FP黒田尚子のがんとライフプラン 63

親のがんが子どもの教育に与える影響と幼児教育・高等教育無償化の動き

黒田尚子●ファイナンシャル・プランナー
発行:2019年6月
更新:2019年7月

  

くろだ なおこ 98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター。黒田尚子FPオフィス公式HP www.naoko-kuroda.com/

親ががんになると、子どもにさまざまな影響を与えることになります。子どもの教育もその1つ。がんに罹患したことで、「希望していた学校に進学できなかった」「塾や習い事をやめざるを得なくなった」など、とりわけ教育費に関する問題は深刻です。

一方で、2018年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」に基づき、幼稚園や保育園など幼児教育や大学など高等教育の無償化といった、教育費負担軽減の仕組みも、消費税率がアップする2019年10月以降、段階的にスタートする予定です。

今回は、がん患者さんへのアンケート調査から、親のがんが子どもに与える影響と教育費の負担軽減の施策についてご紹介したいと思います。

子どもを持つがん患者の2人に1人が、子どもの教育に「影響あり」と回答

一般社団法人キャンサーペアレンツとライフネット生命が共同で行った「親のがんが子どもの教育に与える影響に関する調査」(2019年1月実施)によると、がんに罹患したことによる支出の変化について、支出を抑えた項目の上位3つは、娯楽・交際費(78%)、被服・履物(69%)、家具・家事用品(63%)です。

これらに比べると、割合が低いものの、「教育費を抑えた」という人が約2割(18%)にのぼっています。

さらに、がん患者のうち、2人に1人ががんに罹患したことによって、「子どもの教育計画に影響があった(今後ある)」と回答。ステージ(病期)が高くなるにつれて、その割合も高くなる傾向が見られます(ステージⅠ:33%、ステージⅣ:64%)。

実際には、「がんに罹患しても、子どもの教育は別。子どもの支出は削れない」「頑張って受験勉強に励んでいる子どもの姿を目の当たりにすると、進学を諦めてくれとは言えない」など、がんに罹患しても、子どもに関する費用は減らせない、と考える方も少なくありません。

ただ現時点ではそうであっても、今後、治療が長引いた場合や再発・転移した場合など、この状態をいつまで続けられるか不安だという患者さんが多いと推測されます。

幼児教育の無償化で、1世帯平均年21万円の負担軽減

このように、子どもの教育費負担に悩むがん患者さんが期待するのは教育費の無償化です。

昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」(骨太の方針2018)には、人づくり革命の実現と拡大について、「幼児教育無償化」「大学など高等教育無償化」「私立高等学校授業料の実質無償化」などが掲げられています。

以下の図表は、上記のうち、幼児教育と高等教育の無償化の概要をまとめたものです。

いずれも今秋に予定されている消費税増税分を財源として、前者は2019年10月、後者は2020年4月から実施予定となっています。

大学などの高等教育無償化は、目安として世帯年収380万円未満の低所得者層が対象ですが、幼児教育の無償化については、所得を問わず、3~5歳児の全世帯が対象となっていますので、恩恵を受けられる方も少なくないでしょう。

大和総研によると「280万世帯に対し、1世帯平均年21万円の負担軽減となる見込み」という試算結果も出ています。

このほか、私立高等学校授業料の実質無償化についても、年収590万円未満世帯を対象に、2020年度を目途に実施される方向で検討されています。

*1 対象となるのは、地方自治体に対して届出を行った施設かつ指導監督基準を満たす施設だが、基準を満たさなくても5年間の経過措置は設けられる。
*2 一部の私立幼稚園は月2.75万円、認可外保育施設は0~2歳児:月4.2万円、3~5歳児:月3.7万円まで。

かかる費用が、無償化ですべてまかなえるわけではない!

費用負担が軽減されるのは、子どもを持つ親にとってはありがたい話です。

しかし、とくに高校、大学等についてはかかる費用は、無償化される授業料だけではありません。私立高校ともなると、入学金や教科書代、修学旅行費、部活動費など、公立高校に比べて割高だと予想されます。

さらに、今回導入予定の給付型奨学金は、教科書代や通学費等、自宅外生の住居費や光熱費など、学業に専念するために必要な生活費等の積算によって奨学金の額が決まったそうですが、それでも十分とは言い切れません。

最近は、各自治体による塾や習い事の費用を負担する動きも出ていますが、「無償化されるからと、進路を決めて後で思わぬ出費に苦労した」ということのないように十分気をつけてください。

 

今月のワンポイント すでに、これら無償化の動きに合わせて、需要拡大を見込んで新しい施設の開設が進んだり、対象から外れる見込みの認可外の保育施設が入所者減少による経営悪化が避けられないとして突然閉鎖したりするなどしています。ただ、無償化の財源となるのが消費税増税分ですので、もし再び、増税が延期された場合、どうなるのかが気になるところです。

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