シンポジウムで得たものを今後の活動にいかしていきたい
第4回国際褐色細胞腫シンポジウムに患者会として参加して
国際的褐色細胞腫研究の支援組織、PRESSOR(The Pheochromocytoma and paraganglioma Research Support Organization)は、褐色細胞腫の医療水準向上を目的に3年ごとに国際シンポジウムを催しています。
2014年の4回目にあたる「ISP2014」はメルパルク京都にて9月17~20日まで開催。アジアでは初開催となり、医療者や研究者の注目を集めました。その最終日にあたる20日、患者会「褐色細胞腫を考える会」主体の「褐色細胞腫市民公開シンポジウム」が開かれました。
患者とその家族が、交流会や情報メール、会報などを通し
病気の情報を共有することで、適切な医療を受け、生活の質(QOL)を向上することを目的に活動しています。
代表 立松秀樹
ホームページ:www.pheopara.com
患者会の活動を通し CVD(抗がん薬)が保険適用に
「褐色細胞腫市民公開シンポジウム」には「褐色細胞腫を考える会」会員をはじめ、日本、米国、スペイン、中国、フィリピンなど、国内外の医療関係者約60名が参加。まず立松秀樹代表が患者会の取り組みについて講演しました。
褐色細胞腫は副腎髄質や交感神経系の傍神経節から発生する腫瘍です。カテコールアミンというホルモンが過剰に分泌され、高血圧を起こすのが特徴。患者数は2,600人、うち320例が難治性といわれている珍しい疾患です。治療の研究は進んでおらず、2009年の患者会設立当初は、保険適用された有効な治療法がない状況でした。
しかし厚生労働省への働きかけや、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の開発要望募集に応募するなどの地道な活動の結果、2013年3月にCVD(抗がん薬)が承認取得。同年10月には小野薬品工業が*デムサー(カテコールアミン合成阻害薬)の開発を表明するなど、少しずつですが一歩一歩前進してきました。
現在は難病対策の医療費助成の対象疾患指定や全国医療体制整備を国に要望しているなど、患者会の歩みと活動内容を紹介しました。
*デムサー=一般名 α-メチルパラタイロシン
米国では 遺伝子変異に関する国際的なデータベースを構築
続いて米国患者会「PheoPara Troopers」代表Allen Wilson氏が講演をしました。
「PheoPara Troopers」ではフェイスブックなどWebを通して国際的なネットワークを構築。診断治療ガイドライン情報やドクターの紹介などをしています。
また、褐色細胞腫は遺伝性疾患に起因する場合があるとされますが、遺伝子変異の情報を中心にしたデータベースを作成。500人ほどの患者が登録しているそうです。遺伝子検査に対する考え方が日本と異なる米国ならではの活動を興味深く感じました。
海外の最新治療法や状況を知る貴重な機会
その後は「ISP2014」大会長で患者会協力医である国立病院機構京都医療センター成瀬光栄先生の進行のもと、Q&Aコーナーを実施しました。東京女子医科大学田辺晶代先生、聖マリアンナ医科大学方波見卓行先生、筑波大学病院竹越一博先生、福島県立医科大学橋本重厚先生、米国Mayo ClinicのWilliam F. Young先生をはじめ、スペイン、中国、フィリピンの医療関係者らが参加。患者らの質問に答えました。
海外で開発されている最新の治療法に関しては、分子標的薬のカテゴリーで治験が進められていること、また凍結療法やラジオ波焼灼術が注目されているなどの情報がもたらされました。
また遺伝子検査で陽性の場合家族はどうするべきかという問いには、以前より浸透率(遺伝子変異がある人が発症する確率)が低いことが分かってきたのと、腫瘍自体はゆっくり育つので、早く見つけて早く摘出することが大事という意見があがりました。ただし国によって考えが違い、長期的に診る必要があり、コスト面などで課題があるという意見も出ました。
さらに手術が不可能な難治性褐色細胞腫の場合、日本ではCVDが第1選択であるのに対し、中国では保険が効かないMIBG(放射線内照射)が第1選択であること、またスペインではMIBGに保険が効くという報告がありました。国による違いや世界の流れが見え、大変貴重な機会となった今回のシンポジウム。得た物を今後の活動にいかしていけたらと思います。
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