重粒子の会(HIC)(重粒子線治療/全国)
同じ治療を受けた仲間と支え合い、そして発信する

重粒子の会(HIC)・旧 放医研患者友の会・会長 忍澤善夫
発行:2009年7月
更新:2013年4月

  

重粒子線治療がもっと普及するように――NPO法人化を目指す

s写真:重粒子の会(HIC)会長の忍澤善夫さん
重粒子の会(HIC)会長の忍澤善夫さん

私が都内の病院で、前立腺がんの診断結果を告げられたのは、2004年4月だった。

妻と長男の嫁が心配顔で診断結果を聞きに同行してくれた。

PSA(前立腺特異抗原)が37.4ナノグラム/ミリリットル、グリソンスコアが8と、がんの顔つきも悪いとのことで、同行の妻たちの心配は増大した。

この時、がんという病名が初めて身近なものだと実感し、どうしたら治せるかを考えた。

治療は手術、放射線、抗がん剤、抗がん剤と放射線の併用療法があると知ったが、初めてのことで何がどうなのかよくわからないが、手術のリスクだけは避けたいと思った。まず6カ月のホルモン注射による治療を開始した。

その間に肺がん患者の会「のぞみ会」に参加する機会があった。

そこでは、500名以上の人たちが肺がん治療を終えて5年、10年たっても元気に活動している姿をみせてもらった。70歳、80歳の人たちが肺がんの治療後も元気に過ごしている姿にやる気と勇気をもらい、感激した。

治療を始めて4カ月目に放医研(放射線医学総合研究所)の情報を聞き、すぐに放医研のカタログを病院より入手した。主治医の先生に話し、放医研で診断を受けることができた。

放医研で行っている重粒子線治療は、放射線の一種で、ピンポイントにがんの部位をたたいて治すというもの。

重粒子線は、がん細胞に対して致死効果が高く、治療期間が短い。また治療の痛みもなく、臓器の機能や身体の形態が欠損せず、患者の負担が少ない。副作用もあまりなく、X線では治療困難ながんにも適応できるというメリットがある。

脳腫瘍や肺、肝臓、子宮、前立腺、すい臓、直腸などのがんのほか、骨や筋肉のがん、治療が難しい頭蓋底や頭頸部のがんにも優れた効果を上げている。

治療費が314万円、入院期間が40日という説明を聞いたが、私のがんがよくない顔つきをしているとのことで、同行した家族たちの心配顔を見ると、これにチャレンジしようという気持ちになった。

病院には、全国から治療を受けに来た100名近い患者が入院していた。食堂に集まって食事をとるのも楽しい時間であったが、やはり肺がん患者など患者たちの不安は個々に抱えている様子がみてとれた。

入院生活に慣れてきたころ、病院の5階食堂に夕食後、集まった患者たちに、私は患者会を作りたいと提案した。患者同士の心配ごとや個々の抱える問題について会が情報を集めて、各会員に配布することを第1の目標とした。

こうして2003年、放医研で治療を受けた患者たち16名が集まり、「放医研患者友の会」として発足した。

がんの部位は違っても、重粒子線治療という共通点を持っているからこそ発言し合い、また、治療を受けたことがない人へ、重粒子線治療の情報を発信していくことができると考えている。

運営は会員が北海道から九州に散在しているので、重粒子医学センター病院の近くに居住している会員で行うこととした。情報はすべてファックスや郵便で、東京・千葉で入手する情報をその都度送っている。

入院治療時の同期の患者同士で、遠地から上京される会員との食事会を催すなど、親睦も深めている。

写真:2008年7月2日、厚労省に対し、重粒子線治療の保険適用、各地域への重粒子線治療施設の建設などを求める要望書を提出した

2008年7月2日、厚労省に対し、重粒子線治療の保険適用、各地域への重粒子線治療施設の建設などを求める要望書を提出した

当会では、治療後の悩みや、心配、身体の状態を把握するために重粒子線治療後、会員にアンケートをとっている。それらをまとめ、患者同士で情報交換している。それをもとに、放医研の医師たちとともに会議も開いた。治療後のQOL(生活の質)を維持するために、痛みや副作用に対する取り組みについて、患者たちからの要望を医療者に伝えている。

個々の要求を医療者に投げかけるのではなく、全体の問題としてまとめ、第3者的に患者たちの状況を伝えていくように留意している。

当会が発する要望や意見に対し、医師たちも、しっかりと耳を傾けてくれている。今後も、年に2~3回会議を行っていきたいと考えている。

対外的な活動としては、2005年には、当会が東京のがん患者会と共に厚生労働省にがん対策の取り組み要請に参加した。

2006年には、第2回がん患者大集会実行委員会に参加した。同大会は、NHKホールで行われ、無事成功することができた。それは全国のがん患者と患者会に大きな希望と勇気を与えることができたと感じている。

2007年4月の「がん対策基本法」の施行の決定をうけ、千葉県がん患者会では、2008年度の千葉県がん患者大集会実行委員会が発足し、当会も副代表の西惟義氏と共に参加、大会の成功に尽力した。

2007年、放医研患者友の会は、「重粒子の会(HIC)」と改め、活動を新たに開始した。

全国各地に重粒子線治療施設を増やし、もっと安い費用(医療保険適用)で治療が受けられるようにするために、2008年7月に政府への要望書を提出した。

今後は、そういった活動を進めていくため、NPO法人化も目指している。これからもできるだけ多くの人たちに重粒子線治療の体験を語り、PRをしていきたいと考えている。


重粒子の会(HIC)[旧 放医研患者友の会]

〒279-0023 千葉県浦安市高洲4-3-1
TEL:03-5541-0431 FAX:03-5541-0432
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