ユーイング肉腫家族の会
ユーイング肉腫など症例数の少ないがん種の認知・啓発・協力づくりを
ユーイング肉腫家族の会代表の
有國美恵子さん
「私の経験は誰の役にもたたない」からこそ連携を
ユーイング肉腫は、主に小児、思春期、若年成人に発症する悪性の骨軟部腫瘍の1つです。多くは骨に発生しますが、筋肉・神経・脂肪などの軟部組織、頭頸部や臓器に発生することもあります。年間、国内での発症は50例とも言われますが、小児も成人も登録制度がないので、正確に把握できないというのが現状です。
国立がん研究センター小児腫瘍科医師のご尽力により、アメリカの治験データによる科学的根拠のある抗がん剤のプロトコル(*)が導入され、5年生存率も高まってきました。
しかしながら、病理の段階で、なかなか「ユーイング肉腫」と判定しない場合もあり、皆が皆、適正な診断、治療を受けているとは限りません。
また、化学療法・外科手術・放射線照射の集学的治療(*)は複合的で、小児科と外科との連携不足も窺えます。このような実情を思い、患者家族の身になって、情報を提供する場、相談を受ける場が必要ではないかと、山口県の家族が代表を務め、千葉の家族が事務局を引き受け、2007年『ユーイング肉腫家族の会』を設立しました。
*プロトコル=がんの化学療法で、抗がん剤の投与法・投与量・投与期間などの決められた手順
*集学的治療=がんの3 大治療のいくつかを効果的に組み合わせた治療法
『家族の会』としたのは、患児・患者とその家族にとどまらず、医療関係者をはじめ、教育関係者など、あらゆ る方々にご支援いただき、『おおきな家族』という広がりを持ちたかったからです。
子どもさんを亡くされた方、診断されたばかりの方、治療中の方、退院して経過良好な方など、同じ病名でも、部位も違えば、年齢、状況も違います。「私の経験は誰の役にもたたない」がモットーで、全国各地からの相談を受けています。
例えば、「病理診断で、ユーイング肉腫ではないかと言われたが、なかなか判定しない。こんなに時間がかかるものなのだろうか?」「入院している小児科病棟は、白血病の子がほとんどで同じ病気の子がいない。情報が少ない」「主治医を信頼しているが、セカンドオピニオンをとりたいと伝えるのは失礼だろうか?」「主治医にもう治療方法がないと言われた。どうすればいいのか。子どもが不憫でならない」「再発しても使える薬が少なすぎる。何か使える薬があったら教えて欲しい」「抗がん剤以外に、治療方法はないのか?」といった切実な内容です。
また、「小児と同じ、長くつらい集学的治療を受けているのに、年齢が18歳を超えているため、小児慢性特定疾患の助成も受けられず、お金がかかる。親にこれ以上迷惑をかけたくない」「患者が幼くて、病院のベッドで添い寝、寝返りが打てない。長い間、家に帰っていない」「社会復帰したい。この病気は治った人がいるのですか?」「根治のためには、足の切除しかないと言われた。サッカー選手が夢だったのに……」「本当に大変な入院だった。夫の協力なく、離婚を考えている」「無事退院したけれど、学校に行かせるのが不安」といった相談もあり、さまざまな訴えも伝わってきます。
医療相談に関しては、NPO法人小児がん治療開発サポートSUCCESS、国立がん研究センター内のサルコーマ(*)ホットラインにつないでいます。
*サルコーマ=肉腫
誰が罹患(*)してもおかしくない病気なので、一般社会の認知、理解も必要です。小児がんの、教育現場での啓発と人材育成はとくに大切と考え、SUCCESS理事長、国立成育医療研究センター名誉総長の秦順一先生のご協力により、──小児がんの正しい理解のために──病理医が語る『細胞の不思議』という公開講座を、山口県の中学校と高校で企画実施しました。
症例数の少ない肉腫は、研究発展、治療開発に世界的な協力体制が不可欠です。世界中の肉腫の経験者、家族、サポーター、専門医を志す人などがともに協力し合うことが、私たちの「夢」です。アメリカのMDアンダーソン病院の視察など、実現を目指します。
*罹患=病気にかかること
今後の予定としては、7月15日金曜日、京都国際会議場で開かれる、第44回日本整形外科学会・骨軟部腫瘍学術集会において、活動状況の紹介、整形外科医に対する要望を伝えて欲しいと希望され、講演を予定しています。
また、翌日7月16日土曜日午後、アフラックペアレンツハウス大阪にて、「がんの子どもを守る会」との共催で、「ユーイング肉腫家族の会」の集まりを持つ予定です。会員が、全国各地ばらばら、病院も違うので、集まり、顔を合わせることが難しいのが現実ですが、可能な限りの参加をお待ちしています。
これまでの多くの方の歩みに感謝し、家族会としても、できることが少しずつ増えていることを喜びたいと思います。
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