頼れる存在、前向きになれる居場所へ

奈良県初の全がん種の患者会を設立

NCN若草の会代表野村佳子
発行:2013年9月
更新:2014年3月

  

NCN(奈良キャンサーネットワーク)
若草の会
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奈良県の患者サロン

奈良県では2009年3月に患者サロンが開催され、2012年には県内7カ所に設置されていました。

私は患者としてサロンに参加していましたが、2011年からはピアサポーターとしてサロン等での患者支援活動を行い、研修に参加し、情報の発信も行ってきました。

一定の成果はありましたが、個人活動でありその活動に限界を感じていました。同時に、共に歩める仲間が欲しいと思っていました。県内の患者会は一部のがん種に限られ、全てのがん患者を支援できていませんでした。誰でも参加できる患者会の必要性を強く感じていました。

『珠のコトノハ』発行と患者会の始まり

多くの人の想いが込められた『珠のコトノハ』

参加していたサロンは、活動内容の充実と共に、参加者も少しずつ増えました。参加者からも、「がんと向き合う勇気と力になった」「患者の気持ちを理解できた」「話すことで楽になった」「大変なのは自分ひとりでない」「もう社会には必要ない人間だと思い込んでいたが、ここで自分も役に立ちたいと思うようになった」と多くの感想が寄せられ、語り合う場の素晴らしさを感じていました。

そして、このような体験をサロンに参加できない方にも実感してほしいと思い、体験手記の発行を検討しました。2011年11月公益財団法人正力厚生会へ「がん体験談手記とサポート情報冊子」発行事業を、患者会発足の足掛かりとして申請をしました。この申請が「NCN若草の会」のスタートになりました。

申請から1年後の2012年12月、冊子『珠のコトノハ がん患者のたまゆらの手記とサポート情報』を7千部発行しました。参加者は述べ44名、38の手記以外にイラストや詩・短歌など9編の投稿がありました。

この冊子は、私たちの身近にいる普通の人たちによるがん体験手記です。体験を書き、語った人にとっては、その人自身の心の整理につながります。読んだ人には時や場所を選ばず、聴き手としてサロンに参加した感動や力が得られると思います。

また、「がんは自分には関係ない」と無関心な人たちにも、がん患者の実情を知り理解を深めてもらうことで、検診行動や支援行動につながると思います。

そのため、冊子には困ったときや迷ったときの道標にしてほしいと、患者会や相談支援情報も掲載しました。多くの人に読んでほしいと願い、冊子はがん医療を行う近隣の医療機関や保健所、公立図書館、医療系学校の図書館、がん患者が集まる講演会で無料配布をしています。

冊子を読まれた方からは、様々な感想が寄せられています。「人間は気持ちの持ち方が大切ですね」「身体を治す医療者と心を元気にする患者会、そして生きる原動力となる家族、とくに痩せた心を治す患者会は重要です」

また、投稿者と読者が直接会ったり、県外からの冊子入手希望など、冊子を通じた輪が広がっています。

冊子制作には14名が参加しました。参加者全員が治療中のがん患者でした。原稿募集、校正・資金調達・業者との交渉等すべて初体験でした。作る際の多くの人たちとの新たな出会いには、暖かなふれあいや励ましがありました。この交流は、メンバーの私たち自身が最も生きる力をもらったのかもしれません。あるメンバーの「自分の生きた証になってありがたい」とのひと言が印象的でした。

「若草の会」発足と展望

役員会にて。がん種を越え、患者・家族・医療従事者を含めた患者会を目指す

冊子発刊後の2013年3月、「NCN若草の会」として正式にスタートしました。主な活動は、患者、家族、遺族、医療者など患者支援に関わる方たちとの親睦と交流を行い、情報交換、がん医療推進のために行政や医療機関などとの協力、連携を図ることを目的にしています。

現在、会員は20名たらずの闘病中のがん患者(肺・乳・膵・大腸・肝・リンパ腫など)が中心です。そのため、まずは仲間を増やすために、参加を呼び掛けています。NCN若草の会に参加して、自身の人生、生き方を探してみませんか!

今年度は奈良県の事業委託を受け、「広げよう、ピアサポートの輪!」として、サロンに参加できない方たちにもピアサポートの輪を広げることを目標に、休日には地域の会議室などを利用し交流会や講演会を開催します。

第1回は2013年9月23日郡山城ホール、第2回は11月4日奈良県文化会館で行う予定です。また、機関紙の発行、ホームページなどで情報発信も進めていく予定です。ほかの患者会や医療機関とも連携を強め、さらなる発展も目指していきます。

頼れる存在・前向きになれる居場所へ

信頼できる情報と適正な理解は大切なこと(相談研修会)

生命には限りがあり、がんになってもならなくても人は死を迎えます。私は5年前に膵がんを患い、この間再発や死への不安と闘ってきました。

しかし、常に「今生きている間にできることがある、悔いのない人生を送る」という強い気持ちでした。この思いが私を動かしました。そして、そのことを理解し支援してくれる家族や医療者、サロンや全国の集会の場で出会った患者仲間たち、それぞれと重ねた時間が5年間の闘病生活を支えてくれています。この先もがんと共存しながら生きていきたいです。

「思いを語り、そして聴くこと」は、がん患者にとってこれからの時間を大切に過ごすために重要なことです。患者会や患者サロンには、その語り合いの場として重要な役割があります。がんと関わることで、つらい思いを抱かれる患者や家族のために、「NCN若草の会」は頼れる存在、前向きになれる居場所でありたいと思っています。

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