京葉喉友会
がんで声帯を失った患者さんへ「第2の声」を取り戻す支援を

文:工藤剛武(京葉喉友会 副会長)
発行:2007年4月
更新:2013年7月

  
工藤剛武さん
京葉喉友会副会長の工藤剛武さん

「失った声」を取り戻すための発声教室を運営

京葉喉友会は、「がんで喉頭摘出手術を受けて声の機能を失った患者が、発声練習を通じて相互の友愛と親睦を図り、以て社会活動への積極的参加を促がすこと」を目的として活動している団体です。具体的には、がんで命と引き換えに音声機能を失った患者に対し、失った「声」を取り戻すべく「第2の声」として食道を利用する発声法、または電気式人工喉頭による発声法などの訓練を行っています。

最近、先進国あるいは日本において失語症や喉摘者に対して指導するのは、言語聴覚士や音声機能訓練士(仮称)でなければいけないと言われていました。けれども、ボランティアであることを前提に、発声技能を修得した人が指導してもよいことになっています。現実には、/十分に社会生活が送れる発声技能を持つ喉摘者が指導員に認定されています。

発声訓練の教室は、毎週金曜日午後1時から3時までの2時間、音声機能障害者発声講習会の日程表に沿って開かれます。教室は、千葉県から委託を受けて行うものと、当会の自主開催を含め、年間、約41回です。場所は、千葉市稲毛区にある千葉県青少年女性会館の3~4カ所の会議室を借用しています。

発声教室の参加者は、毎回60名、多い日は80名ほどの患者が参加しています。教室では受講生の進度により「初級クラス」「中級クラス」「上級クラス」とにわけられ、さらに上級クラスの卒業者は「声友クラブ」へ進むことができます。

写真:研修会

“第2の声”によって大人数の前でも話すことができるようになった

写真:海外から研修にやってくる人も多い
海外から研修にやってくる人も多い

写真:指導者を養成するための研修会
指導者を養成するための研修会

写真:喉摘者と向かい合い指導する工藤さん
喉摘者と向かい合い指導する工藤さん

「初級クラス」とは退院して初めて発声訓練に挑戦するコースです。ここでは、健常者と喉摘者との違いを理解していただきます。健常者は大量の空気を口・鼻から取り込んだ空気を肺から逆流させて気管の声帯を振動させています。けれども、気管孔という喉に開けた孔から呼吸している喉摘者は、空気を肺から吐き出して言葉にしようとしても、気管孔からヒューヒューと出ていき、「声」が出ません。

そこで、気管の代わりに食道を利用する方法を学びます。この食道へ空気を取り込むということができれば大前進です。さらに食道を声帯と同じように働かせるためのトレーニングも行い、食道入口部のやや下部を振動させます。これを原音発声訓練といい、早い人だと入会当日にできてしまいます。その後「ア・イ・ウ・エ・オ」と一語、一語の訓練をします。

そして、進度に応じ、簡単なテストを経て「中級クラス」「上級クラス」へ進級するわけです。もちろん、上級へ進めば、日常会話やカラオケで歌うことも可能になります。

また、手術の状況により、食道発声が困難な方のためには「電気式人工喉頭」を利用した「EL(電気発声器)クラス」があり、「どなたでも必ず声は出る」をモットーに活動しています。

その他、当会では発声技術向上を図るため、指導員の研修会や大学での講演会、機関誌の発行、親睦旅行、友好団体や他の身体障害者団体との交流や連携・交流を図っています。

当会への参加ですが、発声教室開催日にご本人かご家族の方がおいでになり、入会を申し込んでください。入会金などが必要ですが、事後の年会費は3000円のみです。詳しくは事務局までお問い合わせください。必要な方には、機関誌あるいは「ご案内」を差し上げます。1度、見学をお勧めいたします。

失った「声」を再び取り戻したときの喜びや社会復帰への希望を、すべての患者さんに持っていただきたいと念じています。

最後に当会の神埼和会長のコメントを入れさせていただきます。

「京葉喉友会は、喉摘者会員相互の親睦と、第2の発声習得により無音声障害を克服することを機軸としています。会の運営に携われてよかったことは、大勢の皆さんとの交流が広がったことです。それに、毎年、大勢の会員が参加してくれる新年会や親睦旅行は楽しいですね。

これからは、喉摘者の発声法についても、従来の食道発声法一辺倒ではなく、代用のELが急速に取り入れられている現状を正しく認識しなければいけません。発声の指導法について、否応なしに再検討のときを迎えているんです。だから、ELの教室の充実を図っていきたいです。会員が1人残らず、会話ができるようになることを目指して、これからも努力していきます。

会は私の生きがいです。歴代の会長が築き上げた良き伝統を守り、そして育てていき、会の設立目的である会員同士の親睦、発声講習会の充実を図り、1人でも多くの会員が早期の社会復帰を果たせるような指導態勢を整えていきたいです」

京葉喉友会

〒266-0031 千葉県千葉市緑区おゆみ野1-25-2 C-5-533
TEL&FAX:043(293)4393

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