グリオーマのグレード4。手術か、IMRTか?

回答者:成田 善孝
国立がん研究センター中央病院 脳神経外科
発行:2007年6月
更新:2013年11月

  

56歳の父のことでご相談します。生検による病理検査で、グリオーマ(神経膠腫)でグレード4と診断されました。場所は右前頭葉の先端との説明を受け、手術での切除も可能とのことです。しかし、自分で集めた資料のなかには、強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる放射線治療もあり、どちらがよいのか迷っています。また、2006年秋、新しい抗がん剤が使えるようになったとのことで、期待を寄せています。その効果などについても、教えてください。

(茨城県 女性 25歳)

A IMRTにこだわらず、放射線治療を

脳の右側でも、脳深部や前頭葉後部の運動野(主として側頭葉の中心溝の前側の部位)は切除不可能です。グリオーマのグレード4の標準治療では、手術で切除したあと、放射線治療と化学療法を行います。標準的な放射線治療は、計60グレイの放射線を1回に2グレイずつ30回に分けて行います。これが現在の標準治療です。

ご相談者のご指摘のように、最近、IMRTという放射線治療が一部の施設で行われています。これはコンピュータを駆使して、腫瘍のある部位にのみ放射線をあてる方法で、放射線の強さや量を変えて照射します。たとえば、腫瘍が楕円形なら楕円形に、くびれがあればそれに合わせて照射できます。さらに、照射を腫瘍に集中させ、正常な部位への影響を少なくして合併症を減らすために行われるようになりました。

また、IMRTにより照射線量を60グレイよりも多くあてる方法も一部で行われるようになり、よい治療成績も発表され、その治療効果も期待されています。

ただし、現状では、その治療効果や副作用がこれまでの方法に比べてどの程度なのか、まだよくわかっていません。お父様のようなグレード4の神経膠腫は進行が早いので、現時点ではIMRTにはあまりこだわらず、できるだけ早く手術を受け、標準的な放射線治療を受けることをお勧めします。

また、グリオーマは腫瘍が周囲の脳にしみ込むように広がっていきます。そのため、一般的に腫瘍は画像で確認できた造影病変よりも大きくなっています。そこで、ガンマナイフや、サイバーナイフなどの放射線治療は効果的ではありません。

ガンマナイフは装置の名前です。サイバーナイフは、サイバネティックス(人工頭脳学)が生み出した「メスのように切れ味鋭い放射線治療」ということから名付けられました。いずれも、小さな腫瘍に1回で大量の放射線を照射して行います。ただし、広範囲に広がっている神経膠腫には、ガンマナイフもサイバーナイフも適切な治療とは言えないのです。

2006年秋、グレード3と4のグリオーマを治療対象に抗がん剤のテモダール(一般名テモゾロミド)が保険適用になりました。この薬はカプセル状の内服薬なので、外来通院で使えます。これまで主に使われてきた抗がん剤よりもはるかに治療効果が高く、白血球や血小板減少などの骨髄抑制が少ないのも特徴です。専門医に処方していただければ、吐き気や食欲不振などの副作用もほとんどありません。

ただし、かなり高価で、保険診療(3割負担)でも毎月10万円ほどの自己負担になります。高額療養費制度を利用して服用を続けていただきたいと思います。

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