NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会(がん全般/愛媛)
安心して暮らせる社会を――ともに学び、声を上げる

NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会 理事長 松本陽子
発行:2009年8月
更新:2013年4月

  

がんの経験を生かしたい。後に続く患者、家族のために

写真:NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会理事長の松本陽子さん

NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会理事長の松本陽子さん

「あなたはひとりではありません。ここには不安、悲しみ、苦しみを分かち合える仲間がいます。一緒に歩いて行きましょう」

私たちはこのメッセージを掲げて活動をスタートしました。2008年春のことです。1年後の今年4月20日から『NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会』として新たな歩みを始めたところです。

がん患者と家族の会を立ち上げたいという思いは、私が1999年33歳で子宮頸がんの治療を受けたときに芽生えていました。入院中、先輩患者さんにずいぶん助けられました。医療者にはできない、同じ経験をした者だからこその支えがどれ程大きな力になったかしれません。いつか元気になれたら、今度は自分が後に続く患者、家族のために役立ちたいと考えるようになったのです。

行動に移すまで10年かかりましたが、2008年、年明けと共に動き始めました。知り合いの患者3人と家族3人、6人が喫茶店に集まって最初の準備会を開きました。その動きが地元紙で紹介されると、瞬く間に同じ思いの人たちが集まりました。声を上げたのはたまたま私でしたが、同じ思いの経験者があちこちにいて繋がり、実を結んだのでした。

『おれんじの会』というのは設立当初からの名称です。大腸がんの母親を支えていた30代の女性のアイディアです。愛媛らしさと表現のやわらかさを考えて名付けられました。

写真:第1回例会の様子

第1回例会の様子。月に1度交流会と勉強会を交互に行っている

活動の柱は3つ。「交流」と「学び」と「情報発信」です。

まずは患者・家族が病気の不安や悩みを語り合える場を提供すること。次に科学的知見に基づいた情報を学ぶこと。そしてがんになっても安心して暮らせる社会のために患者・家族からの声を発信していくことです。

例会は月に1度で、交流会と勉強会を交互に開催しています。勉強会で最も参加者が多かったのは「がん治療とお金の話」でした。公的支援制度の利用など、すぐに役立つ情報を学ぶことができました。

対外活動の1つで、愛媛大学付属病院に開設されたがん患者と家族のためのサロン「あいほっと」の運営に協力しています。自己分析や傾聴などについて学んだ会員が、運営スタッフとして参加しています。他にも、地域や学校で自らの体験を語り、がんについての啓蒙や検診の呼びかけなどを行っています。

2009年6月現在、会員は約100人。すべての部位の患者を対象としていて、6割が患者本人で4割が家族です。

家族の中には、愛する人を見送った経験者も含まれます。ある人は癒えない寂しさを抱え、ある人は強い後悔を感じ、そしてある人は見送って数年経った今になって悲しみに襲われるといいます。そうした話を聞くたびに家族や遺族の思いの分かち合いの場としての重要性も感じています。

夫を見送ったある女性会員は、「夫の闘病生活、自分の結婚生活を無駄にしないために、経験したことをお話したり、同じような立場の方と語り合いたい」と話してくれました。

写真:会員が出演してビデオメッセージを作成

会員が出演してビデオメッセージを作成。検診を呼びかけ、いのちの大切さを伝える

NPO法人化した2009年はさまざまな事業を計画しています。1つは『ピアサポーター養成事業』です。がんという同じ病気に向き合った経験を持つ者が、傾聴やカウンセリングの基礎、情報提供の仕方などについてのスキルを身につけ仲間を支援する事業です。愛媛県からの委託や助成金を受けるなどして実施する予定です。その他、一般の方に検診を呼びかけ、いのちの大切さを考えてもらうため、会員が出演するビデオメッセージの作成にも取り組みます。これは検診機関からの協力を得て実現することになりました。

家族ケアや医療者との意見交換、がん患者サロンの運営などにも取り組む計画です。

さらに、これまで県庁所在地である松山市でしかできなかった活動を県内全域にも広めていきたいと考えています。心強い応援団もできました。愛媛県議会に発足した「がん対策推進議員連盟」です。超党派で結成され、会長はがん経験者です。私たちの声を愛媛県のがん対策に反映してもらうため意見交換などをしていく計画です。

こうした計画を実行する上での課題は、スタッフの確保です。専従スタッフはいません。治療や仕事と両立を図りながら会員が分担して活動しています。趣旨に賛同し自分にできることで共に動いてくれる会員の増加が解決すべき課題です。

この1年、私たちの活動を地元紙がたびたび取り上げてくれました。おかげで行政や医療機関などへの認知度は上がり、協働できることも増えました。しかし、肝心の患者・家族1人ひとりの痛みにどれだけ寄り添えたのか、忸怩たる思いがあります。同じ“がん”という病気であっても向き合い方はさまざまです。まさに百人百様の痛みに向き合うとき、自分が経験した孤独や苦しみを思い、まずは共感することから始められるよう心がけなければと思います。

5月に発行した会報に、こう書きました。

「おれんじの樹が大きく成長し、厳しい日差しや冷たい雨からがん患者・家族を守り、周囲にさわやかな風を起こせるようになることを願っています」

これからも大切に育てていきます。


NPO法人 愛媛がんサポートおれんじの会


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