある。

「FEC療法では塩味、甘味、酸味、苦味など、うまみ以外の味が濃く感じられ、とくに苦味を苦痛に感じる傾向が見られました。一方、TC療法では全体に味が薄く感じられる傾向がありました。またFEC療法では、開始直後から味覚障害が一定期間続いて蓄積する傾向があり、TC療法では一時的に出現し、回復が早い傾向が見られました。味が強く感じられる治療の場合は食事の味付けを薄めに、味が薄く感じられる場合は味付けを濃い目にすると良いわけです。また口腔乾燥がある場合には、パサつかない調理を工夫します」(鍋谷さん)

5-FU=一般名フルオロウラシル ファルモルビシン=一般名エピルビシン エンドキサン=一般名シクロホスファミド タキソテール=一般名ドセタキセル

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート9月 掲載記事更新!