聴神経腫瘍と診断。手術とガンマナイフのどちらがよいか

回答者:藤巻 高光
埼玉医科大学 医学部脳神経外科学教授
発行:2009年8月
更新:2013年11月

  

電話の声が聴き取りにくいことがしばしば起こるようになり、めまいもときどきするため、近くの耳鼻科を受診しました。原因はわからず、治療法は適切ではなかったようで、そうこうしているうちに、人の言葉がほとんど聞き取れなくなりなりました。その後、大学病院を受診し、MRI(核磁気共鳴映像法)などの検査を受けたところ、脳腫瘍の一種である聴神経腫瘍であると告げられました。腫瘍は左側にあり、大きさは3.5センチほどです。脳神経外科の主治医から、外科手術を第1に勧められていますが、ガンマナイフによる治療もあるそうです。手術とガンマナイフ治療のどちらがよいか、それぞれのメリットとデメリットを教えてください。また、聴神経腫瘍の多くは良性の腫瘍であると言われましたが、逆に言うと、悪性の場合もあるのでしょうか。

(新潟県 女性 47歳)

A ガンマナイフ治療なども考えられるが、通常は手術

聴神経腫瘍に対してガンマナイフやサイバーナイフなどの定位放射線治療が適応になるのは、通常、腫瘍の大きさが2.5~3センチまでです。ですから、ご相談者の場合、一般的にはガンマナイフによる治療は適応にならず、手術が勧められるケースです。

ガンマナイフなどの定位放射線治療のメリットは、何より開頭しないですむことです。

脳腫瘍で開頭手術をすると、その手術のために亡くなることが0.数パーセントから1パーセントほどあります。脳腫瘍の手術には、それだけの危険性があるということです。定位放射線治療では、その危険がありません。

ガンマナイフ治療のデメリットは、ガンマナイフをかけることで、良性の聴神経腫瘍が悪性化してしまうことがあることです。その割合は数百分の1から数万分の1(専門家の見解により幅があります)と非常に少ないのですが、悪性化すると、残念ながら、ほとんどの方が亡くなります。

また、ガンマナイフ治療では、治療後も定期的にMRIなどの検査を受け続けなくてはいけません。腫瘍が小さくなり、病状が落ち着いても、腫瘍が完全に消失したわけではなく、腫瘍が再増大することもまれにはあるためです。

手術のメリットは、腫瘍が取り切れれば、それで治癒する可能性が高いことです。デメリットは、先述のとおり、0.数パーセントから1パーセント程度、手術によって死亡することがあることです。

また、手術とガンマナイフ治療のいずれかを選ぶかによって、顔面神経麻痺の有無や程度が違ってくる可能性があります。顔面神経麻痺が起こると顔がゆがんでしまいます。

一般的には、ガンマナイフ治療のほうが顔面神経麻痺を回避できる可能性が高いです。しかし、技術が高く、経験豊かな脳外科医が手術をするのであれば、手術でも、顔面神経を残し、麻痺を回避することは十分に可能です。

また、ほとんどすべての聴神経腫瘍は良性です。ただし、良性といえども、何らかの治療が必要なことが多いです。繰り返すと、ご相談者の場合、手術を選択されるのが妥当ではないかと考えます。

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