ハーセプチンを中断。再開したほうがいいのか
乳がんのステージⅡ(II)で、がんの大きさは約2㎝、ER、PgRとも陽性、HER2陽性(CEP17 シグナル比8.1 増幅あり)のトリプルポジティブでした。術後に*EC療法を4クール行いましたが、嘔吐嘔気が激しかったため、2回目からは減量。その後残存乳房に放射線を照射。*タキソテールと*ハーセプチンを3クール終了したところで、心機能の低下(左室駆出率・65 → 57%)と浮腫のため中止。*タモキシフェン服用開始。半年後に心機能が回復したため再開し、ハーセプチンのみ6クール(合計9回)行ったものの、また心機能の低下が見られたため中止しました。
私の場合、術後のEC療法を減量し、ハーセプチンも完遂していないとなると再発が心配です。今後ハーセプチンを完遂するべきでしょうか。
(45歳 女性 東京都)
A 術後の補助療法を中止し、再開することの効果は不明
上野貴史さん
ハーセプチン療法の代表的な副作用に心毒性(心不全などを起こす)があります。治療の中止基準は、心臓の働き(収縮)を表す左室駆出率(EF)が50%以下になった場合、もしくは基本の値から10%以上低下した場合です。質問者はギリギリのところですが、EFが基本の値から10%以上低下したため、医師はハーセプチンを中止したのだと思われます。
ハーセプチン療法は現在では1年(18回)投与が標準です。1年と半年の成績を比較して、半年投与の非劣性が証明されなかったという試験結果からですが、別の小規模な試験では9週投与でも効果があったという結果もあり、絶対的なものではありません。また、術後補助療法をいったん中断し、再開した補助療法に効果があるかというと、エビデンス(科学的根拠)はありません。
ですから再発予防のためハーセプチンを完遂するか、心毒性のリスクを考えて中止するか、どちらがいいかは一概には言えません。再発のリスクを少しでも減らしたいのであれば、副作用について理解した上で、心機能をモニターしながら完遂されるとよいと思います。
*EC療法=ファルモルビシン(一般名エピルビシン)+エンドキサン(一般名シクロホスファミド) *タキソテール=一般名ドセタキセル *ハーセプチン=一般名トラスツズマブ *タモキシフェン=商品名ノルバデックス