セカンド・オピニオンを推進させる会
患者さんが自ら進んでセカンドオピニオンを活用できるように

文:中村康生(セカンド・オピニオンを推進させる会 代表)
発行:2006年9月
更新:2013年7月

  
中村康生さん
代表の中村康生さん

精神的なゆとりを生み、不信や迷いを払う

医療知識の少ない患者さんにとって、提示された治療法の中で自分にあっているのはどれか、選択することは簡単なことではありません。医師の説明通りにうまくいくのか、もしかしたら診断が間違ってはいないか。心が揺れ動くのは当たり前のことです。そんな揺れ動く患者のために必要だと感じたのが「第2の意見」を聞く、セカンドオピニオンでした。

1998年6月に発足した「セカンドオピニオンを推進させる会」では、患者さんが検査データを持参して、会が紹介した専門医に直接受診し、セカンドオピニオンを聞いてもらうというシステムをとってきました。2003年10月までに、協力を申し出て下さった医師は、約800人にも上っています。

2002年4月にセカンドオピニオンが制度化されて以降、普及は急ピッチです。医療者側のセカンドオピニオンに対する認識は深まり、「セカンドオピニオン専門外来」を設ける病院も増え始めてきました。06年4月からは、検査データの貸出に対して保険が適用されるようになり、より一層セカンドオピニオンが受けやすい体制が整いつつあります。

会としては、そのような動きを受けて、03年秋より活動のポイントを、医師の紹介から患者さん自らが進んでセカンドオピニオンの制度を活用できるためのアドバイスにシフトさせています。せっかくできた制度を患者さんが自らのものにすることが大切だと考えたからです。

写真:『医者がすすめる専門病院 東京都全面改訂 2004~07版』

『医者がすすめる専門病院
東京都全面改訂 2004~07版』
ライフ企画
2,940円
その他 全国各地域版も発行

環境をより整備するために編集した『医者がすすめる専門病院』では、収録されているすべての科について、セカンドオピニオンの受け入れ、検査データの貸出、カルテ開示の可否について回答をしてもらっています。この本も、病院・医師選びにご活用していただいています。

03年末の時点で、当会を通じてセカンドオピオンを受けられた方は400人ほどです。

手術が必要であると言われながら、セカンドオピニオンにより、手術以外の方法での可能性があると知った、など、実際の治療方針に大きな影響を与えたケースもいくつも報告されています。ただ、セカンドオピニオンを受けてみて、主治医と意見が違うケースは、全体の1割程度です。つまり、9割は、主治医とほぼ同じ意見という結果なのです。

しかし、その場合も、主治医に抱いた不信や迷いが消え、信頼感はより強まり、治療に積極的になるという意味で、やはりセカンドオピニオンを受けた意味は大きいと考えます。セカンドオピニオンを受けた方からは、「結果は同じでも、精神的にゆとりが生まれ、心構えができた」「迷いを払ってくれた」「手術の必要性に納得できた」などの声が寄せられてきました。

セカンドオピニオンの普及による最大のメリットの1つは、誤診が大幅に減る点です。日本よりもがん医療の進んだ米国では、乳がん検診にマンモグラフィを広く採用していますが、それでも、見落としなど、誤診は30パーセント以上になると、NIH(米国立衛生研究所)の報告があります。最初の診断に疑問を持ったら、専門医にセカンドオピニオンを受ければ、結果として誤診が減ることは間違いないと考えます。

課題もあります。まず第1の課題は、医療者や患者側が、セカンドオピニオンの本質を、まだ十分に理解していない点です。主治医とセカンドオピニオンを担当する医師はあくまで対等な立場にあり、セカンドオピニオンは主治医の診断をジャッジ(裁定)するものではありません。本来あるべきセカンドオピニオンとは、患者が主治医の意見を前提に、2番目の意見を聞いて、それを参考にして治療法を自己決定するというものです。

2つ目の課題は、検査データを借りることなどについて、主治医との関係を考えて遠慮してしまっている人がまだ多くおられることです。

3つ目の課題は、地域格差です。ここでいう格差とは、技術ではなく、セカンドオピオンに対する医師の理解のなさ、意識の低さの問題です。2つ目の課題にも関係しますが、とくに地域の病院では、検査データの貸出に協力的でない医師がいまだにいます。

会としては、検査データの共有化とセカンドオピニオンが普及し、医療制度の中に組み込まれることを目標にしています。病院間で検査データの共有化が実現すれば、転院先で、また同じ検査が繰り返されることなく、医療費の抑制につながります。

また、「セカンドオピニオン外来」を設ける病院が増えてきていますが、その質もさまざまです。患者がその品質を確認できるように、症例数や治療成績などの情報が必要です。現在、セカンドオピニオン医師を選ぶ際に必要な情報である「累積執刀数・年間執刀数・治療成績」などを調査中で、今後その結果を公開していく予定です。

セカンド・オピニオンを推進させる会

〒253-0053 茅ヶ崎市東海岸北5-15-51
TEL 0467-88-7701
FAX 0467-88-7702
『医者がすすめる専門病院』ホームページ

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