必要なときに立ち寄れる存在に

小児がんと闘う仲間に寄り添いたい

西井美佐子 京都府立医科大学附属病院 腫瘍性疾患児とともに歩む会「かがやく未来」代表
発行:2014年1月
更新:2014年5月

  

腫瘍性疾患児とともに歩む会「かがやく未来」代表 西井美佐子さん
京都府立医科大学附属病院
腫瘍性疾患児とともに歩む会「かがやく未来」

HP:http://www.kagayakumirai21.org/
E-Mail:kodomono@kagayakumirai21.org


突然の入院生活

「やっぱり……」と目の前が真っ暗になったあの日……。娘が急性リンパ性白血病の宣告を受けた、今から14年前のことです。

娘の状態に、ただ事ではないとの直感で駆け込んだ大学病院で即入院となり、その翌日に病名告知を受けたのでした。

突然始まった入院生活は、私にも当時2歳7カ月の娘にも、とてもつらいものでした。24時間の付き添いで、私は心身ともにまったく余裕がなく、今までの毎日から切り離された不安に押しつぶされそうでした。

ついこの間までは、近所の子どもたちと一緒に毎日楽しく過ごしていたのに、どうしてこの子だけがこんなことに……。その頃の私は「どうしてこの子だけが」という思いにとらわれてしまい、そこから脱することができなくなっていました。

そんなある日、個室から総室へと病室を変わることになりました。これが大きな転機になります。そこには娘と同じ年頃の女の子が入院していて、私は同じように小児がんで闘病している子どものお母さんと、初めてゆっくり話をする機会を得たのです。

そのとき、大変なのは自分たちだけではない、自分たちよりもっと大変な想いをしている人がいる、自分がしんどかったのは、どこにも自分の気持ちを吐き出せなかったからということに気づくことができました。

同じ立場の人と話すことで私の心は軽くなり、娘もいつの間にか、子ども同士で仲良くなっています。部屋を変わったことは自分たちにとってプラスになると確信しました。

それまでは、誰にもわかってもらえないという孤立感、弱音を吐いてはいけないというプレッシャー、先の見えない不安をひとり病室で抱えていたように思います。これを境に気持ちを強くもつことができ、共に闘う仲間がいることの有難さを感じました。

退院後の不安と「かがやく未来」設立

しかし約半年後に退院してみると、今までと違う不安を感じるようになりました。入院中は目先の治療や娘の体調のことが不安だったのですが、退院後はこれからの生活や将来に向けての不安が大きくなってきたのです。そして地元の友達には、なかなか自分の不安を打ち明けられない、わかってもらえないと感じてしまう日々がありました。

そんな中で、同じ経験をした者同士が、悩みや不安、さまざまな情報を分かちあえる場が必要だと強く思いました。そして、2001年に「小児がん親の会」を立ち上げることを決意。入院中に同室だったお母さんと2人で、主治医に相談しながら手探りで活動を始め、子どもたちの明るい未来を願って「かがやく未来」と名付けました。

会のあり方を模索してわかったのは、同じ立場の親でも、「できるだけ早く病気のことを忘れたい、病院と縁を切りたいと願う人」と、「いつまでも仲間とつながっていたいと望む人」というように、感じ方や考え方がいろいろあることでした。そこで、会としては会員制という形をとらず、その人が必要なときにふと立ち寄れて、通過点のひとつの場として存在することを目標とすることに決めました。

入院中でも子どもらしく過ごすために

患児にも好評の絵本や紙芝居の読み聞かせ

ベッドサイドにも入れる移動図書館「きらりん文庫」

勉強会や交流会、会報の作成など細々と活動していく中で、賛同してくれるメンバーも少しずつ増えました。そして、自分たちの経験から、入院中でも子どもらしく楽しく過ごすことが大切だと感じていた私たちは、闘病中の子どもたちのために何かできないかと考えるようになりました。

そこで、まずは小中学生の患児のために院内学級の設立を病院にお願いすることにしました。しかし、今の時代なら当たり前のことも、当時はまだ簡単に事が進みませんでした。交渉を重ね、署名活動を行い、実現まで約2年の月日がかかりましたが、実現したときの喜びは大変大きいものでした。今、点滴スタンドを押しながら、笑顔で院内学級に通う子どもたちの姿を見るのが何よりの喜びです。

その後、私たち元患児家族の想いを汲んでくださった病院から「読み聞かせボランティア」としての活動を認めてもらうことができました。

現在3つのプレイルームで、絵本や紙芝居、ペープサート(=紙人形劇)、パネルシアターなどをし、手遊び、シール遊びなども取り入れた「おはなしバスケット」という活動を行っています。

また、病室から出られない患児や高校生などの大きい子、付き添いの親御さん向けに、ベッドサイドにお邪魔する移動図書「きらりん文庫」も始めました。

これらの活動の原資は、すべて助成金と寄付金です。活動を支えていただき、本当に感謝しています。現在、会報の発行は中止し、ホームページからの情報発信を行っています。また、「先輩ママからの入院生活応援ブック」という冊子を作成し、入院に関してや、子どもへの告知の問題など、先に経験した人たちの情報をもとに伝えたい内容をまとめています。

継続は力なり

メンバーは、元患児の親以外に、ボランティアとしての参加を含めて14名になり、月に2回のペースで活動しています。

仕事や介護を抱えながらの活動なので大変な面もありますが、子どもたちの笑顔を見ることで、私たちのほうが力をもらっていると感じ、活動の原動力となっています。

「継続は力なり」で、細く長く続けることを第一に、決して無理せず、その上で今後も少しずつでもできることを増やしていけるようにと思っています。

また、同じ経験をしていても、病気や状況、想いやつらさはそれぞれで、まったく同じものはないと思います。今後は、自分たちもしっかりピアサポートを学ぶことで、より現場に寄り添えることができたらと考えています。

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