声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net」(乳がん)
とにかく、できることを、できる範囲で始めましょう

文:伊藤朋子(声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net」)
発行:2008年3月
更新:2013年4月

  

互いの声を聴き合いながら社会に目を向けた活動も行っていきたい

写真:勉強会風景

勉強会風景「乳房再建のいろいろ~医師&体験者に聞いてみませんか~」

写真:勉強会風景

勉強会風景「~分かり合いたい~患者の気持ち、家族の気持ち」

声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net(以下VOL-Net)は、声を聴き合うことからQOL向上を目指す、乳がんのセルフサポートグループです。2001年に乳がん患者のメーリングリスト(テディベア)で知り合った仲間が、「できるところから始めよう」と動き始め、知人友人に呼びかけて準備会が始まり、2002年の秋から会としての活動が始まりました。

以下は設立当初に掲げたVOL-Netのポリシーともいうべきもので、今でも変わらず、常に活動の目標であり、原点でもあります。

基本方針―私たちは「声を聴き合う」ことから

・乳がん患者のQOLを向上させていきます。

・乳がん患者が、自分自身の「生」と向き合うことをサポートします。

・患者、家族、医療関係者など、乳がんに関わる人々をつないでいきます。

・患者中心の医療(キュアとケア)のために共に考え、行動していきます。

現在行っているVOL-Netの主な活動は、勉強会、聴き合いの会、インターネットを通じた情報発信、そしてさまざまな場面での社会へのアプローチがあります。

まず勉強会についてですが、開催頻度は年に3~4回で、直接治療に関するものだけでなく、乳がんとともに生きるための様々なことを取り上げてきています。いずれも、患者として何が聞きたいかをじっくり検討し、講師に丸投げはしない、講師と一緒に考え作っていく、というスタンスをとっています。勉強会の基本は以下の通りです。

・EBMに基づいた正しい情報が基本

・特定の治療法や、特定の分野に偏らないよう、バランスを重視

・参加者が過度な期待や偏った理解をしないよう、十分配慮

・患者として何が聞きたいかを、事前リサーチも含めて、講師とともにじっくり検討

参加者募集の際に講師に対する質問などを集め、それを予め講師に伝えて内容に盛り込んでもらうとともに、勉強会の中で参加者との質疑応答の時間をたっぷりとり、通り一遍の講義で終らないよう工夫しています。

聴き合いの会は、患者同士が語り合うもので、私たちの活動の中心です。年に3~4回の開催で、その他月に1回『プチVOLサロン』という聴き合いの会ミニ版も開催しています。自由な雰囲気、安心して話せる環境を作り、参加者の自主性・自律を重視して、患者はみな“違う”ということを前提に、“違い”を排除しないことを大切にしています。

参加の方からは「前向きになって生きていけそうです」「心が晴れたようです」「気持が少し楽になりました」「心が落ち着きました」などの声をいただいています。

このように、話すこと、聴くことは、心のケアに非常に重要ですが、反面、不用意な言葉によって傷ついてしまうこと、治療決定などでのミスリードの可能性があるのが現実です。これをできるだけ回避するために、ルールを配布してスタート時に全員で確認しています。

話をしやすい5~7人のグループ分けをして、お茶とお菓子を準備してリラックスできる環境を整えます。各グループには一定の研修でトレーニングをしたメンバーがファシリテーター(促進者)として入り、話しやすい雰囲気作りをして、会話が円滑に進むような知識と工夫をもって臨んでいます。『勉強会』『聴き合いの会』ともに会員ではない方も参加していただけます。

もう1つ重要な分野は、インターネットを利用した情報発信です。現在公開しているコンテンツのうち、とりわけ重要な情報は、「患者が書いたやさしい乳がん用語集」と「乳がん治療のフローチャート」、そして標準治療解説メルマガです。

情報提供は慎重に行っており、医療的な内容は、間違い・偏りのないように、複数のメディカルサポーターの監修を受けています。

VOL-Netは歴史の浅い、規模の小さな会ですが、患者同士の交流に留まらず、社会に目を向けた活動も視野に入れています。ホームページを通じて集めた患者の声をまとめ、「乳がん術後のセクシュアリティ」(セクシュアリティに関するアンケート調査報告書)として発行したり、乳がん体験者アンケート「私のがんはこうして見つかった」の結果報告をしたり、患者の声を社会に伝える情報発信も行っています。

さらにここ1~2年ほど、「患者会の意見を聴く」という場に沢山お声がかかるようになりました。がん治療の専門医に関する学会との懇談会や、各種メディア(NHKスペシャルや学術雑誌)での発言、厚生労働省の医療に関する審議会における意見聴取などです。このような患者会の役割は、これからますます大きくなっていくと思われます。

VOL-Netは、運営メンバーの合議で活動を進めています。時には動きが鈍くなる場合もありますが、それが偏りのない、バランスのとれた活動につながっていると自負しています。これからも「声を聴き合う」ことをモットーに、「とにかく、できることを、できる範囲で始めよう」というコンセプトで活動していきます。


声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net」

~Voice Of Life Net~
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