異時性両側性乳がんの治療選択は?

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2012年12月
更新:2014年1月

  

6年前に、初期のトリプルネガティブ乳がんと診断され、部分切除と術後放射線治療とAC療法を受けました。今回、反対側の乳房にも1a期の原発でトリプルネガティブ乳がんが発症し、異時性両側性乳がんと診断されました。両側の乳がんがどちらも原発なので、反対側の乳房は、初期治療で部分摘出の後に、化学療法を受けようか迷っております。また、両側性だと治療後の再発率はどのよう状況なのか知りたいです。

(福島県 女性 43歳)

A もう1度初回治療として化学療法を

37歳でトリプルネガティブ乳がんを発症し、今回反対側にも原発乳がんを発症したとのことで、発症に遺伝的な要素が関わっている可能性があります。がん抑制遺伝子であるBRCA1に遺伝的変異があると、トリプルネガティブ乳がんに罹りやすいことが知られています。

また、卵巣がんの発症リスクも高くなります。BRCA1遺伝子異常の有無は、血液からの遺伝子検査で判定できます。

ただし、遺伝子検査を行うことに伴う社会的、倫理的問題もあり、遺伝外来のある地域の基幹病院を受診してから、検査にともなうメリット、デメリットを理解の上で検査を行うべきです。また、遺伝子検査に保険はききません。ご相談者は、1度、伺ってみるのもよいと思います。

対側乳がんが発症した場合、もとのがん転移なのか、新たに発生したのかが問題になります。乳管内にがん成分があるかどうかで鑑別できることが多く、相談者の場合は、おそらく乳管内にがんがあったので原発と判断されたと考えられます。

トリプルネガティブ乳がんは晩期再発が少ないため、6年経過すれば再発のリスクはかなり減ります。

今回の乳がん治療は、前の乳がんと関係なく、初めての乳がんの治療と同様に治療すべきです。両側性といっても治療後の再発率に差はありません。

注意点として、相談者は1度AC療法を受けられていますので、追加でアドリア系抗がん剤の投与を受けるときにはアドリアシンの副作用である心毒性を配慮する必要があります。

また温存療法を行う場合、放射線照射野が前回の照射野に重ならないようにする注意が必要です。

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