グリオーマでグレード3。手術は不可能か?

回答者:成田 善孝
国立がん研究センター中央病院 脳神経外科
発行:2007年6月
更新:2013年11月

  

頭痛が気になって近くの病院でCT検査を受けたところ、左のこめかみの奥に白い影が見つかりました。総合病院でMRI検査や脳の血管造影などの精密検査を受けた結果、言語や運動機能をつかさどる部分の近くに5センチほどの腫瘍があるとのことでした。「可能なら一部切除もする」とのことで、腫瘍組織を採る生検の手術を受けました。しかし、グリオーマ(神経膠腫)で悪性度(グレード1~4)がグレード3とのことで切除はできなかったとのことでした。担当医からは、抗がん剤と放射線治療による治療を勧められています。私のようにグレード3の場合、手術は無理なのでしょうか。抗がん剤と放射線治療しか治療法はないのでしょうか。教えてください。

(青森県 女性 29歳)

A 手術は可能。術後に化学放射線治療を

一般的に、右利きの患者さんの場合、脳の右側(非優位半球)に腫瘍があるときは、その腫瘍を完全に切除できることがあります。それに、腫瘍が運動や言語をつかさどる重要な機能にない場合には、手術で腫瘍を含むところをかなり大きく切除しても後遺症はありません。

ところが、腫瘍が脳の左側にできた場合には、広範囲の切除ができないケースが多いです。それは、脳で最も重要な言語野が、左の前頭葉や、側頭葉にあるからです。

手術で左前頭葉や、側頭葉をわずかでも傷つけると、後遺症が残るため、切除できる範囲が限られるのです。ご相談者の場合も、脳腫瘍が左側にあったとのことですから、一般的には手術で腫瘍を含む広範囲の場所を切除することはかなり難しいと思います。

ただし、最近では覚醒下手術が行われるようになりました。この手術は開頭したあと、麻酔から目覚めた患者さんに、「しゃべれますか」「手足は動きますか」などと話しかけて、言語や運動機能を確認しながら行うものです。その手術中は、露出した脳に電極を当て、弱い電流を流します。そして、患者さんがしゃべれなくなったら言語機能の領域なので、そこは切除しないようにします。

脳自体には痛みのレセプターはありませんので、脳に電流を流しても、切除しても、痛くはありません。

こうした手術によって、これまでなら手術による切除が不可能だった場所でも、切除ができるようになりました。ですから、病院によってはこの覚醒下手術を受けることも可能です。

この手術の後は、放射線治療と化学療法を併用します。腫瘍がより切除できたほうが治療成績はいいのですが、グレード3の神経膠腫の場合には、手術で腫瘍をすべて摘出できた場合でも、切除できなかった場合でも同じように、再発や増大を抑えるために放射線治療と化学療法を行います。

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