高額療養費制度・高額医療費制度を上手に利用していますか
【大腸がんの化学療法を受けた場合】

監修:岡田弘 野村医院院長
発行:2006年12月
更新:2013年8月

  

岡田弘さん
野村医院院長の
岡田弘さん

おかだ ひろし
1938年生まれ。
66年東京医科歯科大学卒業。
67年東京医科歯科大学医学部第1内科入局。
その後東京女子医科大学消化器センター、社会保険蒲田総合病院内科部長、青梅市立総合病院消化器部長などを経て2003年より野村病院院長

高額療養費制度と高額医療費制度の違いは?

どちらの制度も『病院等の窓口で支払った医療費の一部(自己負担限度額を超えた分)が払い戻し(償還)される』という点では一緒なのですが、その給付内容(自己負担限度額の計算方法)は、異なってきます。各制度で利用できる対象者の条件(70歳)が決められていますので、ご自身がどちらの対象者にあてはまるか、確認しましょう(表1)。

[表1 両制度対象者]

高額医療費制度 高額療養費制度
対象者 ・老人医療対象者
 75歳以上の人
 65歳以上で寝たきり等の人
 70歳以上75歳未満の経過措置期間の人
・70歳未満の一般の人
 前期高齢者(平成14年10月以降に70歳になり75歳未満の人)
・老人保健法の【医療受給者証】保持者 ・国民健康保険もしくは健康保険の 【高齢受給者証】保持者

また、これらの制度を利用する際には、共通したいくつかのポイントがあります(表2)。

[表2 制度利用のポイント]

  • 1カ月単位(暦月で1日~月末日)で計算する
    (継続して診療を受けている場合でも、月をまたいだ時は月ごとに分けて計算する)
  • 各病院(診療所等)および各診療科で別々に計算する
  • 同じ医療機関でも、医科と歯科は別々に計算する
  • 保険診療の対象とならない差額ベッド代や入院時の食事負担額は制度の対象にならない
  • 院外処方で支払った分は、処方せんを出した医療機関で受けた診療の一環と見なされるため、処方せんを出した医療機関で支払った分と合わせて計算する
  • 同1世帯で同1月に21,000円以上の支払いが複数あった場合、同じ医療保険に加入していれば、世帯合算ができる

場合によっては償還請求が行えないこともありますので、申請をする前にご自身でもポイントをチェックしてみましょう(ほとんどの場合、高額医療を受けた2~3カ月後に加入している医療保険機関から、自動的に高額療養費・高額医療費の償還に関する書類がご自宅に郵送されてきます)。

どのくらい償還されるの?

表3-1でも分かるように、今回の改正では自己負担限度額が引き上げられています。では、今回の改正で「70歳未満の一般の方(高額療養費制度の対象者)が窓口での一部支払30万円(3割負担・総医療費として100万円)だった場合」を例にとり、償還額がいくらになるのか計算式を使ってみてみましょう(表3-2)。

[表3-1 改正による変更一覧表]

2006年10月以降   自己負担限度額(70歳未満) 改訂前自己負担限度額(70歳未満)
自己負担限度額(1 自己負担限度額(1
上位所得者(2 150,000円+(総医療費-500,000円)×1%
【4回目以降:83,400円】
139,800円+(総医療費-466,000円)×1%
【4回目以降:77,700円】
一般 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
【4回目以降:44,400円】
72,300円+(総医療費-241,000円)×1%
【4回目以降:40,200円】
低所得者
(住民税非課税)
35,400円
【4回目以降:24,600円】
35,400円
【4回目以降:24,600円】

2006年10月以降   自己負担限度額(70歳以上) 改訂前自己負担限度額(70歳以上)
自己負担限度額 自己負担限度額
外来の場合
(個人ごと)
世帯単位・入院および外来 外来の場合
(個人ごと)
世帯単位・入院および外来
一定以上の所得者(3 44,400円 80,100円
+(総医療費-267,000円)× 1%
【4回目以降:44,400円】
40,200円 72,300円
+(総医療費-361,500円)× 1%
【4回目以降:40,200円】
一般 12,000円 44,400円 12,000円 40,200円
低所得者
住民税非課税)
II 8,000円 24,600円 8,000円 24,600円
I 8,000円 15,000円 8,000円 15,000円
II:市町村民税非課税世帯に属する人
I:市町村民税非課税の一定基準所得に満たない(年金収入80万円以下など)人
1)一世帯で1カ月に21,000円以上の支払いが複数ある場合は世帯で合算する
2)月収53万円以上の世帯
3)月収28万円以上、課税所得145万円以上

[表3-2 償還額の計算方法]
表3-2 70歳未満の一般の方が、窓口で30万円(総医療費として100万円)支払う場合

窓口での一部支払が30万円でも、21万2570円が高額療養費とみなされて払い戻しされることになります。このため、実際の負担額(自己負担限度額)は、8万7430円になるのです。

がんの治療は、高額で長期的な治療が必要になりますが、本制度を利用することによって、医療費の軽減がはかれます。12カ月のうち4回目以降の請求では、さらに自己負担限度額が下がるので(表3-1の太字の金額)年間を通してみると医療費はより安く抑えられることがあります(次ページ表4-2)。

治療を選ぶには

インフォームド・コンセントにより、患者さんご自身で治療方法を選択する機会も増えているでしょう。医師から提示された、数ある治療方法の中から1つを選択するとき、みなさんは何を基準に選んでいますか。効果、費用、通院回数などの条件によって、順位は異なってくると思います。しかし、「治療費が高額になってしまうから……」という理由だけで最善の治療を諦める必要はありません。本制度を使えば、近年、わが国でもがんの種類別に確立された標準療法(*1)をはじめ、その他、化学療法を少ない負担で受けることが可能になります。

*1)標準療法は、医師個人の勘や経験に頼ったものではなく、大規模臨床試験を実施した結果、副作用も含め、現在最も効果が優れていると認められた治療法です。標準療法の確立により、誰もが地域差なく、同様に効果の高い治療を受けられることが可能になりました。

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