• rate
  • rate
  • rate

「患者が薬を選ぶ時代」にあって、信頼があり、より安価なジェネリック薬の選び方
積極的にジェネリック薬を利用して医療費を節約しよう

監修:中津裕臣 国保旭中央病院泌尿器科主任部長
取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2010年8月
更新:2019年8月

  
中津裕臣さん
国保旭中央病院
泌尿器科主任部長の
中津裕臣さん

膨れ上がる医療費の削減に向け、厚生労働省は安価なジェネリック薬の利用を積極的に推進しようとしている。
この4月から患者自ら薬を選択する自由度も大幅に増えた。効果は先発薬と同等と言われるジェネリック薬。
医療費のかさむがん患者にとって、これは朗報なのか、それとも……?

前立腺がん治療にジェネリック薬を採用

中津さんが監修した前立腺がんのホルモン治療解説パンフレット

中津さんが監修した前立腺がんのホルモン治療解説パンフレット。ビカルタミド「NK」を服用している患者さんには、全員にこの冊子が渡されている

先発薬と効果が同等で価格が安いと言われるジェネリック薬。1つの先発薬に対して数多くのジェネリック薬が発売されているが、単純に医療費の節約を考えるなら「価格だけ見比べて1番安いものを」ということになろう。だが、はたしてそれでいいのだろうか。

そこで、「ビカルタミド錠『NK』による治療を受けられる患者さまへ」と題した小冊子の監修をしている千葉県旭市の国保旭中央病院泌尿器科主任部長、中津裕臣さんに話を聞いた。

このビカルタミド錠「NK」は前立腺がんに用いられるジェネリックの内服薬。中津さんは、医療費の患者負担を軽減するためジェネリック薬を積極的に取り入れようとしている。

「このパンフレットは、前立腺がんのホルモン治療がどういうものかを伝えるために作りました。患者さんご自身の判断だけでは、なかなか専門的なことはわからないだろうと思い、どういう治療を選ぶべきか、その情報提供を主目的にしています。その中で、ホルモン治療の1つの方法として内服薬を追加するのも効果的な選択であると紹介しているのです。ビカルタミド錠『NK』は、先発薬と効果が同等で経済的な負担を軽くできるジェネリック薬として当病院で採用しているもので、最も効果的なホルモン治療を目指すためにお勧めしているお薬です」

前立腺がんは、最近とくに増加傾向にある。中津さんによれば、国保旭中央病院でも毎年新たに200人ほどの前立腺がん患者が見つかっている。その中で進行して見つかったり、高齢になって見つかったりした前立腺がんの場合は、手術や放射線治療ができないため通常は抗がん剤かホルモン治療という方法がとられるのだ。

治療費の個人負担は月額3万円前後

前立腺がんホルモン治療薬ビカルタミド錠「NK」
前立腺がんホルモン治療薬ビカルタミド錠「NK」

臨床医として中津さんが心を痛めるのは、年金生活者など限られた家計の中から治療費をねん出する患者の経済的負担だ。

「ホルモン治療の注射薬は3カ月に1回打つのですが、費用は1本10万円程度なので月平均では3万円前後です。注射と併用する内服薬にカソデックス(一般名ビカルタミド)というものがあり、これも月3万円ぐらい。さらに、もしその方に骨転移があると転移に効く薬も使うということになって、こちらも月に約3~4万円。したがって治療費だけでもかなり高額です」

もちろん、実際に患者が支払う治療費は、保険適用で3割負担なら注射だけで月に1万円ほど。しかし飲み薬を追加するとこれに1万円前後、転移に効く薬を使えばさらに約1万円と薬を追加するたびに治療費は膨らんでいく。

先発薬カソデックスの薬価は80ミリグラム1錠が1042.6円、ジェネリック薬であるビカルタミド錠「NK」は同じく708.9円。約3割安い計算だが、実際の治療費として考えると月額でも3000円程度の差は出てくることになる。

これは年金生活の限られた家計の中でやりくりする毎月の出費となると馬鹿にならない。ホルモン治療の場合、平均でも3年、長ければ10年以上飲み続けるケースもあるため、治療期間すべての合算なら差額は数万~数10万円。これは大きい。

「個人としてばかりでなく、病院全体として考えれば年間で数百万円の差になって出てきますし、これを全国規模で見たらもっと桁の違う話になると思います。ですから日本の医療費全体を考えても、同じ効果ならば安いほうがいいだろうということがいえるんです」

もちろん注射薬、内服薬、骨転移の抑制剤3種類すべてを先発薬からジェネリック薬に変更できればさらに価格を抑えられるわけだが、残念ながら今のところ前立腺がんのホルモン治療では内服薬以外にジェネリックで代用できる薬はないようだ。

[先発薬とジェネリック薬を使った場合の治療費の対比]

  前立腺がんホルモン治療費(48週分)
  先発医薬品:カソデックスを使用した場合      
  項目 1回分点数 回/48週 点数合計
  再診料 70 12 840
内服薬(カソデックス)+処方調剤料(4週分) 2981 12 35772
  LH-RH注射料(ホルモン治療:リュープリン) 8192 4 32768
  ビスホスホネート注射料(骨転移治療:ゾメタ) 3852 12 46224
  検査料 876 4 3504
  医療費合計 120万円
  自己負担額70歳未満(3割) 36万円
  自己負担額70歳以上(1割) 12万円
  ジェネリック医薬品:ビカルタミド錠「NK」を使用した場合      
  項目 1回分点数 回/48週 点数合計
  再診料 70 12 840
内服薬(ビカルタミド「NK」)+処方調剤料(4週分) 2057 12 24684
  LH-RH注射料(ホルモン治療:リュープリン) 8192 4 32768
  ビスホスホネート注射料(骨転移治療:ゾメタ) 3852 12 46224
  検査料 876 4 3504
  医療費合計     108万円
  自己負担額70歳未満(3割)     32万円
  自己負担額70歳以上(1割)     11万円
  差額 1回あたり  
自己負担額70歳未満(3割) 4万円 3000円
  自己負担額70歳以上(1割) 1万円 1000円  
◎たとえば70歳未満3割負担の場合、年間では4万円以上の医療費節約が可能となる。(国保旭中央病院調べ)


同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート11月 掲載記事更新!