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FP黒田尚子のがんとライフプラン 64
がん患者の家計をどう見直す?「理想の家計バランス」と見直しポイント
がんに罹患すると、医療費はもちろん、通院のための交通費や食費、ウイッグ購入費、健康食品・サプリメントなど、医療費以外にさまざまなお金がかかります。入院時の日用雑貨やテレビカードなど、一時的なものだけでなく、通院治療が長引けば、その分、家計もじわじわと膨らんでいきます。一方、収入については、休職したり、残業・出張等ができなかったりで、減ってしまうケースがほとんど。
今年(2019年)10月からは、消費増税も予定されており、早めに家計の無理・無駄はチェックしておきたいもの。そんな時、どんな風に家計を見直したら良いか考えてみましょう。
家計を改善させる方法は「増やす」と「減らす」の2つだけ!
筆者のところには、がん患者さんだけでなく、健康な方もたくさんご相談に来られます。
そこでみなさん共通のお悩みは、「どうしたら、ムリなく家計をスリム化できるか?」や「お金を貯められるか?」といった家計管理に関するもの。
巷には、さまざまな家計管理法が紹介されていますが、突き詰めて考えてみると、家計を改善させる方法は、①「収入を増やす」と②「支出を減らす」の2つしかありません。
実は、もう1つ「運用する」(=お金に働いてもらう)方法もあるのですが、これは、収入を〝増やす〟に分類されるので、シンプルに2つの方法を覚えておいてください。
また、がん患者さんの場合、高額療養費制度や傷病手当金、医療費控除など公的制度を利用して、給付金や還付を受けるというのも、上記①の「収入を増やす」ことにつながります。
「理想の家計バランス」とは?
そこで今回は、上記②の「支出を減らす」に注目して、家計改善法を考えてみたいと思います。
そのためにもまず、何にお金を使っているか、自分の家計の状況を知ることが必要です。
次の図表は、家族構成別の理想の家計バランスを一覧にしたものです(図表参照)。
それぞれ、手取りの月収にパーセントをかけて、各費目の適正出費を出してみてください。
その上で、それぞれのご自分の支出と比較してみましょう。なお、傷病手当金や障害年金等を受給している場合は、「手取り月収」に、医療費については、高額療養費適用後の金額を「その他」に入れて考えます。
比較した結果、チェックするポイントは、ちゃんと貯蓄ができているか、過大に払い過ぎている費目がないかなど。とくに、住居費や保険料、教育費といった毎月かかる「固定費」が大きい場合は、今後支出が膨らむ可能性が高いので、見直しできないかを早めに検討します。
また、何に使ったかわからない〝使途不明金〟が多いご家庭や、そもそも家計簿をつけていないので金額がわからないご家庭も要注意。
ちゃんと貯蓄ができない最大の原因は、家計のバランスが大きく崩れているから。
そして、そもそも、バランスが崩れるのは、毎月の支出を把握できていないためです。これを機に家計簿などで、何にお金をどれくらい使っているか、家計を「見える化」してみてください。そうすれば、こんなに使っていたんだ、と驚かれるはずです。
また、理想の家計バランスは、あくまでも目安の割合です。例えば、「食べることが大好きなので、食費はかかっているが、被服費や交際費はほとんどかかっていない」とか、「趣味がドライブなので、クルマ関係費が多いが、それ以外を節約して賄(まかな)っている」など、個々のご家庭で優先順位をつけてヤリクリしている場合はOK。要は家計にもメリハリをつけましょうということです。
がん患者さんの家計の注意すべきポイントは?
さて、そこでがん患者さんの家計ですが、治療の状況によって、注意すべきポイントは変わります。
まず、告知前後から1年以内で、まだ治療中の場合、通院や検査の回数も多く、高額な医療費がかかっているはずです。大きく収支がマイナスになっていても仕方がありませんので、その費用を預貯金や民間保険など、どこから補填(ほてん)するかを検討します。ただし、住宅ローン返済まで滞るようであれば、早めに金融機関に行って、返済方法の見直しの相談をしましょう。
一方、1年以上経過し、治療がある程度落ち着いてにもかかわらず、家計が改善していない場合は、まず、食費や水道光熱費、スマホ・通信費などの「変動費」→住居費、保険料、教育費などの「固定費」の順で見直しを。
電気とガスをどちらかの会社に一本化したり、スマホ料金のプランを見直ししたりするだけで年間1万円の節約になります。
今月のワンポイント 家計の見直しは、ダイエットと同じでムリは禁物。急に切り詰めたりすればストレスがたまって、カードで衝動買いしてしまうかも。家計簿をつけるのが面倒くさいという人は、買い物をしたレシートをチェックするだけ、ノートに張るだけでも、確実に、ムダ遣いが減るはずです。