神戸いずみの会(がん全般/兵庫)
家族のような温もりを受け継ぐ歴史あるがん患者自助グループ
神戸いずみの会事務局書記の
古橋悦子さん
傷つき、戸惑う人を包み込み、受け入れる
「毎月1回 第4火曜日 午後1時半より」……長年守られている神戸いずみの会のスタイルです。神戸市垂水区にある「下荒神医院」の待合室に、10~15名前後が集まり、1時間半ほど自由に話し合っています。
ときどき、講師を呼んだり、テーマを決めて学習する企画も行いつつ、参加する人の条件を絞ることなく、興味を持たれた方にはどなたでも門を開いています。今でこそ、がん患者の自助グループは全国各地にたくさんあり、全く珍しくありません。しかし、神戸いずみの会が発足した、1982年当時は、まだ「がん告知はしない」という時代でしたから、「がんの患者による自助グループ」は先駆的で、世間の注目を集めました。
前身となったのは、神戸市垂水区で外科医院の院長をされていた、故河野博臣先生による「胃腸友の会」。術後の患者同士が交わる会でした。
2003年に他界された河野博臣先生は、「死は医学の敗北」と言われた時代に、開業医として終末期の患者や家族と真正面から向き合い、日本の終末期医療の先駆者としてご活躍されました。
「神戸いずみの会」は、河野先生のご活動――「死の臨床」をはじめ、数々の著作、そして「日本死の臨床研究会」等、時代を先取りした学会――など、注目を集める数々のひらめきの原点でもあったのです。
河野先生の意欲的で斬新なご活動の傍ら、いつも着実に「神戸いずみの会」の運営を取り仕切ってこられたのは、発足当時1番若い患者だった、故高出昌洋氏でした。
胃がんの大手術の後、高校教師としての勤めの傍ら、「木版画」という天分を開花され、芸術の道を歩みつつ、「神戸いずみの会」の中核として支えてこられました。
最初に決められた会の目的、「がん、潰瘍などの手術をした人、心身症などの病気で苦しんでいる人、またはその患者の家族の方々が集まって、1人ひとりの経験を話し合い、イメージ療法にひとときを過ごして、病気の再発を防ぎ、病気と上手につきあう」は、今も継承されています。
会には、河野先生も忙しい合間を縫って出席され、精神的なサポートや、瞑想によるイメージ療法などをご指導されました。そして「がんも身の内。人間だれでもがん細胞を持っている。がんも細胞。人間も細胞。同じ細胞同士」という先生のお考えが、会員の間に浸透していきました。
河野先生亡き後も、事務局長の高出氏を中心に、ときにボランティア活動や、電話相談などを行いつつ、ほぼ同じペースで活動は続きました。がん患者によるさまざまな自助グループが増え、それぞれが独創的、意欲的な活動をする時代へと変化する中で、「患者が運営する会なのだから、無理せず、続けることこそ意義がある」という高出氏のご姿勢のまま、彼の木版画作品にある美しい草花のように、しっかりと根付きました。
活動は決して派手ではありませんが、術後の患者さん、患者さんを持つご家族、また医療関係者などが集い、しばらく来られない人が復帰されたら「おかえりなさい」と自然に言える、家族的な場となりました。
とても残念なことに、昨年末に、高出氏がご逝去なさり、いずみの会は、発足以来の先導者を失いました。この先どうなるのかという不安の中、あちこちから支えの手が差し出され、小さな力を出し合い、運営を続けることができています。
そして今こそ、それぞれのメンバーが設立の意味を再確認して、会の存在価値を実感しています。
神戸いずみの会は、決して万能ではありませんが、肩肘を張らない長年のスタイルは、普段話題にしにくい深刻な問題も、和やかに受け入れてしまう雰囲気があります。
「手術を終えて間もなくて不安でいっぱいの方が、伏し目がちに初めて参加。しばらくは他の方のお話を聞いていて、ぼちぼち、ご自分の話を始める。常連のメンバーから『私もそうだったんですよ。同じ気持ちでしたよ』等々の声がかかり、会が終わる頃には、すっかり笑顔になり、たくさん語っている……」そんな光景がときどき見られます。そうやって、傷つき戸惑う人を、開きかけた大きな花の真ん中に包み込むように受け入れていく……。そういうときこそ、「神戸いずみの会」の力が最も発揮されているときなのです。
最先端医療の専門的な情報を追い求めておられる方には、少し物足りない会かもしれません。けれども、ゆっくりと心を休めたいと思われる方、ご興味がおありの方は、どうぞ1度見学にお越し下さい。一同心よりお待ちしています。
神戸いずみの会
神戸市垂水区小束山6丁目15-1
TEL&FAX:078-793-0682 高出方
Eメール
神戸いずみの会ブログ
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