ひいらぎの会
がんの恐怖に負けないために患者さん同士が励まし合おう

文:小形 武(ひいらぎの会 代表世話人)
発行:2007年6月
更新:2019年7月

  

1人の女性との出会いから生まれた患者会

まずは「がんを考えるひいらぎの会」(以下=「ひいらぎの会」)設立の経緯を述べさせていただきます。

1991年3月、私は胃の手術を受けました。手術前の説明は胃潰瘍だったのですが、退院する2日前に「進行性胃がん」との告知を受けました。

告知された夜は同室の人に悟られないように声を殺してベッドのなかで泣いていました。

当時の告知率は約18パーセント。がんに関する情報は乏しく、がんは怖いだけの病気で、死と同義語だという風潮でした。

そんなとき、偶然に末期がんにおかされた女性が、患者さんを励ましているテレビを目にしました。後日、私はその女性を訪ねたのです。その女性との出会いが私にとって転機になりました。それまではマイナス思考になりがちだった私が、すべてのことを前向きに考えられるようになったのです。

写真:「ひいらぎ通信」
毎月発行される「ひいらぎ通信」

「がんの恐怖に負けないためには患者同士の励まし合いが不可欠」と悟った私は、1994年2月に、「ひいらぎの会」を設立しました。

会の名称は、私が高校教員時代、週に1回、発行していた学級通信『ひいらぎ』からとりました。 ヒイラギは常緑樹で丈夫です。それに、葉にトゲがあることから魔除けの意味もあり、お祝いにも使われます。そのような理由から、この名前にしました。

「ひいらぎの会」の活動の目指すべき方針は次のようなものです。

1 希望や生きがいを持つために体験発表や交流の機会をもちます。

2 会は互助的な性格を有し、他人を助けることで自身が幸せになることを信条とします。

3 会で知ったお互いのプライバシーを大切にします。

4 会を政治や宗教の宣伝・普及、健康食品などのセールスには一切利用しません。

5 サプリメントや民間療法などに関しては会として、普及、宣伝に関わることを一切しません。

がんの発病は、人体の免疫力が関与しているといわれています。その免疫力が活性化して、がんを抑えられれば最良の療法と思います。しかし、さまざまなサプリメントや代替療法などは、その効果は科学的に明確にされていないことを知っておかなければなりません。

 

写真:交流サロン

会員の体験発表や交流の機会を得るため、交流サロンは重ねられている

写真:「ガン克服日米合同富士登山」

患者さん同士、励まし合いながら頂上を目指した「ガン克服日米合同富士登山」

数ある代替療法のなかには、3大療法(西洋医学:手術、放射線、化学)を否定し、やめることを主張するものもあります。当会では、このような療法には同調しません。

近年、注目の免疫療法については、その治療効果などにつき解明されることを期待しています。

16年間の闘病体験と、13年間の患者会活動を通して私自身が得た教訓が5つあります。

1つめは「適度な運動をすること」です。「動く水は腐らず」や「回る独楽は倒れず」と言われるように、人間にとって運動は健康維持、がん再発・予防上大切です。これは医学的にも根拠があります。

2つめは「食事を改善すること」です。「これを食べればがんが消える」といったような情報がちまたにあふれ、なかにはいい加減なものがあり、注意を要します。がんと食生活は深い関係があり、生活習慣病の範疇の病と言われています。

3つめは「生きがいを持つこと」です。会では登山行事を行っているのですが、よく「がん患者がどうして登山なのか?」と尋ねられます。がん患者は安静が必要という、誤った社会常識からきていると思われます。

 

写真:トレーニング

ハイキングに始まり、しだいに高山へと移行したトレーニングは、富士登山へと結実した

写真:マラソンにもチャレンジ

運動することに気を配っている会員は、マラソンにもチャレンジした

ですから、1997年の「ひいらぎの会」単独の富士登山、2000年の「ガン克服日米合同富士登山」への参加は、会員さんたちがハイキングから徐々に高山への登山へと移行し、トレーニング登山を重ねた結果、結実したものです。これは、まさしく富士登山という生きる目標(生きがい)ができ、その目的に向かって鍛錬した賜物でしょう。

4つめは「ストレスをためないこと」です。複雑な社会生活のなかでストレス回避は困難ですが、精神神経免疫学的に大切です。

そして、最後は「常にプラス思考で強い気力を持つ」ことです。

現在、会の活動は、年6回の「部位別がん患者交流サロン」と名づけた例会が中心です。

5月には「総会」と「がんコンベンション(体験発表、シンポジウム)」を行っています。

さらに、7月には1泊2日の予定で「登山・交流座禅体験」を行ったりしています。

その他、「医と笑いのコラボレーション(講演と落語)」や「心の相談室」、「部位別の集い」などもイベントの一環として行っています。

今後は「がん悩み110番」などに取り組み、会設立時の思いである「がんの恐怖に負けないための患者同士の励まし合い」をより広げていきたいと思っています。


がんを考える「ひいらぎの会」

〒960-8254 福島県福島市南沢又字河原前29-5 小形 武
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