血液疾患患者と家族「晴れの会」(血液疾患/熊本)
患者・家族と医療者が語り合い、支え合う温かい場所に
血液疾患患者と家族
「晴れの会」世話人の
堀田めぐみさん
同じ思いを聴き合うことで心が安らぎ、力がわいてくる
晴れの会は、平成17年12月の熊本県難病相談・支援センター「血液難病交流会」に参加した患者が中心となり、発足しました。
最初の交流会では、悪性リンパ腫、急性白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病など血液がんと血液難病の患者約15名がお互いの病気について語り合いました。
それは、私が急性リンパ性白血病を発病した1年後のことで、押しつぶされそうな不安の日々に一筋の光が射すような出来事でした。
「熊本に白血病の患者会はありません」
主治医からそう聞いたのは入院治療中のことでした。こんなに知られている血液がんの患者会がないなんて! どこへ行ったら同じ病気の人と会って話せるのだろう。インターネットを検索すればするほど深い森の中をさまよっているような孤独感がつのりました。
平成18年4月、「病気のことを普通に話し合える」場所ができたことは大きな喜びでした。
病気がわかってからの不安、恐怖、孤独感……化学療法や手術などの治療のつらさはがんに罹った人なら誰でも経験しているものです。同じ思いを経験している人同士が、お互いに話しを聴き合うことで心が安らぎ、力がわいてくる。また、自分の体験が他の仲間の役に立つことを知り自分自身も元気になっていく。患者会の最大の目的はピア・カウンセリング(*)にあります。
晴れの会ではピア・カウンセリングの場としての交流会を毎月第3日曜日に熊本市中央保健福祉センター「ウェルパルくまもと」で開催しています。
一時退院中の患者さんが交流会に参加し、同病の患者さんの体験を聞いたことで、治療に対して積極的になったこともありました。
自分が受けている治療は標準的なのだろうか、他の人はどんな治療をしているのだろう、副作用がつらいので他の治療に替えられないだろうかなど、治療中の人も治療が一段落した人もちょっとした症状の変化などで不安になることはよくあることです。次の診察で聞いてみようと思っていてもその場になると聞けずに診察室を後にすることもしばしば。晴れの会には、不定期ですが血液腫瘍内科の医師が参加し、気軽に参加者の相談に乗っています。
患者・家族と医療者の良い関係を築くためのお手伝いができるのも晴れの会の良いところだと思います。
晴れの会のメンバーは約40名の患者さんと家族です。平成20年には医療講演会を開催し、熊本の方々に最新の医療情報を届けました。平成21年には多発性骨髄腫の勉強会を開催し、九州各県の方々と共に学び、交流を深めました。今年度も多発性骨髄腫の勉強会・交流会を開催する予定です。
また、慢性骨髄性白血病の治療薬である、分子標的薬のグリベック(一般名イマチニブ)にかかる高額な医療費助成を求める署名活動や採取骨髄濾過キット在庫不足への迅速な対応を求める署名活動に、晴れの会として協力、ホームページ掲示板での呼びかけに短期間で多くの署名が集まりました。
血液疾患とひとことで言っても多くの疾患があり、病期や治療法によっても様々なニーズがあります。多様なニーズのバランスをとりながら活動してくことが今後の課題です。
今年4月11日には、4家族11名で熊本県の玉名がんサロンの会場でもある蕎麦店「もちの木」に出かけました。がん患者でもある店主の池田さんが打った十割蕎麦をいただきながら語り合うひと時は、温かい雰囲気の中での楽しい時間となりました。
このように、年2回程度、定例の交流会とは別の日程で食事会をします。食事会では、場所と気分を変えて、仲間と楽しい時間を過ごす喜びを分かち合いたいと思っています。
「なんさま食事会は楽しくってよかねー!!」代表の荒木陽美さんのお母さん、真知子さんは人懐っこい笑顔と熊本弁で晴れの会を太陽のように照らしてくれます。
晴れの会の世話人は3人。代表の荒木陽美さんは17年前に25歳で悪性リンパ腫を発病し、自家末梢血幹細胞移植療法(*)を受けました。病気をしたことで人生観が変わったと語る荒木陽美さんは、介護施設で仕事をしながら、晴れの会代表として奔走しています。
ホームページ担当の上塚達朗さんは平成16年に骨髄異形成症候群と診断され、2度の骨髄移植を乗り越えて、平成21年、職場復帰を果たしました。今年3月末には3人目の赤ちゃんが無事に誕生し、私たちに命の素晴らしさを教えてくれました。
事務担当の私は、相談員として難病相談・支援センターで勤務をしながら、ピアサポート活動を続けています。
患者・家族と医療者が同じテーブルを囲み、お互いの思いを語り合い支え合う「晴れの会」はこれからも温かくてホッとできる場所を提供していきます。
*ピア・カウンセリング=同じ経験(病気)を持つ者同士が助け合うこと
*自家末梢血幹細胞移植療法=事前に造血幹細胞(赤血球、白血球、血小板をつくり出す細胞)を自分の末梢血中から採取して冷凍保存しておき、大量の化学療法を行ってがん細胞を根絶した後、保存しておいた造血幹細胞を体内に戻す
血液疾患患者と家族「晴れの会」
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