再発が心配で全摘を希望している
2023年3月に右乳房にがんが見つかりました。検査の結果、腫瘍の大きさは5㎜、HER2陰性、ホルモン受容体陽性、Ki67は3%、リンパ節や骨への転移は見つかりませんでした。主治医から乳房温存術を行ったのち、X線照射を16回行うという治療計画を示されました。私は再発が心配なので全摘を希望しているのですが、主治医からはこの大きさで全摘を行うと、がんが広がる可能性があると、全摘には慎重な姿勢を取っています。どのように考えたらいいのでしょうか。
(61歳 女性 兵庫県)
A 温存でも全摘でもリスクは同じ
板橋中央総合病院
乳腺外科医長の上野貴史さん
乳腺外科医長の上野貴史さん
ご相談者は全摘を希望されているのに、主治医からはこの大きさの腫瘍で全摘すればがんが広がる可能性があると言われたとのことですが、これは全くナンセンスな主張です。今時こんな考えをする医者はほとんど存在しません。
同時に、全摘を希望するのは再発が心配だからというのも誤った考えで、断端陰性を確保し、放射線治療を併用すれば、温存でも全摘でも全く治療成績が変わらないことは多くの臨床試験から証明されています。
確かに腫瘍の大きさが5㎜程度であれば、広範な乳管内進展がある場合を除き、通常は温存手術を受けるほうが賢明だとは思います。ただ、ご相談者がどうしても全摘を望まれるのであれば、放射線治療が不要なので治療も早く終わり、治療費用も安く済むので、敢えて全摘されることに反対はしません。