12Bネット
他の患者会との連携で、充実した患者サービスのきっかけを

文:在家 智(12Bネット 代表)
発行:2007年5月
更新:2013年4月

  

患者間のネットワークを広げ、悩みや不安を解消しよう

「12Bネット」は、国立がん研究センター中央病院で造血幹細胞移植を受けた患者の手によって「同じような経験をした方々と親睦を深め、何でも話し合える場をつくろう」と1997年3月に設立した患者会です。

メンバーは同院で治療を受けた方に限っていますが、他の病院の患者会との交流もはかっています。

小説や映画の大ヒットも手伝い広く再認識されるようになった白血病などの治療として行われる骨髄移植(=造血幹細胞移植)。その移植を受ける前処置として大量の抗がん剤投与か全身放射線照射を受けることにより、白血球や血小板が少なくなる期間は感染の危険があるため、無菌室や感染管理病棟で過ごす必要があります。それに、他のがんと同様に血液のがんも再発や治療の副作用、移植後に増えたリンパ球が患者自身の体を攻撃するGVHD(移植片対宿主病)などさまざまな不安があります。

病気をしてから個人的に感じたことですが、いかに家族でも、少しわがままになった患者の気持ちをわかってもらえず、歯がゆい場面が何度かありました。しかし、患者同士だと、たとえ初対面でも闘病した経験が前提にあるからなのか、親しくなるための行程のいくつかが取り払われている気がします。

写真:患者会連絡会の紹介ポスター

他の患者会との交流を活発にさせた患者会連絡会の紹介ポスター

そのような雰囲気のなかで悩みや不安などを話し、患者同士のつながり(ネットワーク)を広げながら、治療や病気に対する心構えをして、悩みなどを解消していく。その場所が、偶数月第4土曜日に病棟のカンファレンスルームを借りて行われる「12Bネットサロン」です。

その他、お花見など季節ごとのイベント、旅行、会報の発行、インターネット上のホームページ開設などをしています。

また、国立がん研究センター中央病院内の「がん医療サポートチーム」の患者会連絡会に参加するようになりました。

その結果、院内の別の患者会と「患者会連絡会」として連携するようになりました。この会では、患者会告知のポスターの掲示をしました。さらに、新病棟が建設される以前に一部から提言があった「患者向け情報ブース」の構想を「情報プラザつきじ」という形で開設したりもしました。そこには、各患者会の情報がわかるものが置かれています。加えて、外部患者会とのつながりも冊子制作として形にしました。

米白血病協会発行の医療情報などを翻訳してきたボランティアグループ「MEDOC」(活動終了)が公開した内容を、先に冊子化された「富山県骨髄バンクを広める会」と「福井県骨髄バンクサポーターの会」の協力を受け、東海大学病院の骨髄移植体験者の会「TOMORROW~あしたの会~」と協同で3冊の冊子を発行しました。制作にあたり「TOMORROW」が資金を集め、「12Bネット」が編集レイアウトを担当し、それぞれの病棟内に置くなどして、患者さんの目に留まるようにしました。

写真:「TOMORROW」と共同制作した冊子
TOMORROW」と共同制作した冊子

写真:「12Bネット」の会報
「12Bネット」の会報は、会員が欲する情報が満載

「MEDOC」や富山と福井の方々、「TOMORROW」の会員の方とは、10年ほど前、パソコン通信での血液疾患の会議室「らくだのオアシス」で知り合い、皆さんそれぞれの思いが合わさって冊子として結実しました。

余談になりますが、医療と同じく日進月歩のインターネット上では、当時を振り返ればかなり昔のように感じられ、「らくだのオアシス」も今はありません。しかし、それは日本各地で患者会などの活動が息づく前段階のように思い起こされ、これからも小さな集合が相互に連携し合っていくことでしょう。

それを証明するように「NPO法人つばさ」の呼びかけに各地の血液疾患の患者会が賛同し、第26回日本造血細胞移植学会での「病棟患者連絡会」をきっかけに、他患者会との交流がされつつあり、今後の展開に期待しています。

患者会創設時に、担当医からアメリカの病院での患者会の活動を伝える印刷物を見せていただきました。記事には数10人の患者が並んだ記念写真が掲載されており、活動の大きさを示す写真に驚いたものです。

欧米での患者を取り巻く環境は、そのサービスの充実ぶりを伝え聞きます。たとえば、病院周辺のボランティアと連携して、患者相談窓口にとどまらず宿泊施設の紹介や施設間の移動手段の手配などを行っています。

それは、メンバー数40名ほどの「12Bネット」のような小規模の患者会にとって、遠くにそびえる大きな目標ではあります。しかし、院内や他病院の患者会との連携を密にし、私たちに合った患者サービスがなされるきっかけづくりができるような、しっかりした患者会の基礎を築くことができればと考えます。

それと並行し、国立がん研究センター中央病院内の患者会として、この環境に合わせた活動を続けていきたいと思っています。


12Bネット事務局

〒135-0033 東京都江東区深川1-10-6-1105 在家 智(ざいけ さとる)
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