中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(中皮腫/全国)
患者と家族に寄り添い、尊厳ある生活の実現を支援する

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会副会長の古川和子さん
発行:2010年1月
更新:2013年4月

  

1人でも多くのアスベスト被害患者さん救済のために

孤独な患者と家族を支え、交流を深めるために

写真:2004年2月、アスベスト疾患・患者と家族の会が設立した
2004年2月、アスベスト疾患・患者と家族の会が設立した

2004年2月に「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」が発足いたしました。

全国に点在する中皮腫・アスベスト(石綿)中皮腫関連疾患の患者とその家族たちが「情報を共有できる場が欲しい」と、会の発足に向けて声を上げたのです。

大きな病院の病棟でも自分と同じ「中皮腫患者」に会えることはほとんどなく、「予後不良」と宣告されながらも、孤独な闘病を強いられていた患者とその家族が最初に集まったのは2003年2月。その「準備会」を経て1年後に正式発足しました。

そして横須賀・関東・関西の3支部を拠点に活動が始まったのです。

会の主な活動内容を当会のホームページから引用すると「第1には患者とその家族同士の交流の場をつくることにあります。第2には、原因を明らかにする事を通じ労災保険の適応あるいは環境災害としての救済をお手伝いしたいと思います。第3に、患者と家族のおかれる実情を十分調査し、医療関係者と行政関係者と関連する企業へその声を伝え、誠意のある対応を求めたいと考えています」となっています。

その当時、アスベスト関連疾患の方は仕事上でアスベストを吸った方が多かったので、労働災害としての救済をされるべく厚生労働省に交渉を行い、速やかな対応をお願いしました。

さらに、アメリカで開発された中皮腫の新薬「アリムタ」(一般名ペメトレキセドナトリウム水和物)の早期治験と認可を強く求めました(アリムタについてはその後、当時の尾辻厚生労働大臣への直訴が功を奏して予定よりも早く認可されました)。

会の発足以来、地道に患者とその家族同士の情報交換を行い、互いに励ましあってきました。

写真:左3名が、クボタ最初の被害者
左3名が、クボタ最初の被害者だ

そのような中で、2005年6月末に突然「クボタショック」()という未曽有のアスベスト被害が発覚したのです。

クボタショックが起った経緯の中で、「患者と家族の会」が大きな役割を果たしていたことはいうまでもありません。

クボタ最初の被害者として実名で名乗りをあげたのは故土井雅子さん達3人でした。彼女との出会いの中で「仕事上の曝露(さらされる)が無いのになぜ中皮腫になったのか」という疑問を抱く真剣な想いに応えたくて、必死に原因を追及した結果、日本中を揺るがすクボタショックが起こったのです。

クボタショックにより、多くの被害者が確認され、現在の会員数は約500名です。支部も北海道・横須賀・関東・東海・奈良・関西・尼崎・ひょうご・岡山・四国・広島までの11支部になりました。

「会員が増えるということは被害者が増えることであり、喜ばしくない」という声も頂きます。

しかし、かつて1000万トンともいわれるアスベストが日本に輸入され、今もなおその姿をどこかに残している現実を考えると、今後も被害者が増え続けることは必至です。

その事実から目を逸らさないで、被害の実態をこまかく掘り起こし、1人でも多くの患者救済に繋げていきたいと思っています。

クボタショック=2005年6月、機械メーカーのクボタがアスベスト関連病による死亡・治療中の、旧神崎工場(兵庫県尼崎市)従業員と周辺住民に見舞金を出すと発表。これを機に、アスベストが新たな公害として認識された

アスベスト被害による心の傷、不安に寄り添う

写真:胸膜中皮腫の体験を語る患者さん
胸膜中皮腫の体験を語る患者さん

会の活動では、東京都亀戸にある事務局から毎月発行される「会報」を全国の会員に届けています。そして各支部では患者のみが集まる「患者会」と家族も一緒に集まる「集会」(例会)が行われています。開催頻度は2、3カ月に1度くらいでしょうか。患者が最も多く参加している支部は、尼崎と関東支部です。

患者会の集会に専門の講師を招いての講演も行います。その内容は、医療・看護・疫学など多岐にわたっています。患者の大きな関心は「現在受けている治療とその副作用」「現在の抗がん剤が効かなくなったときの不安」「痛みへの不安」「社会復帰できるか」などが多いです。とくに「これ以上は抗がん剤が打てないと医者に言われた」「後は緩和ケアしかないと言われた」といった相談はご本人の心のケアも含めて大変に難しいものがあります。

アスベスト関連疾患の方はすでに身体の中にアスベストを吸引してしまっているので、たとえ腫瘍の摘出手術をして5年が経過し、一般的には「治癒」したとみなされても再度、組織型の違うがんが発生する事例は多々あります。

このように色々な意味でアスベストを曝露した患者は強いストレスを抱いています。そのような患者やご家族が寄り添い、支えあって「アスベスト患者と家族の会(略称)」を運営しております。

日本では、アスベストが原因で発症する病気は中皮腫・肺がん・石綿肺()・良性石綿胸水()・びまん性胸膜肥厚()だといわれています。

しかし最近、世界保健機関(WHO)に属する国際がん研究機関(IARC)は発がん性物質についての会合を開き、アスベストについて、喉頭がんと卵巣がんも発症させると認定しました。

今後拡がる被害を少しでも防ぎ、それでも不幸にして発病された方々が、より尊厳を保つ生活を実現することができるよう、患者とその家族を支援することが重要だと考えています。

石綿肺=塵肺(じんぱい)の1つ。石綿の粉塵を吸うことによって、肺の線維組織が増殖する肺線維症を生じ、呼吸機能低下、心臓の障害、肺がんなども起こす。アスベスト肺症
良性石綿胸水=石綿の曝露を原因とする胸水
びまん性胸膜肥厚=肺側の胸膜がびまん性、間質性に線維化をきたし、その病変範囲が胸郭全体の4分の1を超えるもの。原因として良性石綿胸水が多い


中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会

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