自家移植には無菌室が必要か

回答者・鈴木憲史
日本赤十字医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンター長
発行:2017年1月
更新:2017年1月

  

45歳の妻が多発性骨髄腫(MM)を患い、昨年(2016年)3月からCyborD療法(ボルテゾミブ+シクロホスファミド+デキサメタゾン)を3クール実施しました。その間、激しい嘔吐(おうと)で入退院を繰り返したため、現在はレナリドミドに切り替えて、4クール目を実施中です。4クール終了後、体調の良いときに血液を採取し、年明けに自家移植する予定ですが、心配なのは、現在通っている病院には無菌室がなく、移植に当たっては個室で行うということなのですが、感染などが心配です。無菌室でなくて大丈夫でしょうか。

移植だけ別の病院で受ける方法も

日本赤十字医療センター
骨髄腫アミロイドーシスセンター
長の鈴木憲史さん

造血幹細胞移植は、患者さんの造血幹細胞を採取・保存した後に大量のメルファランという抗がん薬を投与して可能な限り骨髄腫細胞を殺し、その後、保存していた造血幹細胞を点滴で体に戻す方法です。患者さんの生存期間を延ばす効果が期待できるので、45歳という年齢も考慮してぜひ受けるべきです。

その際に相談者が心配しているのが、移植を行う環境ですが、無菌室が望ましいのは確かですが、個室でも不可能ではありません。海外では無菌室ではなく個室において、手洗いとマスクにより管理をして実施しているところもあります。とは言え私は、移植をする時にはいったん白血球がほとんどゼロの状態になるので、2週間くらいは無菌室に入ったほうが良いかと思います。無菌室の効果は菌を抑えるというよりも、空気中に漂うカビからの防御です。中でもアスペルギルスというカビ(真菌)が肺につくと面倒なことになります。

もし無菌室を希望するなら、移植の時だけ他の病院で行う方法もあります。通院が大変かもしれませんが、無菌室がある施設にお願いすることもできます。移植では幹細胞をいったん採って凍結保存するので、それを動かすのは大変な作業になります。そのため、採取する時から移植を行う病院で実施することになります。

東京にも造血幹細胞移植を行っていない病院がたくさんあります。その場合には移植だけ環境の整った病院で受け、その後はかかっていた病院に戻って治療を受けるという方法もあります。

また、患者さんは若いので、先のことを考えて、幹細胞は1回分ではなく2回か3回分は採取しておいたほうがいいと思います。1回目はレナリドミド4クールの終了後に行うアップフロント移植(初期治療)として行い、あとは将来に再発した時にまた使えるように保存しておくのです。液体窒素に入れて冷凍保存しておけば、幹細胞が生き返る率は7割あります。期間も5年や10年が経過しても十分に使用できるので、できれば2回分を採取したほうがいいでしょう。

また、CyborD療法とレナリドミドの順番はこれでよかったと思います。ただレナリドミドは、5サイクルも10サイクルも行うと幹細胞が採取しにくくなるという性質もあります。患者さんの移植へのスケジュールは正解だと思います。

ボルテゾミブ=商品名ベルケイド シクロホスファミド=商品名エンドキサン デキサメタゾン=商品名レナデックス レナリドミド=商品名レブラミド メルファラン=商品名アルケラン

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