良性の神経鞘腫。悪性化することはないか
三叉神経に神経鞘腫ができ、病院で手術してもらいました。腫瘍はほとんど取り除けたそうです。病理検査の結果、良性腫瘍といわれました。しかし、神経鞘腫の一部には悪性腫瘍もあり、良性腫瘍が何かのきっかけで悪性化することもあると聞きました。私の場合、腫瘍の取り残しがあるようなので不安です。良性の神経鞘腫が悪性になることはないでしょうか?
(三重県 男性 52歳)
A 確率はごくわずか。心配する必要はない
結論からいわせていただければ、心配しなくて大丈夫です。
神経鞘腫は神経を取り巻く鞘の部分から発生する脳腫瘍の1種。多くは脳や脊髄から枝分かれする神経の根元近くにできます。神経鞘腫ができる神経の種類では、聴覚をつかさどる聴神経が最も多く、目のまわりの三叉神経、顔面神経がそれに次ぎます。30~60歳の女性に好発します。
神経鞘腫が厄介なのは、神経にできる腫瘍なので、むやみに取り除くと、さまざまな神経障害が後遺症として残ってしまうこと。腫瘍が小さなうちは、手術で完全に摘出できますが、腫瘍が増殖して、まわりの脳組織や血管などを圧迫するようになると全部を摘出するのが難しくなり、どうしても一部を取り残してしまいます。すると、そこから再発することが多いのです。とくに、三叉神経の神経鞘腫は外科医泣かせで有名です。
一方、神経鞘腫のほとんどは良性腫瘍なので、再発しても治療は必要ですが、命に別状はありません。それこそ、先述したガンマナイフ治療の好適応です。ご質問のように、悪性の神経鞘腫が発生することも、良性腫瘍が悪性化することもありますが、その確率はきわめて低いのです。神経鞘腫のうち、悪性転化(良性腫瘍が悪性腫瘍に変化する)を含め、悪性腫瘍の占める割合は1パーセントにも達しません。つまり、今の患者さんにおかれては大きな心配はいらないと思われます。
それよりも、機能温存のためにあえて少しだけ残した神経鞘腫が再発する可能性のほうが断然高いわけですから、腫瘍が大きくならないうちに治療することが肝心です。最低半年に1回はMRI検査を受けるようにしましょう。ガンマナイフ治療時期を逃さぬよう、早めにガンマナイフ専門医のもとを1度訪ねるべきでしょう。