66歳という年齢では 自己造血幹細胞移植は無理か?

回答者・鈴木憲史
日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長
発行:2015年4月
更新:2015年7月

  

腰痛で病院の検査を受けたところ、多発性骨髄腫(MM)と診断されました。自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法を受けたいと思ったのですが、担当医は私の66歳という年齢を理由に適応できないと言います。年齢の区分は厳格に守らなければならないのですか。もしできないなら、これ以外の化学療法を教えて下さい。治療成績は大量化学療法と比べていかがなものでしょうか。

(66歳 男性 東京都)

全身状態がよければ 70歳まで大丈夫

日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長の鈴木憲史さん

66歳の相談者は大量化学療法をご希望ということですが、年齢を理由に治療選択を諦める必要はありません。日本でも、国際的にも、70歳までは心臓や腎臓の合併症がない場合は、自己末梢血幹細胞移植が勧められています。

以前は65歳で線を引いていたこともありますが、今の60歳代は元気な方が多いので、昔よりも、より効果的な治療ができるようになりました。骨髄腫の発症を年齢別でみると、65歳以下が3分の1。65~75歳が3分の1、そして、75歳以上が3分の1となっていますので、70歳まで移植ができるとなると、約半分の患者さんが対象になります。

治療成績は大量化学療法が入ったほうが明らかに良い結果が出ています。治療費と効果の両面を考えて、良い治療選択といえます。現在は、合併症の管理についても技術が向上し、昔は命に関わる合併症が出ることが5%とされていましたが、今は1~2%ほどです。リスクとベネフィット(患者利益)を考えると、ベネフィットが大きい治療法です。

とはいえ、適応は慎重に判断しなければなりません。臓器障害がないかどうかのチェックが必要です。また、1週間ほど無菌室に入る必要があったり、髪が抜けてしまったりと患者さんには大変な部分もあります。そのようなことを理解した上でならば、とても有効な治療法となります。

米国では、あるドクターによって85歳でも自己末梢血幹細胞移植による大量化学療法を行った方がいます。その方はスポーツを続けてきて全身状態(PS)がよかったために踏み切ったのですが、そこまでいかなくとも、元気であれば幹細胞もきちんと採取できるので、十分可能な治療法です。

また、ほかの治療法との比較ですが、薬剤も進歩しているので、一概に自己末梢血幹細胞移植による大量化学療法でなければならないということはありません。少しでも疑問点やさらなる希望がある場合は、セカンドオピニオンをお求めになるのも良いかと思います。

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