わかば会
会員が力を合わせ患者主体の医療とより高いQOLを求めていく
オーボエを演奏する病理医の
堤寛さんとピアノをひく寺田さん
患者と医療従事者が協力し発足1周年記念イベントを開催
わかば会は、愛知県豊明市 にある藤田保健衛生大学病院、内分泌乳腺外科の乳がん患者会として、2003年3月に発足した。毎月第1土曜日の午前10時から12時まで、院内のレストランの一角をかりて、懇談会や医師たちを交えた勉強会を催している。会は12時で一応終了だが、そこでランチをとりながら、医師たちも含めて、話に熱が入ることもある。当初は午前中で終わっていたが、最近では会の終了後もお楽しみになっている。
会が発足してちょうど1年。2004年3月20日に、私たちはわかば会発足1周年をみんなで祝う企画をした。患者会の誕生日を祝うという意味で、“Happy Birthday Dear Wakabakai”と題して、院内の500人ホールを借りて、講演&コンサートを開催した。
当日は、学生ボランティアが手伝い、音楽療法の松田助教授が会場係になってくれた。会場には花を飾り、横断幕や垂れ幕も準備された。会員とその家族、医師、看護師、藤田保健衛生大学の職員・学生、一般の方など、あわせて120人余りの入場者を迎えた。
講演は私の主治医にお願いし、演題は「乳がん薬物療法の進歩 現状と将来への期待」だった。コンサートは、病理医の堤寛教授のオーボエと私のピアノのデュオでモーツァルトのオーボエコンチェルトを演奏し、ゲストはピアノソロの越智章仁さん。彼はダウン症なのだが、素晴らしい感性の持ち主。自作自演の曲は癒しにぴったりのやさしいメロディー。そして、すべてがスムーズにそしてなごやかなムードで終えることができた。最後は、会場のみんなで“花”と “小さな世界”を大合唱した。本当に、わかば会の誕生パーテイーにふさわしい催しとなった。
何か心に残るようなことをしようと、この企画を半年前から計画し、ついに実現できた。この過程には、新しい何かを創造していくような楽しさがあった。なにもないところに形を生む。これは生命の息吹かもしれない。みんな生き生きしていた。
患者会を発足するに至ったきっかけは、ちょっと悲しい出来事からだった。若い友人が再発していたのだった。彼女の思いは、「再発すると心細い、友達もだんだん話しづらくなる、支えてくれる仲間が欲しい……通院する大学病院に患者会があったらなあ……ドクターとも安心して話せる環境ができないかなあ」だった。行動にうつそう! 今しかない! と私は思った。再発……彼女は死んでしまうかもしれない……支えなきゃ! その思いで、大学病院の医師に相談を持ちかけ、患者会の発足への道を探した。
私の主治医は、最初「そういうのがあるといいとは思うけど、誰かが言い出してやってくれないと、僕たちからはやってよと言えないし……」だった。「じゃあ私たちがやる!」、それで主治医との話は決まった。主治医が教授に話をしてくださり、すんなりとOKとなった。時代も患者とのコミュニケーション、よりよい医療を求めてという流れがあり、路線がNOでないということは嬉しかった。
初回は25名が集まった。チラシをたよりに、お互いよく知らないもの同士が集まった。あとは、毎月会を重ねるごとに、知り合いも増え、話しやすさも増した。医師や看護師にも参加してもらって、乳がん医療の専門的な勉強会も催した。内分泌乳腺外科の教授も参加してくれている。これはすごいことかもしれない。患者会とはいえ、ボランティアで教授がじきじき勉強会を開いてくれるのだ。教授も、衛生看護学科の教授も時間が可能な限り参加してくれるので、専門的なことを直接質問できる。そういう積み重ねをしていくうちに、人間は親しくなっていくものなのだ。声もかけられない、と思っていた教授も身近な相談相手となってくれる。外来以外で、しかもお茶を飲みながらの交流。患者にとってはとてもラッキーな環境だ。医師たちもお誘いして、1日旅行(食事と温泉)や、新年会も開いた。
今回の講演&コンサートは、みんなでアイデアを寄せあい、協力したからこそできたのだ。思いを形にする。“いのちをいきる“証し。それをみんなで創造したという感動。喜び。来年もまた2周年記念誕生会をやろう。がんと共存して生きていくうえで、こういう楽しみや目標は、精神面にプラスに働くと思う。わかば会は、患者の生の声を直接自分たちの治療にあたる医師たちに伝えることができる。みんなのエネルギーをいい方向に持っていく。私たちは日々のQOLをよりよいものにしていきたい。会のみんなの声で創り出し、ニーズを積極的に出していく。そして、医師たちが人間まるごとみてくれることに感謝したい。
衛生看護学科の教授が、「わかば会はやっとわかばマークがとれて一人前になりましたね……これからどう発展していくか楽しみです」と。まさにそのとおり。やっと1歳。よちよち歩きだしたところなのだ。
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