さまざまながん種の体験者さんに集まって欲しい
自分の闘病体験から生まれた これまでにない「支え合いサイト」
大久保さん(左)とシステム開発担当の
山本さん
2007年にマラソンのトレーニング中に怪我をして入院した大久保さんは、退院間際に精巣腫瘍と診断されました。手術後、困難な闘病生活の末、100kmマラソンを完走できるまでに回復。生かされた次の人生は「がん患者さんのために」と決意し、今年2月、ウェブサイト患者会「5years」を立ち上げました。
代表 大久保淳一
ホームページ:5years.org/ メール:info@5years.org
進行がんの患者となって
「がんが、腹部、肺、そして首にまで転移しています。精巣腫瘍、最終ステージのⅢ(III)Bです」
2度目の告知は、あっけないものでした。
5年生存率49%、治療の第1選択は抗がん薬療法。しかし、その後のことはいっさいわからない。自分の生活設計が大きく変わり、わずか数日先の事しか考えられない人生。それが進行がんの患者の生活だと知りました。
私は、不安から懸命にインターネットを使って、病気と治療の情報を集めました。しかし、調べれば調べるほど、ある事に気づきます。「ネット上にある病気情報は、怖い、嫌な、ネガティブなものばかりだ……」ということに。
医療機関と製薬会社がホームページに載せる情報は、保守的なものが多く、また、患者さんが書くブログは、最後に「他界しました」と、家族の書き添えがある。
私は、治療を終え、無事に社会に戻ったがん経験者たちの情報を探しました。自分の未来と重ね合わせることで治療への希望が欲しかったのです。しかし、そのような情報はなく、わずかに見つけたプロスポーツ選手達のカムバック記事に、すがるような希望を持ちました。そして、この経験が、現在の「5years」の活動の原点となります。
3カ月間に及ぶ抗がん薬治療に続き、2度目の手術。そして合併症・間質性肺炎の急性増悪。毎日が命と向き合う日々でした。
これから自分たちの生活はどうなっていくのか?到底抱えきれない、たくさんの問題に直面した私は、先にがんを経験した患者さんたちから、いろいろと教えて欲しいと思います。しかし、どこにそんな人がいるのかわからない、どうすれば教えてもらえるのかもわからない。このとき、患者が必要とする情報が、手に入りにくい実情を痛感します。
がん告知から10カ月後。奇跡的に一命を取りとめ、長いリハビリを経て2009年、1年半ぶりに職場に復帰。6年後の2013年、悲願のサロマ湖100㎞ウルトラマラソンへの復帰を果たしました。
新しい仕組みの「5years」を立ち上げる
今こうして元気になり、2014年、長年勤めたゴールドマン・サックス社を退職し、患者さんとそのご家族を支援する「5years」を始めました。がんから生かされた者として、社会に恩返しをしたいからです。
「5years」という組織では、闘病当時、自分が欲しかったけど、手に入らなかった仕組みを実現しています。
それはウェブサイト上に「がん治療後に無事に社会に戻ったがん経験者たちの詳しい情報」を掲載すること。そして、「患者が、サイト上に登録されている経験者を指名し、自分の不安と生活上の問題(日々の体調、心のコントロール、就労、扶養、性的な尊厳等ヘルスケア全般)の相談にのってもらえる仕組み」の実現。
これまでになかった新しい支え合いが出来ると信じています。
「5years」はコミュニケーションサイト
「5years」は、入院中や、他県遠方の患者さんでも参加できる仕組みで、患者さんと経験者たちのコミュニティを作っています。登録されたがん経験者たちの、病歴・治療歴から復帰歴までの詳細な情報をご覧になれば、勇気づけられ、希望が持てるはずです。
また、従来の電話相談とも異なり、患者さんは、経験者のプロフィール情報をもとに相談者を指名できるので、
1人ひとりに適した相談(テレビ電話会議設備を利用)ができます。
加えて、サイトには、「みんなの広場」というコミュニケーションツールがあります。それは、患者さん・ご家族から頂いた質問に対して、登録されている経験者たちが答えていくQ&A形式のSNSです。
「5years」は、がん経験者、治療中の患者さん、そしてご家族が参加し、お互いが自分の病気と治療の情報を出し合い、経験について伝え合い、その結果、お互いが必要としている情報が手に入る。そんな素晴らしい仕組みです。
私たちの活動は、昨年「きずなづくり大賞2014」(東京都社会福祉協議会主催)にも選ばれました。「5years」への登録は無料です。ぜひ多くの方にご登録頂き、闘病中の患者さんとご家族にとって、「こんな仕組みがあってよかった」といわれる活動にしたいです。
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