フォーエバー
「奇跡」を信じ、共に希望を見出していく

文:金子明美(フォーエバー 代表)
発行:2006年12月
更新:2013年7月

  
金子明美さん
代表の金子明美さん

共に泣き、共に笑い、共に生きる

「フォーエバー」は、北海道で活動をしている、患者さんや家族みんなで作り上げる患者会です。がんの種類にもこだわらず、またお互いの気持ちを理解しあうきっかけにもなればと思い、患者さんだけではなく家族の方、医療者の方のどなたでも参加できる自由参加の会です。ただ営利目的や、政治、宗教の勧誘はしないことを条件とさせていただいております。

3年前、私は大腸がんから卵巣、子宮への再発が発覚し、「余命3カ月」の告知を受けました。そのときの私は内にあるさまざまな苦痛を吐き出すことはできませんでした。

当時看護師として働いていましたが、看護師が看護される側に回り、働けないという大きな苦痛、3歳の娘の成長をしっかり見届けることができない苦痛……その他家族に言えないことはいっぱいありました。

医療者側は、直接的な治療に固執してしまいます。精神的なケアは「したくてもできない」というほうが正しいのかもしれません。医師不足、看護師不足……医療者は常に忙しく、患者と同じ目線にはなかなかなれないのが現状です。その状態を目の前にして患者サイドが医療者に要求するということは難しい話です。

だったら、せめて思いを吐き出す場所が欲しかった……。そして患者会を探しました。しかし近くには乳がんとオストミーの患者会しかありませんでした。

黙っていても患者会ができるはずもなく、「だったら自分が作ればいい。きっと同じ思いをしている人は沢山いるに違いない」と昨年6月、新聞で協力してくれる賛同者を募集し、連絡をくれたのが、今の副代表の関根です。そして、受診している病院へ協力を依頼し、緩和ケアの医師、看護師長がバックアップしてくれることになりました。

しかし、何をどうすればいいのか模索している中、9月に私が肝臓転移と手術で一時停止、そして今年3月に緩和ケア医師の柴田さんから患者会の打診があり再度発足の準備にとりかかることにし、5月17日に第1回の定例会を決定したのです。

写真:定例会の様子
月1回開催される定例会の様子

当初は奇数月の予定だった定例会も、患者さんの希望で毎月行うことにしました。会員数は30人ほどで毎回2時間という限られた時間ですが、会員1人ひとりが積極的に発言してくれています。

患者自身の苦痛、家族の苦痛、医療者の思いを吐き出し合い、その中でお互いに共感を覚えたり、患者自身が家族の思いを知ることで「生きることを諦めない」ことに繋がります。また、家族は患者自身の本心を知ることで接し方が変り、希望を見出していきます。

共に泣き、共に笑い、共に生きている……奇跡なんてどこにでもあります。ということをいつもお話ししています。

そして、緩和ケア医師の柴田さん、看護師長の金澤さんからのアドバイス、毎回医療者の助言をいただけるということは会として本当に恵まれたことですし、また、会場を無料提供していただいている、室蘭日鋼記念病院には感謝ばかりです。

お話された後の会員さんの帰りの足取りが軽やかに見えるのは偶然ではないと思います。

1番大切なことはお互いの「思いやり」なのです。1人ひとり「ありがとう」と感謝をしてくれますが、私が感謝したいほどです。これが地域における患者会の役割です。

年会費、入会費などは一切無くし、定例会時の会費(500円程度)のみです。行政からの助成金などが可能になればゲストをお招きしてのシンポジウムも考えています。

まだまだこれからの小さな患者会ですが、私はこういう患者会が各地域に発足されれば、患者さんはどんなに救われることかと思います。

「代表は治療中でつらいのに……」「大変なら無理しないで」と皆さん言って下さいます。

でも、私が「がん」を持って、今まさに治療中だから、なおのこと患者さん、家族の気持ちを理解できると思っていますし、1番は自分のためなのだと思います。

まだまだ社会に貢献できることが喜びとなり、会員の方の前向きにがんと向き合っている姿勢に、どんなに励まされたのかわかりません。

「フォーエバー」はもし私に何があっても次へとバトンタッチをしていき、その名の通り永遠に会が存続していくことを願って、いいえ信じています。

明日も明後日も私は生きていきます。いつか「がん患者」ではなくなる日がくるかもしれません。奇跡はどこにでもあるものだから……。

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