抗がん薬治療がつらくて中止したいが
昨年(2022年)4月、左乳房に2.3㎝の乳がんが見つかりました。病理検査の結果、悪性度の高いトリプルネガティブと言われ、5月に左乳房を全摘。左脇下の腋窩リンパ節生検を受けたところ、リンパ節転移が3個あることがわかりました。7月からEC療法を3週間ごとに4回受けました。これには何とか耐えることができましたが、10月にタキソテールの治療を受けたところ、だるさ、痛みなどの症状が強く出て、10日間ほど寝込みました。その後も手足のしびれや爪の変色、物忘れなどの症状が出てきました。主治医に中止したいと相談したところ、この化学療法によって再発率が15%下がると言われましたが、そんなに低い確率ならやめたいと思っていますが、どうでしょうか。
(71歳 女性 埼玉県)
A 年齢を考えれば中止も選択の1つ
乳腺外科医長の上野貴史さん
ご相談者の条件で、インターネットで誰でも利用可能なイギリスの予後予測因子「Predict」で調べてみると、がんがgrade2と仮定した場合、手術だけなら乳がんが再発して亡くなる可能性は10年の間に41%、それ以外の病気などで亡くなる可能性が22%で、生存確率は37%と予測されます。
最大効果のある抗がん薬治療をすることで乳がん死の可能性が11%減り、生存率が48%に上がるとされます。この予測因子では、生存率の上昇は主治医のいう15%よりも少し低い値ですが大きくは変わりません。
もしタキソテール(一般名ドセタキセル)の治療がつらいようなら、タキソール(一般名パクリタキセル)毎週投与を行うという選択肢もあります。しびれなどはありますが、吐き気などはまずなく、副作用はタキソテールより少なく、高齢者でも忍容性が高いとされています。しかし、ご相談者の場合はEC療法をすでに行っているので、乳がん死の確率はその時点で予測上約6%減少しており、タキサン系抗がん薬併用の上乗せ効果は約5%程度と思われます。71歳という年齢のことを考えれば、抗がん薬治療を止めることも1つの選択かとも思います。