血清HER2と病理検査のHER2との関連を教えてほしい

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2009年11月
更新:2013年11月

  

2007年4月、左上乳がんの温存手術をしました。浸潤性乳管がんと診断されました。腫瘍の大きさは、21ミリ×12ミリ×11ミリ。リンパ節転移の個数0。腫瘍の悪性度2。脈管への侵襲なし。エストロゲン、プロゲステロンとも陰性。HER2検査は2+(擬陽性)で、HER遺伝子の増幅を調べるFISH法では「増幅なし」でした。トリプルネガティブというタイプとのこと。同年6月、断端陽性のため、追加切除(温存)をしました。手術病院は、温存手術でも放射線療法は行っていません。断端陽性の場合、追加手術を徹底させたほうが治療成績がよいとの説明を受けました。追加切除後は、エンドキサン(一般名シクロホスファミド)とファルモルビシン(一般名エピルビシン)を併用するCE療法を4サイクル、その後、タキソテール(一般名ドセタキセル)を4サイクルしました。同年11月末からUFT(一般名テガフール・ウラシル)を、朝・夕方後に服用。2009年4月、医師から「手術後2年経過したため、UFTをやめましょう」と提案されました。しかし、無治療への不安があり、夕食後のみ服用中です。質問は、2つです。

1つ目は、血清HER2についてです。実は、2009年4月、初めて血清HER2の数値を知らされました。血清HER2は17.2でした。担当医は「今後経過観察し、もし数値が上がっていくようならPET-CTなどで全身への転移がないかを調べます」といいます。この血清HER2と、病理検査でのHER2との関連について教えてください。また、ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)は、有効なのでしょうか。2つ目は、UFTの服用についてです。担当医は、「飲んでも飲まなくてもよい」といいます。私としては、UFTの副作用はさほどないので、2009年11月まで、実質2年間は服用したいと思っていましたが、意味がないのであればやめようかと思っています。

(秋田県 女性 57歳)

A 血清HER2が上がる場合は、病理検査でもHER2発現が陽性のことが多い

手術後の病理検査で、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の3つが陰性なので、トリプルネガティブの範疇に入ります。ハーセプチン治療の適応は、病理検査でのFISH法の結果に基づいて決めるのが現在のゴールドスタンダードです。相談者は、FISH法でHER2遺伝子増幅が陰性なので、ハーセプチン投与の適応はありません。

血清HER2は、HER2蛋白の細胞外成分が血中にこぼれでたもので腫瘍マーカーの1つです。

米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドライン2007年版によると、臨床現場で血清HER2を測ることは勧められていません。その意義がまだわかっていないからです。基本的には測る必要はないと考えられています。一般的に、血清HER2が上がる場合は、病理検査でもHER2発現が陽性のことが多いと言われています。過去に手術をした再発例で、標本からのHER2発現の有無がわからない場合、血清HER2上昇の有無でハーセプチン投与の適応を決められるのではないかと考えられていますが確定はしていません。

相談者のように、病理検査でHER2が陰性の場合で、血清HER2の検査が上がることも稀にあります。この場合、ハーセプチンが効く可能性はありますが、わかっていません。意義がわからないため、血清HER2を測ることはガイドラインで勧められていないのです。2つ目は一般的には、化学療法を4~6カ月行ったあとにUFTを用いることはありません。その有効性が確立されていないのです。化学療法ではある程度以上の強度がないと、効果がないと考えられています。もともとその効果がはっきりしないUFTを半分の量にして飲むことは、あまり意味があるようには思えません。服用は中止して、経過観察するほうがよいかもしれません。

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