TS-1とベージニオのどちらを選択すべきか
昨年(2023年)5月に右乳がんと診断され、リンパ節転移もありました。術前に2週ごとにAC療法を4回、パクリタキセルを4回投与する化学療法を受けた上で10月に乳房の部分切除とリンパ節郭清の手術を受けました。術後の病理検査でホルモン受容体は陽性、HER2は陰性、Ki67値は低く、穏やかな顔つきのホルモン型乳がんだと言われましたが、リンパ節転移は5個見つかりました。すでにホルモン療法は始めていますが、これに加えて①TS-1を1年間か②ベージニオを2年間服用することになるが、どちらかを選ぶように言われています。どちらを選ぶべきか困っています。
(48歳 女性 岐阜県)
A ページニオの選択を
板橋中央総合病院
乳腺外科医長の上野貴史さん
乳腺外科医長の上野貴史さん
TS-1(一般名S-1)とページニオ(一般名アベマシクリブ)を直接比較した臨床試験はなく、どちらの再発予防効果が高いのかはわかっていません。ただ同じ5FU系抗がん薬であるゼローダ(一般名カペシタビン)の追加効果を調べた「CREATE試験」ではアントラサイクリン系かつ/またはタキサンの術前化学療法を行った後に術後5FUのゼローダを加えて効果が証明されたのはトリプルネガティブのサブタイプだけだったいうことがあります。「POTENT試験」では術前または術後の補助化学療法施行群でもTS-1併用で効果がみられていましたが、術前例だけの個別のデータは記載されていません。またTS-1は日本のみで発売されており、世界的には使用されていないローカルな薬という欠点もあります。
質問者は術前化学療法施行例のルミナルタイプであることから、どちらかというと②を選択されることを推奨します。ページニオには下痢の副作用がありますが、止痢剤をうまく使いながら2年併用することを勧めます。