骨髄異形成症候群(MDS)連絡会(骨髄異形成症候群/全国)
血液疾患の中で最も治療法の解明・対応が遅れている病気

文:星崎達雄 骨髄異形成症候群(MDS)連絡会代表
発行:2010年4月
更新:2013年4月

  

骨髄異形成症候群が薬で治せるように、ネットワーク作りを

写真:骨髄異形成症候群(MDS)連絡会の皆さん

右から、骨髄異形成症候群(MDS)連絡会副代表の八木沼順一さん、副代表の橋本明子さん、
代表の星崎達雄さん、幹事の山口鋭一郎さん

「骨髄異形成症候群(MDS)」、あまり耳慣れないこの病名。国立がん研究センターがん情報サービスのホームページには、「骨髄異形成症候群とは、血液細胞をつくる工場・”骨髄”、つくるのが異常になった・”異(常)形成”、いくつかの病気の集り・”症候群”、と病気の状態をそのまま表した病名で、血液細胞のがんの1つ」と説明されています。

多くの患者さんは、この病気を告知されたとき、1度や2度聞いただけでは覚えられない病名の上に、原因は不明、白血病へ移行する可能性もあり、有効な治療法は骨髄移植しかなく(ただし、高齢者は実質的に困難)、使える治療薬は今のところ無い、という主治医からの説明に、将来どうなってしまうのかと不安が募り、「自分の体の中でいったい何がどうなってしまったのか? まさか? 何で自分がこんな病気に? 嘘だろう?」という気持ち、そして、重篤な貧血症状(めまい、息切れ、脱力感、疲れやすいなど)が現れ、何も考えられない状態がしばらく続いたと言います。

藁にもすがる思いで、「NPO法人血液情報広場・つばさ」主催のフォーラムに参加し、同じ血液疾患の患者さんや家族の会の存在を知り、仲間の輪をつくることの大切さ、医師からの最新情報を聞くことの重要性を感じ、それぞれが1粒の種になって大きな森をつくろう、と有志4名で話し合ったのが09年の5月でした。「つばさ」の橋本明子代表にも副代表に就任していただき、これから多くの仲間を集め、色々なことを進めていきたいと考えています。

写真:顧問の埼玉医科大学総合医療センター血液内科教授の木崎昌弘さん

顧問の埼玉医科大学総合医療センター血液内科教授の
木崎昌弘さん

現在は「つばさ」が主催し、各地で行われているフォーラム(09年は1月に福岡、4月に東京、6月に大阪、7月に東京、9月に名古屋、11月に岡山の6回)に参加し、毎回MDSの分科会も開催できるようになりました。参加者も徐々に増え、毎回好評を博しています。

最近では、以前は不可能と言われていた55歳以上の中高年患者さんにも、ミニ移植やさい帯血移植などの移植実施例が広がっていること、移植ではなく薬でこの病気も相当レベルまで治療の可能性が見えてきたこと、などの最新情報に触れ、医療の進歩に大いに勇気づけられてもいます。

しかし、血液疾患の中でも、最も解明・対応が遅れている病気の1つがMDSと言われています。治療の現状を把握し、さまざまに症状が異なる個々の患者さんにとって、最善の治療法とは何かを明らかにしていくため、血液疾患に携わる医療関係者からなる「MDS研究会(仮称)」の設立を、早急に実現していただけるよう働きかけていきたいと思っています。

また、厚生労働省が患者数5万人未満の病気で薬の必要性が高い医薬品を「オーファン・ドラッグ」として指定し、承認審査の迅速化、薬価などの優遇策を講じていることに呼応して、製薬会社が新薬の開発を強化する、ということが報道されていましたが、まだまだドラッグ・ラグ()の問題の解消には至っていません。

写真:2008年11月に東京で行われたフォーラムの様子
2008年11月に東京で行われたフォーラムの様子

MDSの治療は、輸血、鉄キレート剤、G-CSF(造血因子)などの補助療法を効果的に使って徐々に延命できていますが、これに新薬が加われば、貧血改善や造血の回復なども期待できることになります。欧米では既に認可され、わが国においても治験が進められている新薬を1日も早く使えるよう、陳情なども行っていきたいと思っています(例えば、重症患者さんが待ち望んでいるアザシチジン、デシタビン(ともに一般名)は米国では既にそれぞれ04年、06年に承認されています)。

インターネットなどの進化に伴って、誰もが多くの情報を得られる時代になりましたが、高齢者が圧倒的に多いこの病気の実態を考えると、インターネットやEメールといった電子媒体の環境を持てない患者さんや家族のためには、紙による情報提供はまだまだ重要な手段であると考えています。

また、フォーラムを開催する地域の地元紙が記事にして取り上げてくれると、参加者が大幅に増えるという経験もしていますので、このような働きかけも重要かと考えています。

会報の発行も、早急に実現したい課題です。

セカンドオピニオン()やインフォームド・コンセント()も声高に叫ばれているわりには、まだまだ患者さん側にとって充分とはいえない現状です。1人ではなかなか言えない、行動できないこのような課題にも他の患者会などとも連携し、取り組んでいきたいと思います。

あえて”連絡会”という名称にこだわったのは、単に患者さんやその家族が集る会ではなく、医療関係者や製薬会社など多くの方々とのネットワークを構築し、MDSへの理解と支援の輪を広げ、共に手を携えて、「この病気を何としても薬で治せるようにしたい」「いつの日かMDSの治療法から骨髄移植を除外したい」という切なる願いが込められているからです。

その日が必ず実現することを信じて、1歩1歩、歩を進めていこうと思っています。

この誌面をお借りして、多くの方々のご支援とご協力を切にお願いする次第です。

ドラッグ・ラグ=日本と欧米との新薬承認の時間差、あるいは、海外で新薬が先行販売され、国内では販売されていない状態
セカンドオピニオン=「第2の意見」として病状や治療法について、担当医以外の医師の意見を聞いて参考にすること
インフォームド・コンセント=患者が医師から治療方法や意味、効果、危険性などについて、十分に説明を受け、そのうえで治療の同意をすること


骨髄異形成症候群(MDS)連絡会

代表 星崎達雄
〒259-1321 神奈川県秦野市曲松1-7-12
TEL&FAX:0463-88-7401
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