新しく、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺やびまん性胸膜肥厚が救済対象に加わりました
アスベスト(石綿)健康被害者には、救済の道があります!

取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2010年12月
更新:2013年4月

  

アスベスト(石綿)による健康被害といわれる中皮腫や肺がんが年々増えています。この被害者たちを救済する救済制度があります。
2010年7月からその対象がさらに広がり、中皮腫・肺がんに加えて、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺やびまん性胸膜肥厚も加わりました。

8割以上が建材に使用された

あなたはアスベスト(石綿)による健康被害を受けていませんか。

もし被害を受けていれば、労災補償制度等の対象にならなくても、医療費、弔慰金等の救済給付が受けられます。平成18年3月27日に「石綿による健康被害の救済に関する法律」が施行されたことによるものですが、この制度に2010年7月1日から、従来の中皮腫・石綿による肺がんに加えて、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺やびまん性胸膜肥厚が救済対象に追加されました。心当たりのある方(遺族を含む)は独立行政法人の環境再生保全機構や環境省地方環境事務所、近くの保健所に相談に行ってはいかがでしょうか。

アスベストは、天然にできた鉱物繊維で、「せきめん」とも「いしわた」とも呼ばれます。極めて細い繊維からできていて、熱や摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性から、建材や摩擦材、シール断熱材などの工業製品に使用され、これまでの輸入総量は1000万トンに上ります。とくに1970年から90年にかけては年間約30万トンずつも輸入され、その8割以上は建材に使用されたといわれます。

[アスベストの輸入量と中皮腫発生の推移]
図:アスベストの輸入量と中皮腫発生の推移

30~50年の潜伏期間を経て発症

[アスベスト粉塵のばく露量と潜伏期間(Bohlig 1975を改変)]
図:アスベスト粉塵のばく露量と潜伏期間

しかし、1970年代ごろから、アスベストを大量に吸い込むと人体に有害であることが指摘されるようになりました。アスベストを吸引するとヒトの肺胞に沈着しやすいのが特徴です。この体内に長く滞留したアスベストが要因となって、肺で線維化が起こったり、中皮腫や肺がんなどの病気が引き起こされたりすることがあります。

アスベストが長期間滞留すると、炎症が起こり、肺の組織が傷つけられ続けることで線維化が起こります。また、発生する活性酸素()によりDNAが傷つけられる結果、遺伝子に異常が起こって細胞のがん化が起こると考えられています。ただ、がんの発症には長期間(30~50年)かかるとされています。

アスベストは細くて長いものほど有害性が高くなるといわれています。肺の中に入り込んだアスベストは、体内の白血球の一種であるマクロファージ(大食細胞)により排除しようとされますが、長い繊維だと排除されにくく体内に長く留まるためと考えられています。

また、吸い込んだアスベストの量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められています。しかし、どのくらいの量を、どのくらいの期間吸い込めば中皮腫や肺がんになるかということまではまだ解明されていません。

活性酸素=酸化作用が強い酸素化合物で、体内で大量に生じると細胞を傷つける

救済給付の支給を受けるには

では、このようなアスベストによる健康被害を受けた方、および遺族の方が冒頭のような救済給付を受けるにはどうしたらいいでしょうか。

まずは、自分がそうした病気に当てはまるのかどうかを確かめる必要があります。アスベストを吸い込んだ可能性のある方で、息切れがひどくなったり、咳や痰が以前よりも増えたり、胸や背中の痛みが消えなかったり、激しい動悸がしたり、顔色が悪かったりなどの症状があれば、近隣の労災病院のアスベスト疾患センター等の専門医療機関で相談してみてください。

救済給付の内容と給付額について記しておきます。

がんを発症し療養中の方が認定された場合には医療費、療養手当、亡くなった場合には、葬祭料が支給されます。医療費は自己負担分が療養開始日から支給され、認定申請日から最大3年前までさかのぼって請求することができます。

療養手当は、月約10万円が療養開始日、または認定申請日の3年前の日が属する月の翌月から、療養等が不要になった日が属する月まで支給されます。

葬祭料は約20万円。療養中の方が死亡した場合、葬祭を行った方に支給されます。

遺族の方には、特別遺族弔慰金280万円、特別葬祭料約20万円が支給されます。ただし、中皮腫・石綿による肺がんの場合は、平成18年3月26日以前(法施行前)に死亡した方、および平成18年3月27日以降に認定の申請をしないで死亡した方の遺族に対してです(請求期限は、法施行前に死亡した場合は平成24年3月27日まで、法施行後に認定の申請をしないで死亡した場合は死亡後5年以内)。

著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺やびまん性胸膜肥厚の場合は、平成22年6月30日以前に死亡した方、および平成22年7月1日以後に認定の申請をしないで死亡した方の遺族に対してです(請求期限は、平成22年6月30日以前に死亡した場合は平成28年7月1日まで、その日以後に認定の申請をしないで死亡した場合は死亡後5年以内)。

こうした救済給付の支給を受けるに当たっては、審査があり、認定が必要となります。認定には、申請者の戸籍の抄本、戸籍記載事項証明書などのほかに、医師の診断書や病理組織学的検査報告書などが必須です。詳しくは、環境再生保全機構(フリーダイヤル0120-389-931)や環境省地方環境事務所、近隣の保健所で聞いてみてください。

[被認定者産業分類分布(平成18~20年度被認定者を対象、労災等被認定者を除く)
および産業分類別就労人口(昭和40年)]

図:被認定者産業分類分布(平成18~20年度被認定者を対象、労災等被認定者を除く)および産業分類別就労人口(昭和40年)

(出典:環境再生保全機構)


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