肝芽腫の会(肝芽腫)
親の不安と孤独感を少しでも軽くしていきたい

肝芽腫の会 神原結花
発行:2008年8月
更新:2013年4月

  

ホームページやメールで肝芽腫に特化した情報を発信して交流を深める

肝芽腫の会発行の冊子(イラスト:上大岡トメ)
肝芽腫の会発行の冊子
(イラスト:上大岡トメ)

肝芽腫は小児特有の悪性腫瘍で、大人の肝臓がんとは全く違う病気です。小児がん全体の約1~2パーセント、日本では年間約30人~40人しか発症しません。また、ほとんどの患児が発症時0歳~4歳までの乳児や幼児です。

患者数が少ないために「疾患についての情報も乏しく、同じ病院で同じ病気を持つ仲間に出会えることは稀」ということが親の不安や孤独感をより強くしてきたのですが、2000年代に入ってインターネットが急速に普及し始めたことにより、「ホームページ上で遠く離れた患児の親たちと交流する」という方法が可能となり、2003年2月に神奈川県立こども医療センターで知り合った肝芽腫の子供を持つ親3人が、「親の不安と孤独感を少しでも軽くしていきたい」と、当時の主治医の協力を得て「肝芽腫の会」を立ち上げ活動を始めました。

 

現在会員は北海道から九州まで44名(2008年3月現在)で、主な活動はホームページ上での情報発信や掲示板での交流です。医学情報はできるだけ正確なものを心がけ、そうした部分は小児外科医・小児血液腫瘍内科医・放射線治療医・歯科医など、医師によるチェックをお願いしたうえで掲載しています。

写真:会の活動の1つ、交流会の様子(2008.3.15)
会の活動の1つ、交流会の様子(2008.3.15)

その他、3カ月に1度神奈川県立こども医療センター内に場所をお借りして交流会兼勉強会を行っています。小児がん全体のことであれば多くのこども病院や大学病院内に小児がんの子どもを持つ親の会がありますが、肝芽腫ならではの情報となるとそうした会ではなかなか「納得いくまで質問する」ことが難しいため、情報を求めて毎回遠方から参加される会員もいます。

交流会には小児外科や小児血液腫瘍科の医師もボランティアで参加し、保育のボランティアさんも来てくれますので家族連れでも安心して参加できます。

交流会後は、年4回発行される会報「つうしん」で交流会への参加が難しい遠方の会員にも詳細を伝え、情報を共有しています。「発行」と言っても居住地域が離れているうえに、退院後も小さい子どもの育児中という親が多いので、集まって活動することは難しいため、印刷物の郵送は基本的には行わずメールへの添付文書という形で送信しています。

また今年からは「小児がんの疼痛管理を考えるシンポジウム~子どもが笑顔でいられるように~」を始め、6月28日に第2回が開催されました。これは小児がんの疼痛をターミナルかどうかに関わらず早期からきちんと行っていくためにはどうしたらよいかを医師・看護師・患者など、違う病院・違う科・違う立場から同じテーブルで意見を交換しようという試みです。関東地方のこども病院を中心に参加を呼びかけて今後も年2回くらいのペースで続けていく予定です。

 

シンポジウムのポスター
シンポジウムのポスター

患者数の少ない会がこうしたシンポジウムを始めたきっかけは、昨年の同じ時期に治療が難しくなった会員のお子さん2人の、あまりにも違いの大きかった疼痛緩和に、ほとんどアドバイスもできずなすすべがなかった悔しい経験をしたからです。

患児への医療用麻薬使用は投与量など難しい問題が多く、大人と違って数も少ないためなかなか進みません。疼痛管理がうまくいった子は、こども病院の主治医が地域のペインクリニックに連携を依頼してほぼ最後まで笑顔で過ごすことができました。このことは医師個人の技量の問題というより、医療者同士の横のつながりのなさが問題であり、連携の必要性を強く感じました。それが大きな動機となりました。

さらに昨年12月には発足当時からの念願だった冊子、「お父さんとお母さんのための肝芽腫ハンドブック」(A5版68ページ)を発行しました。これは患児の付き添いでパソコンを見る時間さえない親が、付き添いの合間にも読めるようにと作成したもので、会員でない方でも1冊300円プラス送料でお送りすることができます。ご希望の方は上記メールアドレスから「冊子希望」という件名でお申し込み下さい。

患者数がとにかく少ないので、小児がん全体を対象とした勉強会や催しでは肝芽腫を取り上げて話をしてもらえることはまずありません。ですから小児がんというくくりでの話は大きな会や病院内の親の会におまかせし、「肝芽腫に特化した情報発信」を今後も続けていきたいと思います。

また、疼痛管理のシンポジウムのように病院間、職種間、立場を超えた意見交換の場を小さい会ならではの機動力で作りながら、コツコツとよりよい医療のための活動を続けていきたいと思っています。

石田有生嘉さんの絵
石田有生嘉さんの絵
石田有生嘉さんの絵
(肝芽腫の子としては遅く小学校5年生で発症しました。発症時「手術も無理」と言われましたが化学療法を何度も受けて手術をし、自分の厳しい状況を発症時からきちんと知ったうえで最後まで希望は捨てずがんばりましたが2007年10月に永眠しました。絵が好きでホームページのトップに自分の絵が掲載されるのを楽しみにしていました。最後の絵は亡くなる2週間前に描いたものです)


肝芽腫の会

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