「インプラントによる乳房再建」をテーマにセミナーを開催

乳がん患者さんに役立つ情報を発信し続けたい

文●片野左保 E-BeC(NPO法人 エンパワリング ブレストキャンサー)
発行:2015年1月
更新:2016年1月

  

「乳房再建手術」についての正しい知識と理解の普及
をめざし活動するNPO法人 エンパワリング ブレストキャンサー(以下 E-BeC)は11月16日、東京ウィメンズプラザ(渋谷区神宮前)において『インプラントを使った乳がん手術後の二次再建』をテーマに特別セミナーを開催。インプラントでの乳房再建を考えている約150人の患者さんたちが、この分野の第一人者である岩平佳子医師の講演をはじめ、様々な情報提供コーナーなどに熱心に参加しました。

「乳房再建手術」をとりまく環境の変化

現在、日本人女性のおよそ12人に1人が乳がんに罹るといわれ、罹患率は年々増加しています。早期発見・早期治療ができれば比較的予後のよいがんですが、患部の摘出手術によって胸の形は大きく変形し、大きな精神的苦痛を残す患者さんも少なくありません。

「乳房再建手術」は、乳がん手術で損なわれた乳房の形を取り戻すことを目的とした形成外科分野の手術です。

再建手術を受けることで、患者さんは女性としての自信を取り戻し、病気と向き合いながら積極的な人生を送ることができ、その意味で、「乳房再建手術」には患者さんたちのQOL(生活の質)を高めるという大きな意義があります。

ここ数年はメディアで「乳房再建手術」が紹介される機会も増え、手術を希望する患者さんも増えてきました。

2012年3月には乳腺外科医と形成外科医が一堂に会する「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」が誕生。乳腺外科と形成外科の連携のもと、よりよい乳房再建手術の普及をめざす環境づくりが緒につきました。

インプラントの再建を正しく知ってもらうために

さらに2013年7月には、乳房再建に用いるラウンド型(まる型)シリコンインプラント(以下、インプラント)が保険治療の適用対象となりました。

また、2014年1月からは、より自然な形状のアナトミカル型(しずく型)インプラントも保険適用となり、乳房再建を希望する患者さんたちの経済的負担も、大きく軽減されることになりました。

しかしながら、インプラントでの再建を望む患者さんたちにとって、医療機関や医師の選択基準、自分に合った手術方法などについて、適切かつ正確な情報を得られる機会は限られており、かえって混乱してしまう患者さんも少なくありませんでした。

そこでE-BeCは、インプラントによる乳房再建の第1人者である、ブレストサージャリークリニック(東京・品川)院長の岩平佳子さんを講師に迎えて、乳がん手術後にインプラントによる乳房再建を考えている方々を対象としたセミナーを開催することにしました。

今後も乳がん患者さんたちに有用な情報を

セミナーでは、インプラントでの乳房再建を受けるにあたって知っておきたいことを中心に、岩平さんの講演をはじめ、インプラントでの再建手術を経験した6名の患者さんの胸を実際に見て触れることのできる「体感会」、ナースおよびピアサポーターによる相談会、手術後の下着に関するアドバイスなどのコーナーを設けました。

インプラントによる乳房再建を考えている150名の参加者から、「シリコンインプラントによる乳房再建の長所・短所の両方について勉強になった」「病院選びのポイントがよくわかった」などの感想が聞かれました。

「乳房再建手術」に対する認知や理解は随分広がってきたとはいえ、このように患者さんのもとにはまだまだ正確な情報が十分行き渡っているとはいえず、大都市と地方都市間の情報格差も拡大しています。

乳がん罹患率が高まるなかで、E-BeCでは今後とも、現代社会に生きる女性たちに役立つ、様々な情報発信を続けていきたい考えです。

2014年11月16日、東京で開催された「乳房再建手術」セミナーで、最新の乳房再建の講演や相談会などが催された

「担当医師の経験や、再建手術後の写真をみせてもらい病院を選ぶことが大切です」と講演するブレストサージャリークリニック院長の岩平佳子さん(写真はいずれもNHK「首都圏ニュース」2014.11.16より)

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