NPO法人ミーネット(がん全般/愛知)
行政・医療機関と共に取り組むピアサポート活動

NPO法人ミーネット 理事長 花井美紀
発行:2009年12月
更新:2013年4月

  

父の闘病に教わった「共に知った上で、分かち合うこと、支え合うこと」

写真:花井美紀さん
NPO法人ミーネット理事長の
花井美紀さん

平成18年のがん対策基本法以降、がん患者団体の活動は飛躍的に前進しました。

がん患者団体と行政・医療機関(がん診療連携拠点病院)はいま、同じ地平に立ち共に歩むという、明るい変革のうねりの中にいるのではないでしょうか。

平成21年3月30日。私どもNPO法人ミーネットは、名古屋市と協働で、がん患者さんの情報収集と交流の拠点「名古屋市がん相談情報サロン・ピアネット」を開設することができました。がん図書館などの情報収集機能を備え、相談ブースや懇談スペースも設けられています。

運営の中心的存在は、半年間に及ぶ「がん・ピアサポーター()養成講座」を修了した28名のピアサポーター(がん体験者やその家族)。1日3名程度でローテーションを組み、2名の事務スタッフと共に利用者のサポートにあたっています。

サロン開設の18ページにのぼる要望書を名古屋市に提出したのが3年前。行く手は波高しと思われましたが、がん対策基本法に謳われる「患者団体支援」の潮流が、目指す岸辺へと私たちを導いてくれました。

私のがん患者会活動は、23年前に父をがんで亡くしたことが発端です。「がん」を本人に隠したまま治療を進めることが、常識のような時代でした。

進行した直腸がんは1年半で厳しい局面を迎えます。病状の進行や変化に合わせて、家族総出で嘘の上塗りをする毎日。その陣頭指揮をとるのが私でした。父が亡くなったとき、深い悲しみの中にも1つの達成感がありました。がんを気づかせることなく、父を安らかに旅立たせることができたと。1カ月後、父のベッドの下から、カバーを裏返しにした「全身のがん読本」が出てくるまでは。

本を手にしたまま立ち尽くしました。隠し通せたと思っていた。父を守ったと満足していた。なんと愚かな1人よがりでしょう。父は知っていたのです。守ったのは父であり、守られていたのは私だったのです。

父の闘病はどんなに孤独だったことか。ただもう天を仰いで泣きました。

この体験は貴重なものでした。すべてを共に知った上で、分かち合うこと、支えあうこと。家族、医療者、がんにかかった患者・家族同士が。これが、自分レベルで活動を始めた頃のコンセプトです。

様々な紆余曲折はありましたが、活動の拡大をめざし、NPO法人として組織化しました。

会員の要望に応え、患者会を開催すると、さらにそこから「がん種別の患者会」への要望があがる。がん種別の患者会を成立させるためには、会員を増やさねばなりません。500~1000人規模の講演会を開催し、ロビーでは「1日がん図書館」や相談会を展開しました。

地域のがん医療情報誌などを発行し、活動財源に充て、公的な助成金もいくつか得ることができました。

短期間に1つの目標が達成できたのは、ひとえにサポーターの皆さんのお陰です。患者会の回を重ねるうち、500名を超えるまでになった会員の中から、運営サポーター的な人材が現れ、後押しをしてくれたからです。この方たちはいま、ピアサポーターとして患者さんを支え、ミーネットをも支えるという、活動の支柱でもあります。「分かち合い支えあう」ミーネットの基本精神を具現化してくれたのもサポーターの皆さんです。

写真:がん相談情報サロン・ピアネットを開設
がん相談情報サロン・ピアネットを開設。
開設後6カ月で700名ほどの利用者があった

がん相談情報サロン・ピアネットは、開設6カ月で700名ほどの利用者がありました。ピアサポーターにがん相談をされる方は、一様に明るい表情でサロンをあとにされます。患者同士で解決できる問題は意外と多いもので、この活動は、診療に忙殺される医師の助けになるのではないかとさえ感じるほどです。

1つの大きな副次効果は、がん体験者であるピアサポーターが、生き生きと役割に取り組んでいること。「生きがいを得た」といってくださる方々もあり、それがミーネットの明日への糧にもなっています。

現在、第2期のピアサポーター養成講座が始まり、40名の受講者が学びを進めています。今期から、名古屋市立大学病院・名古屋市病院局・東海がんプロフェッショナル養成プランの共催を得て、延べ29名にわたる、がん専門医の協力のもとに講座が編成されています。医療機関や行政の協力は、ピアサポーターへの期待あればこそで、ある医師から「患者会はクレーム集団」と評された活動初期を思うとき、隔世の感を覚えます。

さて来期は、計68名になるピアサポーターと共に、医療機関への出張ピアサポートを積極的に進めます。現在、名古屋市内の3つのがん診療連携拠点病院で、定期的な出張ピアサポートに取り組んでいますが、当面の目標は、名古屋市内に7つあるすべてのがん診療連携拠点病院にピアサポーターを派遣することです。

がん相談支援センターと連携しながら、初診のがん患者さんや入院中のがん患者さんをリアルタイムでサポートできる体制を整えたいと思っています。

「目標を明確に。あとは方法を探すだけ」と、自分自身を叱咤激励しながら歩を進めてきました。ところが、課題は増える一方で目標は度々更新されます。まだしばらくは、この言葉と縁が切れそうにありません。

ピアサポーター=同じ病をもつ人自身がカウンセラー(ピアサポーター)となって、悩みや問題について相談に応じるもの


NPO法人ミーネット

〒466-0032 名古屋市昭和区天神町3-6 5C
TEL:052-851-7113 FAX:052-851-7114
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がん患者さんのための情報交流コミュニティーとして、名古屋を中心に活動


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