スキルス胃がんの患者会があることを知って欲しい スキルス胃がん患者さんだけでなく、正確な診断のためにも
2年前の2013年に健康診断を受けた轟さんは、病院から電話で呼び出され、スキルス胃がんのⅣ(IV)期で、手術はできませんと告げられた。情報を探すうち、スキルス胃がんの患者会がないことに気がつきます。そこで、昨年10月、患者会「希望の会」を立ち上げました。今年3月にはNPO法人化され、活動の幅を広げています。
スキルス胃がんと言われて
2013年12月。医師から自宅に電話がありました。
「先日の健診の結果が思わしくない。至急、病院にいらしてください」
診断はスキルス胃がん、ステージⅣ。そのときから、私は、世の中から切り離されたような孤独を感じ、絶望の中にいました。
腹膜播種を伴うⅣ期のスキルス胃がんは、手術不適応、抗がん薬治療による延命治療を行うのが一般的。しかし、告知の時点でスキルス胃がんやその治療法に詳しいわけではなく、と言うよりも全く無知であるため、主治医の勧めに従って抗がん薬治療を開始します。
そして、1次選択の治療がすぐに開始され、気がつくと2次選択に。すぐに、3次、4次と進み、やがて使える抗がん薬がなくなり、緩和ケア行きを宣告されます。つまり、治療終了です。
このように、Ⅳ期における抗がん薬治療は、決して治ることを前提としたものではなく、延命や症状緩和を目的としたもののようです。一方では、術前化学療法を行って外科手術に持ち込む医師もいます。
告知後、医師の勧めに従って抗がん薬治療をしながらネットなどで情報を検索して、腹膜播種があっても術前化学療法によって手術できる可能性があることや、腹膜ごと病巣を切除する手術法があることなどを知りました。
しかし、そのような治療法を受けるには、告知後すぐ、例えば抗がん薬治療が始まる前、始まっていても1、2コース程度、期間にして告知後1~2カ月間程度の間にそのような情報に巡り会う必要があります。2次、3次になってからでは遅いのです。
すでに2次、3次に移行していると、腹膜播種に効く抗がん薬に対する耐性ができていたり、スキルス胃がんの場合はとくに進行が速いため、他の臓器に転移していたりします。そうなると、やはり手術不適応となってしまい、積極的な治療の選択肢はなくなります。
術前化学療法を受け、手術を目指しましたが、7カ月たった頃、手術不可能を告げられました。諦めきれず、複数の病院のセカンドオピニオンを受け、やっと「もしかしたら、手術にたどり着けるかもしれない」という病院に出合いました。私はそこでの治療にかけることにしましたが、この時点で、スキルス胃がん診断からすでに1年以上が経っていました。
その病院で治療中、あと少しで手術に手が届きそうになったとき、小さな骨転移がみつかり、残念ながら、再び手術不可能を告げられてしまいました。自分たちの周りには、本当に情報がなかったのです。
スキルス胃がんになって、同じ病気の人に会ったことがありません。胃がんならいるけれど、スキルスはいない。孤独でした。
患者会がないならば自分で作ろう
患者会を必死で調べ、ないのであれば、創ろうと、2014年10月、私は、「希望の会」を立ち上げました。ブログを通じての呼びかけでしたので、仲間が集まるのかもわからない状態でしたが、2週間で30人近い仲間が集まりました。
最初は、主に、ネット上の掲示板を通じてのお互いの情報交換でしたが、自分たちが知らなかった情報が、お互いの力になっていきました。患者会の力はそこにあります。専門家ではないので、自分の経験してきたことしか伝えられない。でも、わかってくれる。自分のために、一緒に考えてくれる。その存在が、前を向く力になるのです。
それぞれの状態、そして、どのように生きていきたいかは、それぞれが決めること。その人が納得できたことが、その人のベストなのだと思います。選択するのは、患者本人。それは、私が患者となり、痛感したことです。
「希望の会」を知って欲しい
私の現在を知り、行動に賛同してくれた、学生時代の友人たちの尽力を得て、「希望の会」は2015年3月13日、特定非営利活動法人(NPO法人)「希望の会」になりました。そして4月現在、患者、家族会員は80名を超え、会を運営している正会員を含めると100名以上の規模になりました。
スキルス胃がんと診断され、孤独や不安の中にいる方だけでなく、胃の不調を感じている方の正確な診断のためにも、「希望の会」の存在を、1人でも多くの方に知っていただきたい。これからも、「希望の会」は、スキルス胃がん患者、家族のためだけではなく、スキルス胃がん早期発見のためにも、一歩ずつ、歩を進めていきたいと思っています。
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