ほっとマンマの日(乳がん/大分)
温泉からがん啓発の発信と患者さんの心のリハビリを願って
乳がん患者でも毎日温泉に入れる「ほっとマンマの日」
別府温泉で使われているポスター
大浴場に掛けられているシャワーフック
乳がん患者さんが温泉に入りたい。温泉から力をもらいたい。そんな思いから湯の町別府で始まった患者さんと旅館女将の会と医療者が一体となった小さな試みが「ほっとマンマの日」です。
では「ほっとマンマの日」がどのようにして生まれたかをお話します。別府は日本でも有数の温泉地であり、町のあちこちから湯煙が上がっています。現在、温泉は癒しや楽しみで利用されていますが、がんとは相容れない雰囲気です。
乳がん患者会で、乳がん手術後に温泉に入れなくなったとの声が多くありました。大分には温泉好きの方が多く、大きな温泉に入ることで心も伸びやかになります。ある患者さんはそれが心のリハビリです、と言われました。
また乳がんはお風呂で触って気づくことがしばしばあり、この意味でお風呂は早期発見につながるきっかけとなります。そして乳がんは自己触診の習慣が、がん検診を受ける動機付けになります。実際に温泉で自己触診を知り、乳がんの早期発見で乳房温存術が可能であった人もいます。また術後も温泉が楽しめるようになると気持ちが前向きになり、心のリハビリにも役立ちます。そこで、温泉に入ることはもちろんですが、温泉場ががん情報を発信することができないものか考えました。このためには温泉旅館・ホテルの協力がぜひ必要です。
そこで私たちはべっぷ旅館女将の会に、温泉に乳がんの自己触診啓発のシャワーカードの設置とお昼の利用客が少ない時間帯に、乳がん患者さんと家族、友人だけで大きな浴槽が利用できるようにお願いに行きました。温泉からがん啓発の発信と患者さんの心のリハビリを願っての行動でした。
当初は毎週水曜日だけでしたが、現在は9軒の旅館・ホテルが協力してくれています。各旅館・ホテルはローテーションを組んでおり、患者さんにとっては昼の時間帯にどこかの旅館・ホテルで365日入浴できる毎日「ほっとマンマの日」になりました。リーフレットにホテル旅館の紹介と利用可能時間と書いています。さらにシャワーカードをかけていただいています。
今では別府の方はもとより、全国の患者さんにいつでも周りを気にせず、ゆっくりのんびり大きな温泉に入っていただけるようになりました。
協力する旅館・ホテルは、患者さんを受け入れる心構えとして職員に乳がんを啓発した後、参画施設となります。「ほっとマンマの日」を受け入れることにより、職員の意識が変わり、もてなしを追及している旅館・ホテル職員自身の心をも優しくしてくれています。
大浴場のシャワーフックに掛けられた自己検診で早期発見ができる「乳房を触ってみましょう」は、別府温泉の「人にやさしい宿作り温泉地作り」の一環として誇りを持っております。
女将も職員も「人への優しさ」から本物のおもてなしを学び、出会いを大切に息の長い活動として継続していきたいと、べっぷ旅館女将の会の小川雅代さん(ゆわいの宿 竹乃井)からもメッセージをいただきました。
旅館・ホテルの受付に置かれているポスター
一目で利用できる温泉がわかるレリーフ
「ほっとマンマの日」代表で乳がん患者さんである小野さんは、ご自分が地元の長湯温泉で、乳がん患者さんから声をかけられると、一緒に温泉につかり、お話を聞いておられます。別府温泉では患者会の集まりにも利用し、患者会以外の方にも利用していただけるようにPRしています。一目で利用できる温泉がわかるレリーフや「ほっとマンマの日」のストラップなども作っています。温泉でお会いできるのを楽しみにしています。
今後の活動として
1.毎年10月のピンクリボンフェスタで乳がん啓発活動
2.「ほっとマンマの日」を利用してリンパ浮腫講演会(平成20年10月予定)
を考えています。
乳がん術後の大きな問題の1つが術側の腕がむくむリンパ浮腫です。これは手術で腋窩リンパ節を取るために起こりますが、不思議なことに全員に起こるわけではありません。重いものを持ったり、腕の運動のしすぎ、腕が炎症を起こす蜂窩織炎などを契機にリンパ浮腫が起こります。1度起こると治りにくいので予防が大切です。リンパ浮腫講演会には多くの方が参加することを期待しています。
(文/藤富 豊 大分県厚生連鶴見病院副院長)
「ほっとマンマの日」
別府市旅館ホテル組合連合会
TEL:0977-22-0401
ホームページ
同じカテゴリーの最新記事
- 新しくWell-beingをテーマに 4つの活動を柱に日本骨髄腫患者の会の輪を広げたい
- 患者会E-BeC「第10回 乳房再建全国キャラバン」を広島で開催
- 「小児脳幹部グリオーマ」患者会 厚生労働大臣に直接陳情
- 「医師と患者で、一緒に考えよう」をテーマに BCネットワークが第6回乳がんタウンホールミーティングを開催
- 乳がん体験者ががん患者を支える 患者の悩み、必要なサポートとは?
- リンパ浮腫について知ろう、語ろう、「リンパカフェ」
- 「乳房再建手術がわかる」 セミナーを開催
- BCネットワークでは初めて、患者さんの経験談をメインに開催
- 患者さんや家族の気持ちが、少しでも楽になるように「まる」と名付ける
- 「小児脳幹部グリオーマ」に関する要望書を厚生労働大臣宛に提出