患者や家族のこころがつながるサロン
〝レモンタイム〟のように丈夫に育て患者力
京都がんサロン・レモンタイム 代表 小笠原英子
ホームページ(連絡先)
http://www.hla.or.jp/lemonthyme/
会場
〒600-8813 京都市下京区中堂寺南町134
京都リサーチパーク1号館2F 公益財団法人HLA研究所内会議室
個性派6名のチャレンジ
京都がんサロン・レモンタイムは、京都府下に数少ない病院外サロンとして2007年に誕生しました。
「がんと告知された日から始まる〝心の嵐〟に押しつぶされないように、苦しくつらい思いを言葉にできる場所を作りたい!!」がん種も病院も違う個性派6人の想いが、公益財団法人HLA研究所の支援を受けて実現しました。
毎月第4土曜日は会議室を借りて、ボランティアのがん患者さんや家族などが、医療従事者の支援を受けながら、こころを繋げていける場の提供を続けています。話し合いの場を軸に、少しでも笑顔になれたらとイベント(講演会・音楽会・落語会・食事会・バスツアーなど)も企画しています。
目指しているのは「ピアサポート」です。その言葉からどのようにサポートしてもらえるのかと期待しがちですが、がんサロンでは、こころの葛藤や不安などを、勇気を出して自ら話すことから始まります。
医学的選択を求める場ではなく、自分を解放する場、がん仲間と共感する場であることが特徴です。性別・年齢に関係なくフラットな関係で、自分と違う立場のがん患者・家族・遺族の考えや思いを聴くことは、少なからず残りの人生をどう生きるかの指標にもなります。
死を意識せざるをえないがんという疾患ならではの閉鎖性、絶望感、恐怖から、硬くなった自分のこころを言葉にするには、それ相応のエネルギーが必要になります。だからこそ優しいまなざしをもって気長にお互いの話を聴ける場でありたいのです。
サバイバーをめざそう
サロン参加は、先輩の生き方を参考に、自分はどう生きたいのかを探るチャンスです。活動に賛同頂ける医師にも恵まれ、不定期ですが医学的な意見を聴く機会もあります。
つらい治療を頑張っている人も、奇跡的な延命をされている人も、再発知らずの人も、いずれもがサバイバーです。そして共感したり個性を認めたり、その中で少しずつ思いやりも育まれているように感じます。
若葉マークのがん患者・家族・遺族の訪問を受けたときは、自然に先輩としての応援の声となり、あちこちからアドバイスの声が上がることがあります。サポートされる側からサポートする側へ。ボランティア冥利に尽きる瞬間でもあります。
タオル帽子の威力発見
スタートして間もない頃、抗がん薬治療で脱毛した患者さんに応える「岩手ホスピスの会」のタオル帽子の活動を知り、会のご協力でタオル帽子の作り方講習会をサロンで開きました。
肌に優しく、実用的なタオル帽子。確実に患者さんに喜ばれるボランティア活動と知りました。その後も会員さんと手作りの会を数回開き、タオル帽子を京大病院のがん相談支援室へ寄贈しました。現在は、新しく京都に設立された「京都タオル帽子の会」の協力を得て、タオル帽子をお渡ししています。
同じときを生きる
再発転移のある会員の方が、当会が企画した春の美山バスツアー参加の折、林檎の樹を買われました。その方は、ツアー後、緩和病棟に入られました。秋に箱一杯の赤く色づいた林檎が、「皆さんで分けてくださいね」とサロンに届きました。私たちは林檎を1個ずつ手に持って集合写真を撮り、「みんなつながっているよ。りんごありがとう」とメッセージを添えて病床に送りました。
昨年7月には、末期がん患者でありながら最後まで笑顔を絶やさなかったスタッフのサバイバーを見送りました。薬剤師という医療サイドからのアドバイス、同じ患者目線での丁寧な傾聴。京都に「ぜひ、患者サロンを充実させたい」と最後まで活動をされました。自身の失態をも笑いに変える機知に富む明るい生き方は、多くのがん患者さんたちに元気や希望・勇気を与え続けました。レモンタイムにとってそんな大切な仲間を失った悲しみは大きいのですが、あのスマイルをいつまでもこころに温めようと思います。
けじめになった5年目総会
喪失に翻弄され気付くと、2 012年11月28日、レモンタイムは5年目を迎えていました。総会イベント「ともに学ぼう! 21世紀の消化器がん=すい臓がん=」(講師:中泉明彦京都大学医学部人間健康科学科教授)を開催。人間味あふれる中泉先生は、一画面ごとに聞き手に向かって笑顔を絶やさず明解に話されました。難しい内容のすい臓がんの勉強でしたがレベルを落とすことなく、とてもわかりやすかったと好評でした。
レモンタイムの花よ、優しく、たくましく
設立当初から何か楽しみもプラスしたいと、健康にんじんスープの試飲やハロウィン仮装などを試みましたが、やはり「思っていることを話せる場である」ことが大切です。近況を報告し、お互いに「今」心配なこと、困っていること、「今」こんな風に元気に過ごしているなど、思いを放って帰る、そして自分自身をサロンの中で再確認できたら、次回もサロンを訪問する励みになるのだと感じています。
共感の輪が自宅からも広がればと、会員のみの「京感」メーリングリストでコミュニケーションを図っています。サロンの最後には、音楽活動(ピアノ演奏・合唱など)でこころを癒やしたり、気功をして疲れた身体をほぐしています。医師・看護師・薬剤師・社会保険労務士・音楽活動家などのスペシャリストの応援も受けながら5年目のレモンタイムはゆっくり歩みます。
次にレモンタイムを訪問される方とは、どんなご縁が広がるのでしょう。毎年6月ごろ、ピンクのちっちゃな花を咲かせるハーブ~レモンタイム~患者サロンという庭に、それぞれの想いが個性豊かに咲いています。
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