あすなろ会
リンパ浮腫に悩む患者を多方面からサポートする
代表の森洋子さん
リンパ浮腫、病気としての正しい理解と知識を広めたい
リンパ浮腫患者グループ「あすなろ会」が誕生したのは2000年9月。同年4月、インターネットを通して知り合った同じリンパ浮腫で悩む仲間たち(現スタッフ)と、徳島大学医学部に在職中で、日夜リンパ浮腫患者と接し、患者の嘆き苦しみを目の当たりに診療に明け暮れていた小川佳宏先生とともに「リンパ浮腫患者交流会」を開催したことがきっかけでした。その後、小川先生は「あすなろ会」発足と同時期にリンパ浮腫を専門に入院治療出来るリムズ徳島クリニックを開業し、以来ご協力をいただく形となっております。
ここ数年は“リンパ浮腫”という文字がテレビや新聞、雑誌などで見られるようになっていますが、実際には「仕方がない、治療法はない」の一言で片付けられています。がん治療後の後遺障害の1つと考えられ、疾患として認識されていないのが現状です。小川先生のご指導のもと、正しい治療法を知った私たちは、1人でも多くの方に正しい知識、正しい治療法を学んで欲しいとの思いであすなろ会を起ち上げました。
まず、医療従事者さえ正しく認識してないリンパ浮腫を病気と位置付け、患者の地位向上を目指し、リンパ浮腫の理解を広く世間に促すことを活動の目的としています。電話相談などでも患者の精神的なケアを第1にサポートさせていただいております。
また、いろいろな治療法がある中で、リスクの無い、セルフケアが中心の「複合的理学療法」を広く普及させるために、小川先生や複合的理学療法セラピストのご協力で講演会、セルフケア講習会を開催しております。東京、大阪では定期的に、希望のある地方都市の医療機関には直接出向いて開催しております。1人でも多くの方に正しい治療法を習得していただきたいと考え、今後も出来る限りいろいろな場所に出かけて行きたいと考えております。
複合的理学療法とは4つの重要な項目からなり、これら1つも欠かすことができません。(1)スキンケア(炎症を起こさせないため) (2)用手的リンパドレナージ (3)圧迫(弾性着衣、弾性包帯) (4)圧迫をした上での運動療法。この4つを組み合わせることで、浮腫の軽減、患者のQOL(生活の質)の向上は確実に期待できます。しかし、現在日本国内においてリンパドレナージやバンデージ治療(弾性包帯による治療)を気軽に学び、かつ、正しい方法で施術できる機関が少なく、多くの患者さんが困っているのが現状です。将来におきましては、1カ所でも多くの治療施設が出来ることを心から望んでおります。
次に、私たちリンパ浮腫患者にとって必要不可欠な弾性着衣ですが、先に述べましたように、リンパドレナージやバンデージが学べなくても、弾性着衣による圧迫はどなたでもでき、弾性着衣を上手に選べればむくみの改善がみられる場合もあります。一生装着し続けるためには、長さ、太さ、型を正しく決め、苦痛を伴わないものを選ぶことが大切です。そのため、あすなろ会では、よりご自身に合ったものを選んでいただくために、試着をしてから購入することを基本にお手伝いをさせていただいております。
弾性着衣の保険適応に関しましては、多くの方が望むことです。一般的には年間平均で5万円から10万円ほどかかり、家計には大きな負担となっております。会としては、治療用装具として認めていただくことで療養費の支給実現を目指しております。会員1人ひとりが必要書類を整え窓口へ提出することから始め、実績を積み上げております。いずれ厚生労働省を動かし、弾性着衣が治療用装具として認められることに大いに望みを抱いておりますし、少しずつですが実現に近づいていることを実感しています。
あすなろ会会員によるアンケート結果のなかには、“がんとわかったときよりもリンパ浮腫と言われたほうがショックを受けた”という声も少なくありません。もちろん、1度リンパ浮腫を発症したら完治は難しいかもしれませんが、リンパ浮腫は患者自身でケアができます。持続させなければならないセルフケアですが、続けるためのメンタルサポート、同じ患者同士の集える場所の提供、完治が難しい疾患だからこそ患者会の役割は重要と考えます。
会員数80名からはじまった「あすなろ会」ですが、設立5年目で800名を超えたという現状が、まだまだ悩み苦しんでいる方が多くうずもれていることを想像させます。幸いなことに、あすなろ会には惜しみなく協力を申し出てくださっている小川先生をはじめ複合的理学療法セラピストの方々がおります。これからも皆様のお力をお借りし、1人でも多くの方に正しい治療法を知ってもらえるよう活動してまいります。
リンパ浮腫患者グループ あすなろ会
代表・森洋子
電話・FAX:0724-69-4190 (平日10時~16時、21時以降)
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