小児がんネットワークMNプロジェクト(小児がん/全国)
仲間の存在が、孤独を解消し、自信を与えてくれる

小児がんネットワークMNプロジェクト 代表 小俣智子
発行:2009年10月
更新:2013年4月

  

400人の支援者とともに、小児がんの社会啓発を広げていく

写真:小児がんネットワークMNプロジェクト 代表の小俣智子さん

小児がんネットワークMNプロジェクト 代表の小俣智子さん

今や2人に1人ががんになる時代に、毎年約1000人に1人の割合で子どもにもがんが発症することはご存知だろうか。

子どものがん、小児がんは、大人のがんとは違い肉腫と呼ばれ、治療内容も異なる。そして大人よりも治療の効果が大きく、約7~8割が寛解()・治癒にいたっている。

私が小児がんを発症したのは4半世紀も前、13歳の時。ちょうどその頃から治癒率が向上し、今では、私も含めて数万人の小児がんを経験した人たちが社会の中で生活を送っている。

「治ればよい」とされた時代から、「治った後どう生活していくか」という時代に変化してきた。

全身に及ぶがんを総称する小児がんは、病気が原因となる心身の障害や疾病に加え、幼少期・少年期に行われた濃厚な治療の影響から、治癒後も晩期合併症と呼ばれる後遺症が起こる。

また、治療後に生活する社会の中では、常に病名やその症状を周囲に説明するという仕事が待ち受けている。

例えば、学校への復学時、担任や友だちへの説明は、病名だけでなく、小児がんの治療のために変化した容姿(カツラ、義眼、義足、手術痕など)、体力低下や通院治療のための欠席や見学に至るまで様々なことが挙げられる。

加えてライフイベントに合わせ、進学、就職、結婚、出産、子育て、小児がん以外の病気の受診時にも説明が必要となる。

寛解=病気の症状がほとんどなくなったものの、治癒したわけではないが再発しないように、様子をみていく状態

15年前、小児がんの子どもをもつ親の会「財団法人 がんの子供を守る会」から、治癒率の向上に合わせるかのように小児がんを経験した人たちの会「Fellow Tomorrow(フェロートゥモロー)」が誕生した。1993年のことである。

治癒から2年後の私は、この会に立ち上げから関わり、病気になったことによる社会生活への影響を仲間同士で語り合ったり、講演会や学校で講義をする多くの機会に恵まれた。

活動を進めていくうちに、治療の後遺症や晩期合併症が、小児がんを経験した人たちの生活に影響を及ぼしていることに気がついた。疾病及び症状は幅広く、全身におよび個人差がある。

成人後の発症は、過去の治療と関係があるかの判断も難しく、成人を見る診療科の医師に正確に治療を説明することも難しい。

写真:総会準備をするスタッフたち

毎年総会を開催。準備をするスタッフたち

写真:北里大学病院で講演

北里大学病院で小児がんのお子さんを持つご家族や医療スタッフを対象に、小児がんの経験を講演した

写真:国際神経芽腫学会(ANR)に参加

国際神経芽腫学会(ANR)に参加し、各国の医師、小児がん経験者のシンポジウムを開催して交流をはかった

利用できる社会サービスの乏しさ、発症時の相談窓口、医師の連携、治療記録の保存などの課題が明らかになっており、医師を中心とした支援者たちが解決に着手している。また、治療による教育の機会の喪失や社会経験の少なさから社会的な自立に悩む人も多い。そして何より、日本に数万人いると言われている仲間の中でも、つながりにくい人ほど深刻な悩みを抱え、助けを必要としていると推察する。

小児がんの活動を続けて10年、仲間で集うことの意味と社会啓発の必要性を強く感じた。課題を抱えている多くの仲間たちとつながること、多くの支援者とつながること、支援者や社会に課題を伝え、共に模索していくことを目的に、2005年「小児がんネットワークMNプロジェクト」を立ち上げた。

2009年で5年目になる私たちの活動を支えているのは、80人の仲間と400人を超える支援者(サポーターとお呼びしている)の温かな支援である。

活動はおもに出前講演、小児がんのシンボルであるゴールドリボンを掲げたイベントの開催、ホームページの管理、会報の発行である。お声がかかれば可能な限り講演に伺い、小児がんのお話をする。小学校、中学校、大学、企業、役所などこれまでに様々なところからお声をかけていただいた。年1回のゴールドリボンのイベントは、より多くの一般の方が参加できる方法を毎回模索している。

病気の深刻さや子どもががんになるということから、小児がんを経験した人たちへの「大変そう」「かわいそう」というようなマイナスのイメージは否めない。ところが、私の知る限り周りの仲間たちは、前向きに元気よく楽しく生きている。

仲間と出会うことで、孤独感を解消し、自信を取り戻し、貴重な経験値を得て、先を行く先輩から将来を想像し、自分の人生を見つけていく。医師、看護師、検査技師、教師と、人と関わる職業に就く仲間も多い。私自身もそうであるように、子どもの頃に支えられた経験が大きく関与しているのではないかと考える。

病気になってよかったことはありますか? と聞かれることがある。病気は、限られたいのちをどう生きるかという人生の課題と、生きていることへの感謝を伝えてくれる存在なのではないだろうか。病気にならなかったら、こんなに沢山の素晴らしい仲間に出会えることはなかった。

小児がんを経験した私たちだからこそできることを考えて前に進んでいきたいと思う。


小児がんネットワーク MNプロジェクト

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