トリプルネガティブ乳がんの再発治療は

回答者・上野貴史
板橋中央病院 外科医師
発行:2014年3月
更新:2014年9月

  

2012年2月に左乳房のトリプルネガティブ乳がんと言われ、術前化学療法後、10月に両乳房手術を受けました。

14年1月のPET/CT(PET-CT)検査で、多発骨転移・肺転移・リンパ節転移・左腹膜播種と診断され、肝転移・右副腎転移の疑いもあると言われました。進行が早く、この1カ月の間にここまで進みました。放射線肺炎も患っております。

これから「アバスチン+タキソール」の化学療法が始まります。しかし、これまでの「AC療法→腫瘍縮小→タキソテール→腫瘍増大→タキソテール 5回投与→腫瘍増大」という治療経緯から、タキサン系では腫瘍が大きくなっているため、タキソールの使用には疑問を感じています。

また、アバスチンは転移性のがんには効果がないと聞きました。今後の治療法として、「アバスチン+タキソール」の化学療法で良いのでしょうか?他の選択肢はないのでしょうか。

(60歳 女性 岡山県)

アバスチン+タキソール使用は選択の1つ

板橋中央病院外科医師の上野貴史さん

両側のがんは一般的には別のもののことが多く、また、どちらのがんが再発したのか不明ですが、トリプルネガティブ乳がんが再発したものとしてお答えします。

また、抗がん薬の投与もどこまでが術前でどこからかが術後なのかがはっきりしませんが、腫瘍増大が原発巣のことを指すのなら、すべて術前に投与したものとします。

タキソテールとタキソールの間には完全な交差耐性はないとされ、タキソテールが無効でもタキソールが有効なことはありえます。

また、アバスチンは転移性のがんに対する薬剤として認可されており、タキソールとの併用で、単剤に比べて奏効率が増え、無進行生存期間も延長します。効果がないことはありません。全生存率の延長は証明されていませんが、がんの進行を抑える効果は高いと考えられています。

タキソテール単剤が無効だった場合でも、アバスチン+タキソールが有効な可能性はあり、選択肢の1つにはなりえます。もちろん、術前投与でアドリア系薬剤が有効だったため、再度アドリア系を投与する方針もありますし、ハラヴェンも選択できると思われます。

また、オラパリブ(一般名)は、経口PARP阻害薬でありBRCA遺伝子変異のあるタイプ(トリプルネガティブ乳がんを含む)に有効な可能性があると考えられています。

別のPARP阻害薬であるイニパリブ(一般名)という薬剤がフェーズ2臨床試験で良い成績が出て期待されたのですが、フェーズ3試験では有効性が証明されず一時の期待が裏切られました。

臨床試験はまだ行われており、日本でも医師主導臨床試験としてハラヴェンとオラパリブの併用フェーズ1/2試験が、国立がんセンター・四国がんセンター・大阪医療センターで2013年から行われています。残念ながら、現在は薬剤の有効性を調べている段階で、承認には程遠い段階です。

アバスチン=一般名ベバシズマブ タキソール=一般名パクリタキセル AC療法=アドリアシン(一般名アドリアマイシン)+エンドキサン(一般名シクロホスファミド) タキソテール=一般名ドセタキセル ハラヴェン=一般名エリブリン

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