骨髄移植体験者の会「TOMORROW」―あしたの会―
『あした』に向かって希望を持ち続ける

骨髄移植体験者の会「TOMORROW」―あしたの会― 代表・長屋亘
発行:2008年9月
更新:2013年4月

  

最新情報を提供してもらえる、新たなメンバーに参加してもらいたい

2008年3月に発行した会報
2008年3月に発行した会報

1997年、移植から2年目の春、当時血液内科外来の看護師さんから「患者会を始めてみませんか」とお誘いを受けました。しかし、健康状態に不安だった私は即答できませんでした。そんな私に患者会発足を決意させてくれたのは、移植前ベッドを並べていた、ある青年の言葉でした。

H君は移植後の経過が思わしくなく再入院していました。私にとって移植の「師匠」です。そんな彼から「すりつぶした薬を溶くのはコーヒー牛乳がいい」という話を聞きました。口内炎が酷いときはそれを注射器で口の奥へ流し込むのです。実際、私にとってもコーヒー牛乳が1番飲みやすい味でした。彼から教えてもらった多くの情報が、次々と起こる症状を受け止める「心の準備」になっていたのです。「自らの体験をお話しすることなら自分にもできるかもしれない」。こうして患者会発足を決意しました。

その年の6月、私の呼びかけに応じて、Tさん、Yさんが参加し記念すべき、たった3人の初ミーティング。そこで、移植を考えている患者さんや家族の皆さんに、自分たちの体験をお話しすることを中心に、活動をすすめることを決定しました。

8月の第2回ミーティングには、Nさんご夫妻が初のゲストとして参加してくれました。奥様は我々の話を参考に移植に臨み、現在は中心メンバーとして活躍しています。

また「TOMORROW」という名称が決まったのもこの日です。岡本真夜さんの曲名に由来しています。♪涙の数だけ強くなれるよ「今はつらくても、治療を乗り越えれば、家族のもとへ帰れる。『あした』はやってくる」。闘病中、Yさんがいつも励まされたという曲の題名です。

これから移植に立ち向かう患者さんに、明日を信じてがんばってほしい。そして私たち自身も明日に向かって希望を持ち続けたい。そんな気持ちにピッタリの名称になりました。

写真:東海大学の建学祭に参加して開いたバザー
東海大学の建学祭に参加して開いたバザー
写真:東海大学の医師に講師になってもらい開いた勉強会
東海大学の医師に講師になってもらい開いた勉強会

活動の中心は奇数月の第1土曜日に開催しているミーティングです(参加自由、申し込み必要なし)。移植に関するさまざまな疑問・質問にメンバーが体験をもとにお話します。参加者は、患者・家族、医療関係者、学生などさまざまで、話題も多岐にわたります。家族の方からは「患者にどう接したらよいのか」とか「どのように告知したらよいのか」といった相談があります。一方、患者さんからは「無菌室での生活は?」とか「移植後どんな症状が出るのか」といった具体的な質問も出されます。他にも経済的な問題、社会復帰の不安などなど話題は尽きません。

ミーティングで大事にしていることは、体験したからこそわかる、生きた情報を提供することです。そして患者さんが、移植に前向きに取り組もうという気持ちになっていただけたらよいと思っています。

その後、98年からは講演会や勉強会などの企画にも挑戦し、講師は東海大学病院の先生方が無償で務めてくれました。

また、東海大学の建学祭に参加したバザーでは、病棟の先生や職員の皆さんにも商品の提供をいただきました。有形無形の援助をいただけることは、小さなグループにとってありがたいことです。これからも患者会と病院の信頼関係を大切にしていきたいと願っています。

99年にはNさんをリーダーに「移植後の患者さんアンケート」を実施しました。移植後のQOL(生活の質)や、その向上の仕方などについて調査し、調査結果は冊子にまとめ配布しました。

長屋亘さん

『「東海大学医学部造血幹細胞移植25周年」「さい帯血バンク10周年」を記念する会』で話す長屋亘さん

また、Yさんは毎年、東海大学健康科学部で講演をしています。白血病という重い病気を乗り越えた患者の体験談によって、未来の看護師さんたちは、その使命の大きさや尊さをあらためて実感してくださるようです。

私のように社会復帰して10年以上も経過すると、職場でも病気のことを知る人は少なくなってきます。忙しくなるにつれ、特別活動の企画はおろか、定例のミーティングにさえ出られないことが多くなっていました。

そんな矢先、『「東海大学医学部造血幹細胞移植25周年」「さい帯血バンク10周年」を記念する会』の開催に参画させていただきました。当日はたくさんの「同士」と会えたばかりでなく、骨髄移植医療の初期に関わってきた医師の話をきくことができ、貴重な時間を過ごすことができました。今後はこの経験をもとに、移植患者相互の連携や、QOL向上にも寄与していきたいと考えています。また、刻々と進歩する造血幹細胞移植の現状の中で、最新の情報を提供してもらえる、新たなメンバーに参加してもらえるよう、広報・勧誘活動が急務であると考えています。

私たちの活動が、移植患者さんの『あした』への励ましや希望になれば幸いです。そして何より私たち自身が、与えていただいた『あした』を豊かに過ごすためにも、TOMORROWの活動を地道に進めていきたいと思っています。

骨髄移植体験者の会「TOMORROW」
―あしたの会―

代表 長屋亘
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